見出し画像

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・東京書籍の比較編

これまで山川出版社の『詳説世界史:世界史探究』(ややこしいタイトルだ…)の索引をベースにして、ほかの教科書の索引の比較を試みてきた。

今回比較するのは東京書籍の『世界史探究』だ。
例によって索引のみを比較して特徴をあぶり出していくが、ここでは主だったもののみをピックアップして挙げることにする
(内容構成の比較はおいおい行います)


表紙

東京書籍の世界史探究教科書の特徴


NHK特集『シルクロード』にも参加した写真家・大村次郷撮影の海南島のジャンク船と、イスラーム世界のアストロラーベの映えるマリンブルーの美しい装丁が印象的な東京書籍の世界史探究教科書。
副題が「Advanced World History」なだけあって、採録されている語句はかなり細かいものもある。山川出版社『世界史用語集』のランクが①〜③の用語の再録も目立つ。かなり細かい印象をうけるが、レイアウトがすっきりしていることもあって、意外と読めてしまう。
ただ、従来通りの説明とは異なるコンテクストを求める箇所も多く、なぜその単語がわざわざピックアップされたのかが読めないと、ただただ細かいと感じるだろう(ただ、細かいと感じる用語の多くは本文外のコラムや註における記載となってはいる)。
実際のところ、他社が精選した用語も記載されていたり、地域バランスの偏りをなくすために、オセアニア、アフリカ、中央アジアなどにはかなりアファーマティブ・アクションが講じられている。ただ、ある教科書に記載がある限り、それが用語集にも記載され、入試における細かな出題にお墨付きを与えてしまう面もあるから難しい。

ジェンダー史の観点から再録された人物名が目立つのも特徴だ。

  • ネフェルティティ

  • オランプ・ド・グージュ

  • ズットナー

表記はモンゴル史の用語などに現地音主義がとられているが、徹底されているわけでもない。慣例的なものにも従っている。

時事的な用語の採録は帝国や実教に比べると、唐突に用語が飛び出してくる印象は受けず、構造の把握と現代とのつながりが意識しやすいつくりとなっている。特に註やコラムの記載が絶妙である。
日本史用語についても、帝国や実教に比べるとそこまで前のめりではない。

地域バランスは山川の2種、実教、帝国に比べてもっとも良い。一般に周縁とみなされる地域への目配りが抜群で、オセアニア、アフリカ、中央アジアも世界史全体の変転のなかでしっかり把握させようとする。

また、「フランシス・ザビエル」「マグナ・カルタ」のように、外来語においては空白となる部分は、基本的に「・」記号を用いている。
世界史教科書各社では二重ハイフン「゠」(Unicode:U+30A0)がつかわれることが多かったのだが、基本的にすべて「・」で統一しているようだ。
ただし戦争や条約などで国名・地名が連なる場合にについては「イギリスエジプト条約」「イギリスランダ戦争」のようにダブルハイフンが用いられている。「石井・ランシング条約」のように人名をつなぐ際には「・」が用いられる。

***

検証:山川の索引にはないが帝国の索引にはある語句


アウスグライヒ

アブド・アルマリク
 本文に「第5代カリフのアブド・アルマリクは、ササン朝や東ローマ帝国の旧官僚が担っていた行政の用語をアラビア語に統一し、独自の金貨・銀貨を鋳造するなどの行政改革を行った。」(p59)

アリクブケ
 系図内に記載あり。山川詳説は系図内にも記載なし。

アール・ヌーヴォー
 本文に詳細に説明あり。
 「美術では…。19世紀末のアール・ヌーヴォー(新美術)とよばれる動向は、フランス・ドイツ・イギリスなどで、絵画だけでなく建築や家具・工芸品にまで及んで展開し、」


アルパカ

アルメニア人商人

アレクサンデル6世

イシス教
 「ローマ人の宗教では、共同で神々に犠牲をささげることによって神々のめぐみにあずかることが追求された。しかし、平和のなかにも不安を感じる人々は、それにあきたらず、東方起源のミトラ教、イシス教などの密儀宗教を信じ、個人の魂の救済を熱望するようになった。」と丁寧に本文で記載。
 このへん「地中海世界」ってつながっていたんだよ、ということを考慮する上でも重要な観点である。

