序文

 長い人生には、色々なことが起こります。人の障害には嬉しいにつけ、悲しいにつけ、事柄によつて種々の感智が加わって行動しますが、失敗も成功もその人間の性格、思考および信念の持つていくところに依存します。
 毎日の生活は、家庭、社会および自然のしょかんきょうによつて培われて行きますが、開拓するものは自己であり、そして多くの人たちの協力による眼に見えざる偉大なものが、貴方を待っているのです。絶えず自己反省し、他人に鞭打つていただかなくてはなりません。
 私は、この複雑な世の中に生れ出て、何か残さなければ、死んでも死にきれないのです。子孫と社会に対して世話になりつ放しでは申訳がないのです。
 そこで凡才ながら、手近な自己生活の塊の置土産を綴って、こっそり残しておくことにしたのです。生まれてから年老いるまでのコースにおいて、なるべく年代を追って、羅列的に整めることにしました。従って、「文作」は作文とか作品というよりは寧ろ生涯における小説、詩、研究、論文、随想等から若さの有つ魅力とか、ホープとか、思い出と云つたもので何か心と魂に触れるものがあれば、幸甚と思います。

関 井 正 雄


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