見出し画像

瀬戸内のアートに触れる旅 #3|地中美術館への潜入

2日目の概要

直島滞在の2日目。この日は、地中美術館李禹煥美術館を巡る。だいぶ長くなってしまったので、この記事は、地中美術館の内容のみとする。

地中美術館に向かう

2018年8月から、地中美術館の入館には事前予約が必要となっている。そのため、事前に10時15分入場のチケットを購入しておいた。

例のごとく、町営バスでつつじ荘まで向かい、今回はベネッセアートサイト直島の場内シャトルバスを利用する。

10分ほどでチケットセンターに到着し、予約済みのチケットを発券。チケットセンターから美術館の入り口までは徒歩で3,4分ほど離れているのだけれど、まずここで荷物をロッカーに預ける。

写真にもあるように、椅子は前の記事でも触れたおそらくVitraのもので、加えてスタッフの方のTシャツとか、PC端末までが全て色味とか世界観を統一するセレクトになっているのが、非常に心地よい空間だなと思いました。

画像1
地中美術館 チケットセンター

道すがらには、「地中の庭」と呼ばれる遊歩道が整備されていて、クロード・モネの作品を想起させるような草花や樹木が池を取り囲んで生えており、既に展示体験が始まっているのだな、と感じさせる。

画像2
画像3

安藤忠雄建築の美しさ

改めて、美術館の概要を、公式サイトより引用する。

地中美術館は「自然と人間を考える場所」として、2004年に設立されました。瀬戸内の美しい景観を損なわないよう建物の大半が地下に埋設され、館内には、クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が安藤忠雄設計の建物に恒久設置されています。地下でありながら自然光が降り注ぎ、一日を通して、また四季を通して作品や空間の表情が刻々と変わります。アーティストと建築家とが互いに構想をぶつけ合いながらつくり上げたこの美術館は、建物全体が巨大なサイトスペシフィック・ワークといえるでしょう。

https://benesse-artsite.jp/art/chichu.html

まず何よりも先に感動したのが、安藤忠雄建築の美しさ。美術館の入り口を入ると、コンクリート張りの通路や階段を通ってアートエリアへと向かうのだけれど、そのモダンさが醸し出す神秘性に、自然と期待が高まる。暗い通路の先に光が差していて、何が待っているのかと胸が躍る。

画像4

その他は、三角状の螺旋のスロープのデザインが特に気に入った。スリッドが刻みこまれていることで、スロープを歩きながらも、その先の光景を眺めることができる。

三角形に切り取られた空間の底部に敷き詰められている岩々だけをとっても、その建築の美しさと相まって、いつまでも見ていられるような光景だったんですよね。

あと、トイレにしたって、かなり薄暗い中にあったのだけど、小便器の形がよくあるあのタイプとは違ってそぎ落とされたデザインになっており、これまた美を感じたのでした。

モネ

美術館内部には順路はないとのことなので、心の赴くままに向かう。とはいえ、やはり最初に見たいのはクロード・モネの睡蓮だったので、その展示室に入る。

入場にあたっては、靴を脱いでスリッパに履き替える。恐る恐る歩を進めると、壁越しに次第にその姿が現れてくる。

やっぱりこういう作品を鑑賞するときって、ご対面の瞬間が一番緊張するんですよね。次第にその全貌が明らかになるにつれて、少し足を止めたくなるような一瞬の躊躇いがありながらも、体は自然と吸い込まれていく。

「美しい。。」

あまりにもありきたりな感想ではあるけれども、まず最初に感じたのはそれ。モネの作品および睡蓮については、これまでも見てきたことがあった。けれども、ここの展示の大きく異なることは、「サイトスペシフィック・ワーク」であるがために作品をよりよく見せるための最大限の創意がなされていること。