古代の地中海世界には、ヨーロッパとアジア・アフリカというような区切りはなく、地中海周辺各所の文明は、相互に影響し合う関係にあった(出典:大城道則『古代エジプト文明―世界史の源流』講談社、2012年、231頁)


 

一般祈禱書

印象主義音楽

ヴァルガス
 山川出版社『世界史用語集』によれば、東京書籍のみに掲載されているようだ。

「永遠の繁栄」

英ソ軍事同盟
 本文に「この大西洋憲章にはソ連も加わり、1942年1月には英米ソ中など26か国による連合国共同宣言に発展し、5月には英ソ相互援助条約が結ばれ軍事同盟が強化された。」とありソ連が連合国側に転換した



駅伝制(アケメネス朝)
駅伝制(アッシリア帝国)
駅伝制(アッバース朝)
駅伝制(ジャムチ)
 駅伝制を4つそれぞれ再録。
 山川詳説では以下の2つが立項されている。
 ・駅伝制(オリエント)→アッシリアとアケメネス朝それぞれの頁を記載。
 ・駅伝制(モンゴル)

 アッバース朝の駅伝制は東京書籍ならでは。
 なお、もともとこれはウマイヤ朝の初代カリフであるムアーウィヤ1世(在位661〜680)が、先行するササン朝ペルシアやビザンツ帝国の駅伝制を踏襲し整備をはじめ、アブド・アルマリク(在位685〜705)が組織したものであるから、東京書籍のようにアッバース朝が初めてのような記載をすることは誤解を生むかもしれない。
 本文「アッバース朝は、バグダードを起点として駅伝生にもとづく交通・通信網を整備するとともに…」(p60)


エクバタナ


閻立本


「解放の神学」
 ラテンアメリカにおける軍事政権による支配下で台頭した「民衆の解放のために社会改革運動に積極的に参加すべきだとする」カトリック教会の動き。註に記載あり(p371)。

カーゾン法→ベンガル分割令

カーディー

カティプーナン党

カネム・ボルヌー王国
 アフリカ史の記載もしっかり。
 ムラービト朝によるガーナ王国の征服を「ニジェール川中流域とチャド湖周辺地域のイスラーム化を促した」と説明し、前者のマリ王国・ソンガイ王国のみならず、後者のカネム・ボルヌー王国などが「地中海沿岸地域との交易で栄えた」点を本文に明記している。
 地図には「11世紀末に王がイスラームに改宗 16世紀に鉄砲隊を組織し領土を拡大」とある。



カフラー王

カメハメハ1世
 リリウオカラニを参照。

嘉隆帝→阮福暎

ガルシア・マルケス

堯・舜・禹

「金ピカ時代」

禁欲思想
 3世紀後半に出現した「禁欲思想」(砂漠の僧窟)を本文で詳述している。4世紀はじめの修道院につながる動きである。

 なぜこんなことが書かれているかというと、これはもちろん「古代末期論」に基づくものである。

 註において「このような禁欲思想は、それまでの地中海世界にはみられないものであり、文明の基調が根本的に変化したことが推察される。このために、この変化をもたらした古代末期から中世初期を一つのまとまった時代としてとらえようとする歴史観が有力となっている。」

 
広南(クアンナム)国
 実教出版との比較を参照。

グリマルディ人
 註に記載。

クレオール文化

建州部

経世済民

玄菟(郡)

後蜀
 五代十国のうちの十国の一。
 本文「華南では比較的安定した諸政権が分立し、茶や紙・墨・磁器などの特産品を生んで、豊かな地域文化を形成した」の註に「とくに後蜀や南唐では、唐の文化を受けつぐ絵画や文学の発展がみられた」とあるもの。

抗糧

国際知的協力委員会

胡朝

500人評議会

古マタラム



サイモン委員会

サヌーシー教団
 リビアにおける反帝国主義運動の担い手。

サーフィン文化
 ドンソン文化だけでなくサーフィン文化も記載。

サヤー・サン
 1930年代初めに英領ビルマで発生した反英独立農民運動の指導者のこと。

シェーンベルク

時憲暦
磁針
「疾風怒濤」運動

シャヴィエル→フランシスコ・シャヴィエル(ザビエル)

