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黒田剛ゼルビアが日本サッカーにもたらすものとは。【FC町田ゼルビアJ2優勝を祝して】

2023年のJ2は昇格争いが佳境に入り、ここ数年で一番の盛り上がりを見せています。エスパルス・ジュビロ2強と思われたJ2リーグに混沌を巻き起こし、さらなる盛り上がりを与えたのはやはり優勝チームであるFC町田ゼルビアでしょう。FC町田ゼルビアの昇格は今後の日本サッカー界に大きな影響を与えると私は確信しています。


FC町田ゼルビア優勝セレモニー
Jリーグ公式より引用(https://www.jleague.jp/news/article/26318/)

FC町田ゼルビアは2023年シーズンより黒田剛を監督に招聘しました。サッカー好きなら認知度が高いとは思いますが、高校サッカーの強豪青森山田高校で長年監督として指揮を執り、黄金時代を築き上げました。高校サッカーで輝かしい実績を引っさげて、満を持してのプロチームの監督に就任することになり、様々な意見がありましたが、振り返ると賛辞であったりプラスの意見が多かったような気がします。今回はFC町田ゼルビアのJ1昇格が日本サッカーに与える影響「黒田剛フォーカス」について私の意見をつらつらと書き連ねます。

①高校→プロチームの流れが出来る

高校とプロチームの間には越えられない壁がありました。その壁を作っているのは実績と固定概念でしょう。高校→プロチーム監督は事例が少ないですが、目に見えた実績はありません。記憶にあるのは市立船橋からJFAを経てザスパクサツ群馬の監督に就任し、J2昇格を果たした布啓一郎だけです。実績の面から監督に招聘できないのは理解できます。

高校サッカーとプロチームはまるっきり指導法が違うという考えは根強いです。高校生は身体的にも精神的にも未熟で、サッカーという競技への指導に加えて、個々人の成長に向けたアプローチが必要となりますし、ある程度「強制的にやらせる」という方法も必要です。逆にプロチームは一人一人が成熟しており、個々の選手も自分の考えを持っており、強制されることを嫌いますし、しっかりと理解させないと指示も聞いてもらえず、チームがまとまりません。高校サッカーとプロチームは別々のアプローチが必要なのは正しいですが、高校サッカーの指導者は高校生への指導法しか心得ていないと考えられてしまっているのは悲しいです。

今年の黒田ゼルビアのJ1昇格は大きな壁を形成する要因となっていた「実績」「固定観念」を見事に砕きました。大型補強をし、町田へ集まってきた我の強い選手たちを見事にまとめ上げ、他のチームを圧倒する戦術でJ2を席巻しました。町田の快進撃を見た他のチームは「高校サッカーの指導者は狙い目かも」と思うでしょう。来シーズン以降高校サッカーの指導者がプロチームの指揮を執るという光景は増えてくるでしょうね。


②引退した選手が高校サッカーに来る

高校サッカーの指導者→プロチームの指導者という流れが出来れば、引退した選手が高校サッカーの指導者になるという選択肢を持つことができます。アスリートの引退後のキャリア形成が課題となっている昨今、「将来に繋がるのであれば高校に行きます」という選択が可能です。

アスリート引退後のキャリア選択肢が増えるだけでなく、高校生にも良い影響を与えます。元プロの指導者が教えることにより、選手もより身が入るでしょうし、普通の高校サッカーの指導者では教えることのできない技術面のアドバイス、将来に向けた助言も出来るでしょう。吸収力の高い若い年代は通常よりも何倍ものスピードで成長することは確実です。

③大胆な決断を行うチームが増える

今回FC町田ゼルビアが青森山田高校の黒田剛を招聘し、成功を収めました。その裏でSC相模原も大抜擢を行いました。ここ数年で解説として絶大な人気を集め、いち早く監督をやってもらいたいと世間から言わしめた戸田和幸の監督招聘です。戸田和幸の監督就任が報じられたときネットは大騒ぎでした。期待とは裏腹にシーズン開幕から勝てない試合が続き、J3の下位に位置しています。成功だろうが、失敗だろうが大抜擢人事を行った2チームの共通点は何でしょうか。それは親会社がIT企業であるということ。町田ゼルビアはサイバーエージェント、SC相模原はDeNAです。大抜擢人事をスピード感持って行うのはIT企業+ベンチャー企業でもある両者でしか出来ないでしょう。

鹿島アントラーズはメルカリ、ヴィッセル神戸は楽天、FC東京はミクシィと親会社がIT企業になり、将来的にJリーグでも大抜擢人事やスピード感を持った経営判断が主流になると予想していました。ですが今回のFC町田ゼルビアの昇格が、大抜擢人事・スピード感経営、さらにはIT企業の参入のサイクルを早めるでしょう。監督を持ち回りでグルグルとローテーションしているJ1は閉塞感があります。来期以降の大抜擢人事を期待します。


私自身、黒田剛の手腕を疑っていましたが、蓋を開けてみるとそれが間違いだったと思わされました。私の応援するジェフ千葉のホーム、フクダ電子アリーナで行われた1戦では、町田が押し込まれる展開でしたが、後半アディショナルタイムに2点を挙げて敗戦しました。難しい試合も最終盤でこじ開けて勝利を収めてしまう町田を間近で体感して「これは昇格するチームだな」と感じましたね。黒田剛の挑戦はまだこれからJ1へと続いていきます。J1でも旋風を巻き起こし、日本サッカーへ良い影響を与えてほしいです。


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