ゼロからはじめる世界史のまとめ①約700万年前~前12000年
◆約700万年前~約12000年の地球
【図解】版がオススメです。
人間の誕生
人間ってもともとはサルだったんですよね?
―難しい質問だねえ。
まあどちらかというと、「サルのグループの中に人間が含まれている」といったほうがいいかな。
生き物には、自分の「コピー」を子孫として残すことができる力がある。
でも、「コピー」は必ずしも正確なものではなくて、自分の体の情報が書き込まれた「設計図」(DNA)は、写し取るときに「誤差」が生じることがあるんだ。
そのちょっとした「誤差」のことを突然変異と呼ぶよ。
その突然変異がたまたま周りの環境に適したものだったとしたら、その生き物にとって有利に働くよね。
すると、はじめは突拍子もない「突然変異」だったものでも、生きていくのに有利な特徴ならば、子孫へと受け継がれていく場合がある。
このようにして生き物は少しずつ進化していくと考えられているんだ。
(注)進化論についてより正確な理解を得たい方は、以下のような書籍でこれまでの論争をおさえていくとよいと思います(総合説)。
じゃあ、人間もそうやってサルから進化していったということですか?
―そうだよ。
いきなり「人間」という種類の動物が、ポンッと現れたわけじゃないんだ。
ただ、どこまでがサルで、どこからが「人間」といえるかという線引きには、微妙なところがある。
骨の化石で判断するしかないしね。
現在の地球に分布するサルのうち、「人間」に近いものを「霊長類」(れいちょうるい)という。
われわれも、現在の地球に180種あまりいる「霊長類」のうちの1つだ。
霊長類は、原猿類と真猿類に分けられる。
原猿類はかなり小柄で、恐竜(約6500万年前に絶滅した大型爬虫類)のいなくなった熱帯雨林の樹上で果実や昆虫を食べて生活していたようだ。
真猿類は約5000万年前に原猿類から分かれて、アフリカで誕生した。
彼らの特徴として、夜行性から昼行性になったこと、果実を探すために嗅覚よりも視覚を重視するようになったこと、大型化したこと、半樹上・半地上生活に変化したことが挙げられる。
その後、約2000万年前から地球の気温が低下し、熱帯雨林が縮小すると、真猿類の中には、熱帯雨林から脱出し、乾燥エリアに移動するサバンナヒヒやマントヒヒ、ゲラダヒヒも現れた。
サバンナヒヒ
ゲラダヒヒ
厳しい環境のサバンナで、彼らは果実以外にも昆虫や動物などを食べるようになった(雑食性)。
さらに、仲間と目で見てわかるコミュニケーションでをとりながら、食料を求めて長距離を歩きまわる必要も出てきた。
サバンナには猛獣も多いからね。
真猿類のうち、われわれに近縁の種を「類人猿」とよぶよ。
われわれにつながる類人猿の直接の祖先は、1500〜2300万年前のアフリカ大陸で生まれ、約1800万年前にアフリカ大陸とユーラシア大陸がつながると、類人猿は他の霊長類とともにアジアに広がっていく。
しかし、やはりその後の地球寒冷化によって、類人猿の生息スペースは狭まっていった。
類人猿には、現在アジアの熱帯雨林に分布するテナガザル、
フクロテナガザル、
オランウータンと、
現在アフリカの熱帯雨林や疎開林に分布するゴリラ、
チンパンジー、
ボノボがいる。
ゴリラは体がでかいですね。
ー 類人猿は体を大きく発達させ、さらに大きな集団をつくって生活を送るようになったんだ。
まだ完全に熱帯雨林からは出ていない。
じゃあ、熱帯雨林から出ることになるのはいつのことですか?
ー 地球がふたたび寒冷化する、今から500〜700万年前のことだ。
寒冷化が起こると、同時に乾燥化が起きるから、今まで水が豊富にあったところでも水不足が問題となっていった。
この時期にいったい何が起きたのか、今なお定かではないけれども、ちょうどこのころに、われわれにつながる人類の“ご先祖”が生まれたと見られるんだ。
われわれは「ホモ属」に属する人類だけれど、ホモ属の登場以前にはサヘラントロプス属(2001年に発見)や、アウストラロピテクス属など、別の系統の人類もいたんだよ。
「アウストラロピテクス属」って聞いたことあります。
―「アウストラロピテクス」は、歴史の教科書の最初のところに必ず載っているから、みんなよく知っている名前だよね。
彼らは今から400万年前頃のアフリカに住んでいた類人猿の一種。
二本足でまっすぐ立っていたことから、われわれにつながる「人類」だとされるよ。
石を割って道具も作っていたんだ。
でも、すでに絶滅してしまっているから、われわれとは別の種類の生き物だということになる。
その後は?