シャーキャ(釈迦)族

写真


ジャディード運動
「ロシアに支配されたヴォルガ川中下流域やクリミアでは、ロシアやオスマン帝国の改革の影響を受けたムスリム知識人による、教育改革を中心とする運動(ジャディード運動)が展開され、それは中央アジアや東トルキスタンにも波及した。この運動のなかから、トルコ系の人々の民族的統一をうったえる思想も生まれた(パン・トルコ主義
)。
註に「新しい方式の学校の開設から、新聞・雑誌などを利用した政治運動にまで及んだ。ロシア当局やイスラーム保守派の妨害を受けたが、ムスリムに大きな影響を与えた。」


蒋経国

昇竜

食料生産革命

真番(郡)

進歩の観念
 17〜18世紀(近世ヨーロッパ)の社会と文化の章の「探検と啓蒙思想」の小見出し内に掲載。
 おもしろいのは「進歩の観念」を生んだのは、中国をはじめとするヨーロッパとは別の文物の存在であったという記述だ。


水真臘
 「すい」って読むのか!


ズットナー

 東京書籍の特筆すべきはこうした国際政治的な駆け引きの展開だけで第一次世界大戦の戦端をひらかせるのではなく、これに対する「調停と持続的な平和を求める動き」もちゃんと示す点にある。
 ベルタ・フォン・ズットナー(1843〜1914)は、これまでにも記載されていたのだろうか?(調査不足で筆者にはわからない)
 「また、ロシアのトルストイやオーストリアのズットナーなどの作家や知識人が、人道主義の立場から平和運動を展開した。」点が本文にあることは、従来のように大戦勃発後の文学者(レマルクやヘミングウェイなど)を挙げるのとは大きな違いであると感じる。
 なお、しばしば「ストウ夫人」と称されることの多かった『アンクル・トムの小屋』の作者は「ストウ」と表記された。彼女の名を明示して「ハリエット」と表記される向きもある。


ストリンドベリ

スフィンクス

スラム
 スラムは現代世界ではなく19世紀後半の本文に登場する(労働力の移動と変容する社会)。
 多くの教科書では産業革命の結果として労働者の搾取(劣悪な環境と低賃金など)にふれるため、スラムを産業革命の項目のなかで扱い、さらにウィーン体制下のヨーロッパ諸国の国内問題としてあつかうことが多かったように思われる。
 東京書籍でも、やはり産業革命とは別にまず労働者の立場が劣悪であったことをウィーン体制下(14章 国民国家と近代社会の形成)のヨーロッパ諸国をみるなかで「4自由主義の対等と新しい革命の波」のなかで触れている。本文には「労働者の貧困や都市衛生などの社会運動が生じ…」(p244)のようにある。
 しかし東京書籍の叙述がすぐれているのは、さらにこの現象を世界市場の形成のなかに位置づけていることである(第15章 世界市場の形成とアジア諸国の変容)。
 「19世紀後半から、世界ではかつてない規模で労働力の移動が生じた」とし、そのなかで「周辺部にはスラムや労働者街が拡大した」と続く(p261)。ここにあるのは歴史総合でもまなぶ、統合と分化、平等と格差の視点を、同時代の世界全体の産業資本主義の展開とからめるかたちでとらえる視点である。

 
スィナン
 ミマール・スィナン(シナン)。

スールヤヴァルマン2世

スレイマニエ・モスク

スンダ海峡

盛世滋生人丁

聖ソフィア教会(キエフ)
 コンスタンティノポリスの聖ソフィア大聖堂 ”じゃないほう”の「ソフィア」の名のつく教会。図版で紹介されている。
 11世紀半ばにキエフ大公により建立されるも、「のちにウクライン・バロック様式で再建された」とキャプションにある。

