通訳とAI。機械翻訳。

1:なくなるかもしれない職業

数年後になくなる職業、その中に通訳や翻訳がある。AIの進歩や、翻訳の機械の進歩がその理由だそうだ。そして、それは本当にそうなのだろうか?

私が現場で通訳をするとき、特に日本人の場合は、言葉をそのまま受け取ることはできない。空気を読めとか、言葉の裏を読めとか、「察しろ」。これはその時の「場」の雰囲気、それぞれの立場、会社、そこにたどり着くまでの状況が、日本人は特によくわからないからだ。つまり、額面通りには受け取れないことが多すぎて、単に直接言葉をやりとりするだけならともかく、通訳もそのプロジェクトを成功させる「一員として参加」する際には、そのまま通訳したらその場は悪化することにもなりかねず、ある程度の意訳だったり、場面をマネージしなければならないことがよくある。そして私の場合はそういう職場に行くことがほとんどで、単に会議等で話していることを機械的に言えばいいだけ…ではないのである。

この、「お国柄」を、もしかしたらいつかテクノロジーが超越する時が来るのかもしれないが、今は不可能である。実際、外国の文章をGoogle翻訳や10万も20万もする翻訳ソフト、あるいはポケトークや通販番組で販売している1万円程度の機械でやってみると、ストレートな物言いの外国人の書いた文章でさえ、おかしな日本語や、「こんな感じ」というニュアンスでしか理解できない日本語になって結果が出てくる。

それでもいいのなら良い。

2:「通訳募集、時給1500円!20代活躍中!」って、冗談ですか?

通訳募集の求人をたくさん見かけるが、時給たかだか1000円や1500円程度で通訳や翻訳?時給1000円なら、駅前のマクドナルドの夕方の時間帯の方が稼げる。しかし踊る言葉は、
「あなたのスキルを活かせる!」
「英語を使える!」「スペイン語を話せる仕事!」
「あなたの言語スキルを伸ばせる!」
などという歯の浮くような言葉が踊っている。

20代、30代が活躍中!主婦が活躍中!未経験歓迎!

募集担当者の方、「あなた自身が大丈夫」ですか?

これまでの私の経験上、時給1500円程度で、喜んで通訳や翻訳の仕事についてしまうような人は、例えばスペイン語で言えば日本語がたどたどしい日系人や、敬語がろくに使えない外国人、あるいは誇らしく留学経験を自慢するものの、よく聞くと1週間程度のホームステイだったりする日本人なのである。

実際、彼らが翻訳したものを見ると、

・間違っている。
・よくわからないスペイン語に翻訳されている。
・意味のわからない日本語が羅列されている。

そして、採用担当者もその上司も、それが正しいのかどうかもわからない。
お粗末なのは、通訳の派遣会社なのに、その通訳が翻訳したものを正しいのか、言葉として自然なのか確認できる人がいない。もちろん、派遣先の企業(大手のことが多い)の人も、わからないままそれを自社のものとしてメキシコやスペインへ配布している。
現地で修正したり、そのまま悪習として残っている)

今大手メーカーにいる私の前任者(一時期は同僚)は、先日解雇された。派遣なので、解雇というより「契約の強制解除」だ。なぜなら、私やもうひとりの通訳が、前任者の恐ろしいほどいい加減な文書を指摘したからだ。そしてそこにいるスペイン語話者の人たちも、「彼の通訳はわからない」、何かあっても「彼を呼ばなくていい」と言っていたほどの人物だった。しかし彼らがそれを企業担当者に伝える術もないので、諦めていたようだ。

クビになった彼は、スペイン語でいうTOEICのような世界的試験であるDELE(デレ)というスペイン王立アカデミーが主催する試験の、上から2番目であるC1に合格し、しかもC2を受けたいと豪語し、C1に落ちてしまったことのある私を散々笑っていた。ちなみに、これはヨーロッパの言語能力の指標で、C2は例えばTOEIC満点レベル、英検で言えば1級以上、ネイティブでもつまづくほどのレベル。

しかしこの人物は、そんなレベルだと豪語しながらも、

・朝の夕食
・チェックするチェックの前にある確認
・スーツケースの修理をスーツケースの処理会社にぱっと渡し…

という翻訳をし、通訳を聞いてみるとクセがありすぎ、そもそも何を言っているかわからないのだ。

彼は本当にDELEのC1に合格したのだろうか?私やもう一人のスペイン人ネイティブ通訳からすると、A2に受かるかどうかのレベルと認識しており、C1じゃなくてA1の間違いじゃないだろうかと話しているほどである。

彼の履歴書にある試験の結果は、本当かどうかはわからない。
ただ一つ言えるのは、試験の結果は会話にも翻訳にも全く結びついていないということである。

世の中にある派遣会社、大手メーカー、中小企業、どこでも構わないのだが、試験の結果や年齢(クビになった彼の場合は30歳)で判断、採用をすると、大きな恥をかいている可能性があるということを、ぜひ心に留めていただき、こういう部分で経費を削っていいのかどうか、よく考えていただきたいと思う。後世に残るものである上、日本の代表なのに、「朝の夕食」という名言を残したのだから。

通訳や翻訳は、技術が必要である。英語がうまかったから、スペインへ留学したことがあるから、そんな程度では通訳や翻訳はできないのである。通訳や翻訳は、聞いて理解する、読んで理解するだけではダメなのである。それをいかに上手に他の言語にできるかということである。

申し訳ないが、どれだけお金を注ぎ込んで勉強し、経験をしてきたかを踏まえると、

時給1200円
時給1500円

これはありえないし、この金額で集まる通訳や翻訳の人は、「通訳士」でも「翻訳士」でもない。決してエキスパートではない。おそらく、

日本語の少しできるパートの外国人

であり、彼らがする翻訳や通訳は、悲しいほど低いレベルであることをお伝えしておきたい。

たまたまYouTubeを見ていたら、とんでもない通訳(スペイン人)が上がっていたので、その映像をご覧いただき、大手派遣会社、大手企業、中小企業の採用担当者の皆様は、彼女のような通訳・翻訳でいいのかどうか、今一度判断し、その上で時給1500円で募集し、さらに通訳や翻訳の結果について一切の文句を言わないようにしていただきたいと思う。

AIや機械翻訳の結果が「おかしい」と思う人は多いと思うし、「通じればなんでもいい」ということであれば、通訳や翻訳を職業とする人たちはいらない。それでよければ、それでいいのだ。

「朝の夕食」という翻訳で、「今週の休日出勤はキャンセルになり、皆さんはお休みになりました。お休みをつぶしてしまって申し訳ないが理解してください」という翻訳でいいのであれば、時給1000円や1200円で募集を継続してください。

ちなみにクビになった30歳の彼は、求人サイトでまた探し始めました。名だたる企業の皆様は、くれぐれもお気をつけ下さい。