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第3回 元に戻るのは千年後 燃料デブリの廃炉に向けて

今から11年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災。それにより福島原子力発電所の全電源が喪失。核燃料が溶け落ちるメルトダウンを起こし、世界最悪の原子力事故となりました。
原子力発電所の廃炉に向けた取り組みについて解説をします。

①福島原発の現状

震災直後の福島原発の写真です。(写真引用 経産省ホームページ)

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上部が完全に崩壊した福島原発

上部が完全に崩壊し、白い煙が立ち込めています。そして、これが現在の福島原発です。(写真引用 経産省ホームページ)

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カバーを設置した福島原発

屋根を設置したことで、放射能の流出を抑えることができます。これにより、建屋の近くまで防護服を着ずに行くことができます。

では、今の福島原発が抱える問題について解説を行います。
福島原発が抱える問題
一つ目は、燃料プールにある使用済み燃料の処理です。
二つ目は、汚染水の処理
三つ目は、原子炉建屋の取り壊し
四つ目は、核燃料デブリの取り出し
 ほかにも様々な課題がありますが、主な課題はこの4つです。

②燃料プールの使用済み核燃料の処理

使用済み核燃料とは名前の通りで、原子力発電ですでに使用した燃料棒などのことです。(写真引用 Wikipedia)

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燃料プールに入る、使用済み燃料

使用済み核燃料はこのように、原子炉建屋の一時的に保管され、その後再利用されます。

水素爆発が発生した1号機・3号機・4号機のうち3号機・4号機はすべての核燃料の取り出しが完了しています。1号機には、392体の使用済み燃料が残っています。2号機は、615体の核燃料が残っています。今後、カバーを設置し核燃料を取り出す予定となっています。

③汚染水の処理

これは、東京電力のホームページから引用した写真です。

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汚染水の汲み上げ

放射能で汚染された土と雨水が触れると、汚染水となります。もちろんそれをそのまま海に流してはいけません。
東京電力では汚染水対策の3つの方針として
「Ⅰ取り除く Ⅱ近づけない Ⅲ漏らさない」を掲げています。
汚染水を外部に流出させてはいけないため一時的にタンクに貯蔵しています。(画像引用 東京新聞

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大量のタンクがある福島原発敷地内

もちろん、無限に汚染水を貯蔵できるわけではありません。限界があります。137万トンが限界とされていて、今年秋ごろには満杯になると予想されています。

では、どのように放出するのか。まず汚染水には多くの放射性物質が含まれています。そこでALPSという汚染水を処理する機械を使用します。それにより、トリチウム以外の物質を取り除くことができます。この放射性物質を取り除いた水を処理水と言います。

この処理水をWHOの基準値の10分の1以下に海水で薄め太平洋に放出をします。トリチウムは水素と同じような元素のため科学的に取り除くのは不可能です。
ですが、トリチウムは人体に影響を与えない物質です。そのため、処理水を海洋放出することじたいは問題ありません。

処理水の海洋放出で問題になるのは、風評被害です。多くの専門家がこの風評被害を懸念しています。

④原子炉建屋の取り壊し


廃炉の最終目標は原子炉建屋を取り壊し完全な更地にすることと思われています。
しかし、明確な目標は定められていません。正確に言うと定めることができません。
過去にメルトダウンが起きたのは、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故とスリーマイル島原発事故です。
チョルノービリ(チェルノブイリ)の際は巨大なコンクリート(石棺)で封じこめ
スリーマイル島は現在もそのままの状態になっています。
つまり、過去に完全に廃炉できた事例がないのです。(写真引用 Wikipedia

チョルノービリ(チェルノブイリ)原発 石棺


⑤燃料デブリの取り出し

燃料デブリとは、高温になった燃料棒が周辺の物質を巻き込みながら溶けた塊のことです。(写真引用 経産省

福島原発内の燃料デブリ


福島原発の場合、核燃料と核燃料の容器、原子炉格納容器の床が溶けたものが原子炉建屋や格納容器に固まりついています。
このデブリからは大量の放射線が出ていて、数秒近くに居ただけで致死量の放射能を浴びてしまいます。
また、このデブリは1000年以上に渡り放射能を出すとされており、非常に処理が困難です。


当初は、原子炉格納容器に水を貼り、デブリを砕きながら取り出す予定でした。
この方法ならデブリの飛び散りを対象源に抑え、かつ放射線を劇的に減らせます。
しかし、福島原発ではこの方法はできないことが判明しました。
原子炉格納容器に穴が空いていたのです。そのため、この方法はできません。
では、どうするのか。一番現実的な方法は、水を張らずに原子炉格納容器の側面に穴をあけそこからロボットアームでデブリを取り出すというものです。
ロボットアームと聞くと現実味がないようですが、実際にイギリスとの共同開発でロボットアームを作っています。
しかし、この方法には問題があります。リスクが高いということです。
水を張らないため放射線が多くあり、作業員が被爆する可能性があります。

スリーマイル島原子力発電所では、一部のデブリの取り出しに成功しましたが、未だにデブリの多くが残っています。また、スリーマイル島は原子炉格納容器が損傷していなかったため、水を貼ることができました。
福島原発のような状態でデブリを取り出すというのはとてつもなく難しい作業なのです。

最後に、多くの方が福島原発の廃炉に協力してくださっていることに感謝を申し上げます。11年前に発生した東日本大震災で多くの人が家族と、友達と、知り合いと、別れました。

どうか東日本大震災を風化させないでください。


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