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0.1.1 人類の進化 世界史の教科書を最初から最後まで

人類が生まれてから文字による情報が現れる時代(=歴史時代)までの期間を先史時代という。


どのくらい長い期間だったか、人類の歴史を「100cmの長さのモノサシ」にたとえてみよう。

先史時代は99.95cm、文字による情報が現れてから現代までの長さはたったの0.05cm(0.5mm)にすぎない。


うーん、もうちょっとわかりやすく表してみようか。




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このように、先史時代を「■」で表すと、歴史時代(=□)はこれっぽっちに過ぎない。



しかもこのうち、われわれと同じタイプの人類(=新人;現生人類;ホモ=サピエンス)が現れたのは、20万年前のこと。



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(「□」は、ホモ=サピエンスが地球上に存在した時代)




■の時代には、われわれホモ=サピエンスの代わりに、別種の人類が地球上に存在したんだよ。




猿人と旧人と原人と新人


脳の容積によって、伝統的・便宜的に「猿人」「原人」「旧人」のように分けるけれど、より細かな分類の方法は形質人類学の研究者の間でも一致を見ていない。

そもそも、これら人類の属する「類人猿」というグループが地球上に現れたのは、今から1500~2300万年前のアフリカ大陸のこと。
その証拠となる化石は、19世紀の生物学者 ダーウィンの予言通り、20世紀に発掘された。
現在では、500~700万年頃の間のどこかにチンパンジーから「人類」に分岐していったポイントがあったのではないかと考えられている。


)人というのは大きな分類で、その中にはわれわれ(=人)とは違う、さまざまな種(アウストラロピテクスやネアンデルタール人など)が含まれています。われわれ人間(正式な学名はホモ=サピエンス=サピエンス)は、その中から唯一生き残った人類だ。地球上に人類はわれわれしかいなくなったわけだから、「人間」のことをそのまま「人類」と呼ぶことが普通になっている。ややこしいけれど知っておこう。


もっとも古い人類の証拠は、現時点では700万年前のアフリカの化石とされている。この段階の人類を「猿人」(えんじん)と呼ぶ。
しかし500~400万年前頃の寒冷化・乾燥化によって熱帯雨林が枯れていき、森での生活が困難になった猿人は、熱帯雨林の端っこや乾燥した草原(サバンナ)に移動せざるをえなくなったようだ。

参照
 【人類誕生CG】440万年前の人類は愛妻家でイクメンだった!?【NHKスペシャル×NHK1.5ch】


アフリカ大陸から初めてユーラシア大陸に飛び出したのは「原人」で、ヨーロッパや現在のインドネシア方面にも到達した。

参照
【人類誕生CG】240万年前の人類のライバルはハイエナ!?【NHKスペシャル×NHK1.5ch】

その後、ヨーロッパ方面で独自の進化を遂げたのが「旧人」で、アフリカに残った原人から20万年ほど前に進化したのが「新人」だ。

旧人は新人と脳容積が変わらず、新人よりも大きな脳を持っていた者もいたくらいだ。死者を埋葬するなど「見えない世界」に対する感性も持ち合わせていたものの、大人数で協力して狩りを行うなどの複雑な情報処理能力は不得手だったようだ。ドイツのネアンデルタールで発掘され「ネアンデルタール人」と命名された化石が、その代表だね。

参照
【人類誕生CG】5万年前 ネアンデルタール人 vs. 巨大生物【NHKスペシャル×1.5ch】Neanderthals versus Mighty Creatures


一方の新人は、ヨーロッパのクロマニョンや中国の周口店上洞で見つかった人骨に代表される人類の一種だ。
骨や角でつくった骨角器をもちいて生活をより豊かにし、おそらく何らかの儀式のためにすぐれた洞穴絵画を残したことでも知られるよ。1940年にフランス西南部で発見されたラスコーの洞穴絵画が有名だね。

参照
【人類誕生CG】4万3000年前 進化したホモ・サピエンスの狩り【NHKスペシャル×1.5ch】Homo sapiens’ advanced hunting