キーウ(キエフ)の聖ソフィア教会

 なお本編内の地図では「キーウ」ではなく「キエフ」表記。表紙裏(表2)の世界地図では「キーウ」。

遷界令

「先占権」
 索引に項目立てされていないが「無主の地」とともにコラムにおいて、アフリカ分割を加速させた概念として掲載されている。
 

千人隊(赤シャツ隊)
 千人隊(モンゴル)と区別されている。



大明宝鈔

ダイムラー

タスマン

タントリズム
 タントリズムを用いることで、以下のように説明することで、「なぜインドでは仏教が衰退したか」が説明される。
 タントリズムとはグプタ朝が衰退したころから広まった「特別な修行や呪文によって超自然的な力や現世利益が獲得できるとする教え」のこと(p70)。バクティの思想(6世紀ごろ〜)とともにタントリズムがヒンドゥー教で発展すると「仏教でもタントリズム的な密教が成立し、東インドを中心に広がった」。
 仏教の教義研究はすすめられていたが、「密教の発展とともにヒンドゥー教とのちがいが曖昧になったこともあり、仏教はやがてヒンドゥー教に吸収され、インドにおいては衰退した。」
 なおバクティをかかげた宗教運動による仏教・ジャイナ教の攻撃についてもふれている。

チチメカ人
 本文に「10世紀になると、メキシコ高原ではトルテカ人やチチメカ人が古典文明を継承し、新たな都市文明を発展させた。」とある。先コロンブス期を意味する「古アメリカ」の章に登場する。

チャンドラ・ボース
 中村屋のほうではない。
 チャンドラ・ボースの記載があるので思い当たるのは、明成社の歴史総合くらいか?
 東京書籍では「インドでは、大戦開戦後、イギリスへの戦争協力を要求し、反対派を弾圧する政府に対する反対運動が高まった。こうしたなか、インド国民会議派の指導者であったチャンドラ・ボースは、反英独立のため、日本の支援のもとインド国民軍を結成したが、失敗に終わった。」と註に記載している。
 このあたりの記載があるのは、昨今のインドのヒンドゥー・ナショナリズム台頭下のチャンドラ・ボース再評価をフォローする上でも重要だと思う。


チョイバルサン
 コラム「外モンゴルの独立」において説明される。


朝鮮労働党

張陵


 律令制の説明のところの註に「ただし皇帝の意向は勅として公布され、律令に優先して順守された。」とある。

褚遂良

全斗煥(チョンドゥホアン)

ディーナール

デーヴァナーガリー文字

鉄と穀物の同盟

鉄勒
 

デナリウス

デュボイス
 1910年に、全国黒人地位向上協会(NAACP)を設立した人物。

天帝

テンプル騎士団

統一新羅
 統一後の新羅をこのように記載する。

統一法→信仰統一法
 言い換え。

ドゥッラーニー朝
 ナーディル・シャーの項目を参考。

都市ハンザ

ドーラーヴィーラー
 インダス文明で近年注目されている遺跡。
 詳説の地図では「ロータル」の記載はあるが「ドーラーヴィーラ」の記載はない(p29)。実教の地図にはドーラーヴィーラとともロータルの記載もある。
 東書はロータルの記載はなく、「ドーラーヴィーラー」のように、最後の音をのばす。
 

ドンキン義塾
 読み方。



ナーディル・シャー
 「ペルシャのナポレオン」の異名を持つアフシャール朝の君主。
 1736年にイランのサファヴィー朝のトルコ系軍人であったナーディルが、これを打倒し、王朝をひらいてナーディル・シャー(位1736~47)として即位する。彼はデリーを占領するや、ムガル帝国の宮殿にあったルビー、エメラルド、ダイヤモンドを散りばめた「孔雀の玉座」をイランに持ち帰ったことで有名だ。
 なお、1747年にナーディル・シャーが暗殺されると、アフマドシャー=ドゥッラーニーがイラン人から自立し、アフガニスタンのカンダハールを占領しで、ドゥッラーニー朝(1747~1842)をおこしている。ドゥッラーニー朝は、インドに進入して1758年にはデリーを占領し、北インド一帯にも進入を繰り返した。
 一方、多数の地方政権の割拠していたイランでは、トルコ系のカージャール族がテヘランを首都としてカージャール朝を建てることとなる。
 東書ではこのあたりを本文において、日本の教科書のなかでも最も詳しく説明している(p265)。

 説明しないことによって、かえって固有名詞となってしまい、よくわかりにくくなるということもある。また、地域バランスを考慮すると、「主要地域」でない箇所も記載したほうがよいとの意向も働く。
 結果として暗記すべき語句は殖えてしまう。
 悩ましいところであるが、このあたりを統べる理論が不在であるのが現在の世界史でもある。