― アウストラロピテクス属からは、いくつもの種類に枝分かれがあって進化が起こっていくん。
われわれに近い種類の人間(注:ホモ=エレクトゥス)が誕生したのは、アウストラロピテクス属と同じく、約240万年前のアフリカ大陸だ(※訂正しました「約240年前」→「約240万年前」2020/01/30)。
アウストラロピテクス属とは異なる特徴をもち、「ホモ属」に分類される。
彼らは脳みその大きさが一段と大きく、アフリカの外に移動し、火も使えた。
火というテクノロジーを手にした人間は、猛獣を追い払うことが可能になり、地上で寝ることもできるようになった。
さらに食べ物の加熱も可能となり、料理ができるようになった。
骨の特徴をみてみると、おそらく言葉を話すことができたらしい。言葉によるコミュニケーションをとることが可能になったことでチームワークが高まり、情報を子孫に伝えることができるようになった。
ホモ属より前の類人猿の場合、何かいいアイディアがあっても仲間に“思った通り”に伝えることは難しく、自分がこの世からいなくなった後、つまり子どもや孫に伝えることは困難だ。
でもホモ属には、それができるようになったわけだ。
喜びや悲しみも、言葉や歌にのせて他人とシェアすることができる。さまざまなよくわからないことに、自分たちで意味を付けることもできるようになった。
こうして人間は、一般の動物以上の存在になっていくことになったわけだ。
私たちの登場はまだですか?
―もうちょっと待ってね。
今とは比べ物にならないくらい寒くて乾燥していた当時の地球では、生き抜くだけでも大変なこと。
アフリカで進化した人間の一種(ホモ=ハイデルベルゲンシス)が、アフリカの外に出て、寒いヨーロッパの環境を生き抜いた結果、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)という脳みそが一段と大きな人間に進化した。
火・言葉を使えるし、「死んだらどうなるか?」ということまで考えられたらしい。お墓が残っているからだ。
一方、アフリカに残って進化した人間の一種が、われわれだ。正式名称をホモ=サピエンスという。
同じホモ属であるネアンデルタール人よりも脳みそは小さいんだけれども、複雑なことを考えるのが得意だった。
亡くなった仲間や家族を埋葬(まいそう)する風習も、ネアンデルタール人から確認できる。
ネアンデルタール人とわれわれホモ=サピエンスは、極寒の気候(20万年前~12万年前)を生き抜き、いったん気候は温暖化。
この2種類の人間は一時期「共存」していたことになる。
ネアンデルタール人が、ホモ=サピエンスに進化したわけじゃないんですね。
―そういうこと。
でも、だいたい7万年前くらいになると、ホモ=サピエンスがネアンデルタール人を圧倒し、ネアンデルタール人は絶滅してしまう。
ホモ=サピエンスとの戦いがあったんじゃないか?とか、火山が大爆発してネアンデルタール人の食料がなくなったんじゃないか?とか、さまざまな説があるけれど、ハッキリしていることは、「最後にわれわれが生き残った」ということだ。
つまりわれわれは、これまで存在した人類の中で、”唯一のサバイバー“ということになるね。
ホモ=サピエンスはコミュニケーションをとるのが得意で、イヌとともに集団で狩りをして大きなゾウなどを捕まえていたようだ。寒さ対策のために服も着ていたし、投げ槍(やり)も発明している。
最後の氷期が地球を襲う中、ホモ=サピエンスは獲物を追ってアフリカから世界各地に進出した。
アフリカから北に向かった人たちはヨーロッパにたどり着いた。
ユーラシア大陸を東に向かった人たちのうち、インドのあたりから海の世界に進出した人たちもいた。最終的にオーストラリアにまでたどり着くことになる。
その過程で、同じ種類とはいえ気候によって肌の色などの特徴が変わり、黒人や白人といった人種が生まれていった。
黒人と白人、それに日本人は、みな同じ種類なんですね?