天井から降り注ぐ自然光。白一面で覆われた壁。細かい大理石が敷き詰められた床。そして、そこに堂々たる存在感を持って存在する特大の絵。

それらが一体となって目の前に現れた時に、やはりその美しさに感嘆してしまった、というのが噓偽りない印象でした。

ここの話を改めて読んでみると、なるほどなーとも思いますね。確かに、部屋の丸い角は、柔らかいイメージを創出するのに寄与していたと思うし、斜めに構えられている展示スペースは、その作品が次第に視界に入ってくる体験によって、独特の緊張感を生み出していたように感じる。

ジェームズ・タレル

次に気に入ったのは、ジェームズ・タレルの「オープン・スカイ」だったかな。空やそこから降り注ぐ光そのものをアートとして展開されている空間になっていて、四角形の部屋の壁沿いには椅子として座れる高さの突起がめぐらされていて、白い天井の中央は正方形に繰り抜かれている。

腰かけながら、何も考えずにぼーっと天井を見上げて、そこを流れる雲を目で追う。何回か座る場所を変えては、何度も空を見上げていた。笑

見上げる限りでは、正直、本当に天井が繰り抜かれているのか、実は何かしらの膜があるのか、漠として判然としていなかったんですよね。だって、大雨が降ってきたら水浸しになってしまうし。

で、実はこの後、カフェに滞在していた間に雨が降り始めて、いざ検証するチャンスだ!と意気込んで再度このスペースに戻ってきたところ、床は濡れているし、たしかに雨が降り注いでいる。

ということで、本当に穴は空いているんですね。

何かしら特別な"もの"があるものではないのだけれど、心を開放しながら、自然の光を感じて、空を見上げて、風の音を聞いて、その時に心に浮かんでは消える様々な"こと"自体が、この作品を通して得られるアート体験なんじゃないかな、と思いました。

ウォルター・デ・マリア

3人目のアーティストは、ウォルター・デ・マリア。

これまた衝撃的な作品で、その広大な空間の内部、階段の中腹に花崗岩の巨大な球体が鎮座していて、それを取り囲むように無数の金の彫刻が存在している。

球体は、GANTZを思わせるからか、どこかしら恐怖感を醸し出す。金の彫刻は木製なのだけれど、三角・四角・五角形の組み合わせの3本セットが一組となっている。空間に対して対称に配置されているそれらは、どんな規則性に沿って組み合わせが決定されているのだろう?というところまでは判別できなかったのだけれど、球体をより高貴なものとして祭り上げるような存在として、より荘厳が空間を作り上げているのだった。

カフェ

鑑賞後には、ここでもミュージアムカフェに立ち寄って、昼食をいただきました。つまり、展示室には、90分くらい滞在していたことになる。

画像5

注文したのは、スモークサーモンのベーグルサンドイッチのサラダ・スープセットと、「せとぽん」というオリジナルの瀬戸内デトックスジュース。

眼前に広がる瀬戸内海を眺めながら、鑑賞の余韻に浸りつつ、お腹も満たす、という満足な時間を過ごしたのでした。

そこで降り出す雨

...として文章を締めくくりたいところ、食後にテラスに出られるということだったのでこれまた繰り出そうとしてみると、どうやら雨が降り出している。。

天気の変わりやすさは1日目に体感していたはずだったが、ここまでだったとは!

この日は傘を持ってきていなかったので、ミュージアムショップに睡蓮柄のものが売ってたりしないかと探したものの存在せず(あったとしても、睡蓮柄だったら買っていないと思う)、ミュージアムショップで本を読みながら雨宿りしようかとも思ったけど、一旦、帰路に着くことにする。

前述のように「オープン・スカイ」の検証を行えたのはよかったものの、雨具替わりとなるレインジャケットはチケットセンターのロッカーに預けてきてしまっていたため、そこまでの帰り道では美術館が用意してくれていた傘を利用して戻ったのでした。

画像6

※帰り際に撮った写真では、床が濡れていますね。

今日の一曲

地中に潜った体験を、海へのダイブと重ねて。
Deep Sea Diving Club - cinematiclove


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?