「南巡講話」

南唐
 五代十国のうちの十国の一。
 本文「華南では比較的安定した諸政権が分立し、茶や紙・墨・磁器などの特産品を生んで、豊かな地域文化を形成した」の註に「とくに後蜀や南唐では、唐の文化を受けつぐ絵画や文学の発展がみられた」とあるもの。


「西ローマ帝国の滅亡」

日華平和条約

二・二八事件

「人間の安全保障」

ヌエバ・エスパーニャ

ネ・ウィン

ネオ・コンサーヴァティズム
 →新保守主義

ネフェルティティ

ノーフォーク農法



バウリング条約

ハザール

パックス・ブリタニカ
パックス・ローマーナ
 表記。山川詳説はパクス=ブリタニカ、パクス=ロマーナ

ハマス

パリ協定(1954)

パリ協定(2015)

パリ講和条約(1947)
 パリ講和条約(1919)と区別。

ハワーリジュ派
 註にはアリーを暗殺した一派がシーア派とも敵対し、こう呼ばれたことが述べられている。

半坡遺跡

ハンマーム

ヒラーファト運動

ファン・エイク兄弟
 読み方。

ファン・チュー・チン

フェルドウスィー
 読み方。

複合社会

ブットー

ブディ・ウトモ

フーナ
 5世紀後半以降、西北インドの拠点から北インドに侵入し、グプタ朝を弱体化させた民族。
 これまでエフタルと同一視されることが多かったが、別集団という説にたち「フーナ」と表記しているものである(p60。断定はしていない)。
 なおこの語句や、この説について山川出版社『世界史用語集』(2023)の「エフタル」の項目にも記載はない。

米華・米韓・米比相互防衛条約
 3つそれぞれ採録されている。

米中和解

ペオン
 アシエンダ制のもとで負債を負い、使用された農民。
 「スペインの植民地では、17世紀前半から、アシエンダ制とよばれる大土地所有にもとづく農園経営が広がり、大農園主は負債を負った農民(ペオンpeon)を使って、農業や牧畜を営んだ。」とある。この過程で「人種的身分社会が形成されていった」と説明され、のちに現代にまで引き継がれる社会格差のルーツとしても、この記述を用いることができるだろう。

ペグー

ヘレロ人
 「ドイツ南西アフリカのヘレロ人のようにはげしい弾圧を受けた例もあった。」と本文にあり、註にドイツによる虐殺を「20世紀最初のジェノサイドとする見方もある」と紹介。

ヘンデル

ボダン

ホラーサーン

※ボン・マルシェ
 これは索引には採録されていないが、「パリの百貨店」として註に紹介されている(p261)。なお、山川出版社『世界史用語集』(2023)の項目にはない。




マクシミリアン
 メキシコ皇帝。

マトゥラー
 詳説も地図には記載あり(詳説p55)。

マームーン

マロロス共和国

南シナ海交易

ミュシャ

モルダヴィア公国



ヤークーブ・ベク
 京都大学2024年度入試で出題。
 「中央アジアにも進出したロシアは、コーカンド・ハン国の将軍であったヤークーブ・ベクが新疆で独立政権を建設しようとすると、新疆に出兵し、イリを占領した(イリ事件)」のように本文で詳細に説明。「ロシアの東方への領土拡大」の地図中でも「ヤークーブ・ベクの新疆進出(1865〜77)」と記載。
 トルキスタンやアフガニスタンなどの出題のある国公立大においては、しっかりと文脈づけがなされている東京書籍の教科書は必携であろう。

有給休暇法
 「フランスでは、1936年に社会党・急進社会党・共産党の提携により、社会党のブルムを首相とする人民戦線内閣が成立し、大規模な公共事業を実施し、今日のヴァカンスのきっかけとなる有給休暇法などを制定した。」(p323)
 註には「フランス版ニューディールともいわれ、週40時間労働制や団体交渉権も承認された」と追記。

邑制国家



ラガシュ
 詳説も地図には記載あり。

ラシュタット条約
 詳説では近世ヨーロッパの条約の記載はないが、東書はほとんどを記載する。

ラピタ文化
 オセアニア史を日本でいちばん詳述する東京書籍。前
1000年ごろにメラネシアの島々を通って、フィジー・トンガ・サモアにまで拡散したオーストロネシア語族による土器制作をともなう文化を「ラピタ文化」という。図版あり。