―まったく同じ種類だ。身体的な見かけが似通っているだけで、人種の違いによって優劣はないよ。
―ここからは、エリア別に当時の様子をかんたんにみていこう。
◆約700万年前~前12000年のアメリカ
アメリカには人間はいますか?
―人間はアフリカで生まれて、そこから全世界に広まっていった。
この時期の南北アメリカ大陸にはまだ人はいないよ。
代わりにさまざまな種類の大型哺乳類が分布している。
巨大ナマケモノとか、
巨大アルマジロとか...。
南北アメリカ大陸にも真猿類は分布していたんだけれど、ここでは類人猿には進化しなかった(だから、南北アメリカ大陸にはゴリラもチンパンジーもいないでしょ)。
気候の寒冷化・乾燥化の影響が少なかったからだと言われているよ。
◆約700万年前~前12000年のオセアニア
―オセアニアの様子をみてみよう。
「オセアニア」ってどこですか?
―ユーラシア大陸と、南北アメリカ大陸に囲まれた海のエリアのことだよ。
人間がこのエリアに足を踏み入れたのはだいたい6万年前のことだといわれている。
船を使ったということですか?
―使った人もいたのではないかと言われている。
火山島が多いから噴煙(ふんえん)を頼りに移動したのではないかな。
でも実はこの時代には、ユーラシア大陸からオーストラリアまで歩いて移動することができたんだ。
つながっていたんですか?
―そう。ユーラシア大陸の東南(北を上にして右下)から、今のインドネシアを通ってニューギニア島のあたりからオーストラリアまでがくっついていた時代があったんだ。
でも、その後の地球温暖化によってこの「海の通路」が切り離されると、オーストラリアは「ひとりぼっち」になってしまう。つまり、外の世界との交流がほとんどなくなるんだ。
◆約700万年前~前12000年のアジア
―アジアを東(北を上にして右)からみてみよう。
アジアってどのあたりの地域ですか?
―一番大きな大陸があるよね。これがユーラシア大陸だ。
その西(北を上にして左)の端っこが「ヨーロッパ」というのだけど、それ以外の東の部分が「アジア」だ。日本も「アジア」に含まれるよ。
この時代には東アジアにも、アフリカからわれわれと同じ種類の人間が渡って来ている。今の中国の首都ペキンで代表的な化石(注:北京原人)が見つかっているよ。
今から4万年前には朝鮮半島から日本にも、ホモ=サピエンスが移動していったようだ。
南アジアにも人間の生活した跡が見つかっている。今でいうインドのあたりだね。
西アジア(北を上にして左の方)の人間は、かなり早い段階から、大麦、小麦などの穀物(実が食べられる植物)を育てていることで知られている。
ふつう植物の実っていうのは子孫を残すために茎(くき)から落ちてしまうものだけれど、たまたま「実を落とさないタイプ」の個体どうしをかけ合わせ、「実が茎についたままのタイプ」を品種改良していった。こうすれば収穫がラクだからね。
だんだん「実がたくさんなるタイプ」とか「乾燥に強いタイプ」もつくられていくようになるよ。
この時期の終わり頃には石の臼(うす)も見つかっている。
実をくだいて粉にして、水分を混ぜてコネて発酵させれば、パンやお酒をつくることもできるようになった。
◆約700万年前~前12000年のアフリカ
―アフリカは先に説明した通り、人類がサルから進化した舞台だね。
このころのサハラ砂漠は「緑のサハラ」といわれ、今では想像でいないくらい緑であふれていたんだよ。
◆約700万年前~前12000年のヨーロッパ
―アフリカからヨーロッパに移住したホモ=サピエンスは、各地の洞窟の奥に壁画を残しているよ。
有名なのものはフランス(注:ラスコー)とスペイン(注:アルタミラ)に残されている。
世界最古の美術の一つだ。「狩りが成功しますように」というお祈りに使われたらしい。
「目には見えない世界」とのつながりや、「仲間」(30〜50人程度のバンドと呼ばれる集団から、150人程度の中くらいの集団を使い分けていたものと見られる)とのつながりを確かなものにするために、行っていたのだろうと考えられている。
(注)2020/04/23 一部改訂
このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