洞穴絵画としてはほかにスペインのアルタミラ洞穴、フランスのショーヴェ洞穴が知られる。


新人は船も駆使し、数次にわたってアフリカの外に拡散した(出アフリカ)。


オーストラリアや南北アメリカ大陸にも移動し、ほぼ全世界に住みつくようになっていくよ。

)なお初期の頃は、その化石がどのような系統関係にあるのかハッキリしないことが多かったため、「クロマニョンで見つかった新人は“クロマニョン人” 」というように遺跡の名前で種を表すのが普通だった。しかしその種がどのようなルートをたどってそこに移動し、別の場所に拡散して遺伝的に変化していったのかが、ミトコンドリアDNAの解析によって明らかになると、世界各地の人骨相互の関係性が、20世紀の頃よりも複雑にとらえられるようになってきている。

ただし、DNAの分析といっても同じ骨や歯をもとにした分析であっても、その解釈や方法には研究者の間で相違がある。ホモ=サピエンスがどのように世界中に拡散していったのか、遺跡や骨の分布からざっくりとはわかっているものの、統一的な答えはまだ得られていないのが実情だ。

ちなみに日本に新人(ホモ=サピエンス)がやってきたのは、人類学者の海部陽介さんによると、少なくとも38000年前のことだったという。


約1万年前までの世界は氷期と呼ばれる寒い時代であり、人類は狩猟と採集をおこなって、変化の激しい環境に適応して生活を営んだ。


***



なお、原人のうち、ジャワ原人や北京原人と呼ばれるホモ=エレクトゥスという種は、猿人の用いた基本的に加工をほどこさない礫石器(れきせっき)ではなく、

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ハンドアックス」(握斧)と呼ばれる改良された打製石器を用いた。

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時代や地域によって製法に統一性があることから、世代を超えて特定の情報がシェアされていたと推測される。



旧人や新人になると、砕いた石からはがれ落ちた薄いカケラを剝片石器(はくへんせっき)として用いるようになる。特に新人は、骨や角でつくった骨角器をもちいて、魚釣りをおこなうようになるよ。


を使用するようになったのは原人のホモ=エレクトゥス以降で、

動物の毛皮などで衣服を着るようになったのは旧人以降。織物をつくるようになるのは新人以降だ。
言語については、従来は原人が使用していたと推測されていたけれど、現在ではいつから使いはじめたかどうかをめぐる定説はない。


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さて、今回は「われわれ人間以外の人類が地球上に存在していた時代(人間が地球上に存在していなかった時代)」(20万年前まで)と、「われわれ人間が地球上に存在するようになった時代」(20万年前〜現在)を扱った。

これからの世界史は、基本的に「われわれ人間の記録」ということになる。
けれども忘れちゃいけないのは、われわれ人間がいてもいなくても「地球」や「生物」はそこにあったし、あり続けるということだ。


ここからは余談になる。

歴史の教科書を読んでいると「地球の世界」(水、土、大気...)も「生物の世界」(生態系)も背景に押しやられ、あたかも世界が「人間の独壇場」であるかのように思えてきがちだけれど、哲学者ブルーノ=ラトゥールの言うように、そんなことなど今まで一度もなかった。自然は人間の背景などではないし、これまでもなかったのだ。こういうことは、くれぐれも頭の片隅に置いておいたほうがよいだろう。



それを念頭において世界史の流れを見ていけば、とりわけ18世紀後半以降の地球で進行する変化を契機として、純粋な「生物の世界」や手付かずの「地球の世界」といったものなど初めから存在しなかったのだということが、一層くっきりと見えるようになっていくはずだ。
3つの世界がくっきりと分かれていたことなど、もともと一度もなかったのだから。

また、「人間の世界」における不平等などのさまざまな分断が、(やたらと主語が大きい「」新世の議論に隠蔽されてしまいがちな)「ひと握りの人間」によって歴史的に生み出されていった構造そのものにも目を向けるべきだろう。そもそも「みんなの世界史」などはなから存在しないわけだけれども、世界史を「ひと握りの人間の世界史」から掬い出すには、それを「人間の世界」内部の多様性と「人間以外の世界」との関わりの中で捉え直す思考が必要だと思っている。何事も、最初が肝心だ。教科書の一番最初のパートだからこそ、時間的なスケールを長くとるとともに、人間/非人間という種間のスケールも広くとり、頭を柔らかくして世界史という“大海”のような“井戸”に潜る準備をしてほしい。いってらっしゃい。

このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