ラプラース

ラーシュトラクータ朝
 エローラの寺院の図版のキャプションに登場するほか、本文にも「デカン高原を本拠として8世紀に成立したラーシュトラクータ朝は、西海岸を支配するとともに北インドにも精力をのばした」とある(p71)。
 ヴァルダナの王国以後のインドはいちがいに「分裂時代」とされ、詳細は省かれることが多かったが、南インドでは活発なインド洋交易がつづいていたことにきちんと触れることで、ハルジー朝の時期の貨幣経済の発展との接続がスムーズとなると思う。
 ただ、チョーラ朝は今までも記載されていたわけだが、ラーシュトラクータ朝には、ぎょっとする向きもあるだろう。

リスボン条約
 「NATOの拡大ともあいまって、EUは2004年から東欧にも拡大し、09年にはリスボン条約が発効して政治的統合がいっそう強化された。しかし、これは各国の主権の強い抑制を意味しており、各国内に反EUの風潮を生み出した。」とし、その文脈のなかでイギリスのEU離脱(ブレグジットの語は用いず)を説明する。
 さらに註においては2014年のロシアのクリミア派兵・占領、2022年のウクライナ全土への大規模な軍事侵攻を説明し、NATO・EUの東方拡大との関連を示唆している(p384)。



リリウオカラニ
 太平洋分割がもっとも詳細なのは東京書籍。
 ポリネシアにおいて「18世紀後半、主要な島々で統一王権が成立しつつあった。」とし、カメハメハ1世による征服戦争が説明される。
 その上で「ハワイ王国は立憲君主政をとって近代化をすすめたが、アメリカ軍の介入により王政が倒され、その後、1989年にアメリカに併合された。」と締めくくる。
 リリウオカラニは欄外に「「アロハ・オエ」の作曲者としても知られる」として肖像写真とともに記載がある。

臨屯(郡)

累積債務
 ラテンアメリカの累積債務問題という小見出しのなかに、「1980年代には、累積債務問題と不況による国民の不満の高まりや、軍部や保守派に民衆の支持を求める動きがあって、各国で民政への移行がすすんだ。」(p371)とある。

歴史学派経済学
 リストがその先駆けとなった点が本文に記載。

レスプブリカ→共和政(ローマ)
  本文に「ローマ人は自らの国家を共和政(レスプブリカ)と読んだ(SPQRの記載はなし)。

ローイ
 ローイの記載は、山川(詳説・新世界史)・実教・帝国にはなかったが、重要人物とみなされてよい。「サティー」のコラムのなかで詳述されている。

 ラーム・モーハン・ローイは近代インドの宗教・社会改革運動の指導者。ベンガル地方のバラモンの家に生まれたが、キリスト教の影響を受け、カースト制度や寡婦殉死などの悪習に反対し、インド社会の改革を目指すようになる。亡くなった夫に妻が命を捧げる寡婦殉死(サティ)という風習を廃止する運動を起こしている。
 ただしこれは必ずしも一般的な風習ではなく、植民地化がすすむ中、18世紀にベンガル地方の司祭者階層のあいだで広まったようだ。イギリスの植民地当局はこれを問題視し、「ヒンドゥー教の野蛮な風習」をやめさせようとした。これに対しラーム・モーハン・ローイは、そもそもそんな決まりはヒンドゥー教の聖典にかかれていない」と主張し、サティの廃止に貢献した。ローイはサティを推進する祭祀階級のみならず、イギリス人の考え方に対しても厳しい目をもっていたのだ。伝統と近代の二項対立。これをときほぐし、実際の複雑なあり方に気づかせることのできる事例でもある。




労兵レーテ

ロードマップ
 2003年にブッシュ大統領が中東和平に向けて作成も、調停は失敗。本文に記載。

ロン・ノル



倭寇(前期)
倭寇(後期)
 前期後期に分けて記載。

ワズィール

ワラキア公国

ワトー
 ロココ絵画のうち唯一記載されている(本文に記載あり)。
 山川詳説はブーシェ、フラゴナールとともに消滅。

略語

COP

UNTAC
 国連カンボジア暫定行政機構(UNTAC)


このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