時代劇レヴュー・番外編⑤:大唐帝国のドラマ(3)皇帝・李世民(2006年)

「大唐帝国」シリーズ、三回目。

2006年に中国で放送された連続ドラマで、「貞観の治」で名高い中国史上屈指の名君・唐の太宗李世民の生涯を描いた作品で、唐が洛陽の王世充を攻める場面から始まり、太宗の死をもって終わっている。

原題は「貞観之治」なのであるが、太宗即位前のエピソードにも話数を割いており、内容的には李世民一代記と言った感じなので、これに関しては邦題の「皇帝・李世民」の方が個人的にはしっくり来る。

2000年以前は中国ドラマと言うと、日本で言う昔の東映の時代劇みたいに史実よりもエンターテイメント性を重んじていた感があったのだが、本作は史実重視の重厚な作りである。

私自身、ドラマを見ながら『旧唐書』『新唐書』で内容を確認していたりしたのだが、大きな史実無視はなかったように思う。

必要以上に女性キャラを出さない所も、個人的には好みである(余談であるが、近年の中国歴史ドラマは史実重視の骨太路線と、史実に関しては適当で、美男美女を取り揃えたことに重きをおいた恋愛路線の両極端で、日本市場向けに入ってくるのは後者が多い気がする)。

ちょうどこれを見た時は、私は日本の大河ドラマの質の悪さに倦んでいた所だったので、夢中になって見ていた記憶がある(私がこれを見たのは2009年、当時私はまだ学生で、新型インフルエンザの影響で一週間くらい大学が休講となって自宅待機を余儀なくされた際に、DVDをレンタルしてきて一気に見た記憶がある)。

主演の馬躍は名君の太宗を好演しており、英雄然とした側面も見せながら、人間臭い部分もしっかり描いていて、特に後半部では、魏徴らの諫言にしぶしぶ従ったり、後継者問題のせいで徐々に痛々しくなっていく、ちょっと「かっこ悪い」太宗の芝居もはまっていた。

他のキャストも、なかなかにはまり役揃いで、特に秀才肌であるが優柔不断な李建成(太宗の兄)と、粗暴な李元吉(太宗の弟)兄弟のコントラストは絶妙であった。

長孫皇后役の苗圃も清楚で貞淑なキャラクタにうまくはまっていたし、厳格だか時にコミカルになる魏徴役の金士傑も良い味を出していたように思う。

終盤で目を引いたのが、若き日の則天武后を演じる張笛で、本作では太宗存命中から李治(後の高宗)に肩入れしていて、本編後の歴史展開を連想させる描き方になっていた。

特に派手な合戦シーンがあるわけでもなく、どちらかと言えば地味な政治劇が中心であったが、骨太な歴史ドラマで、こう言う作品の方が私は好きである。


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