介護の終わりに(3)

介護についてまとめる人は多いのだろうか?この本を読んで、一言の感想を、と求められれば、その疑問だろう。

最後の章に「介護を終えたら、あなたの介護の物語を書き上げるべきだ」というような文章がある。

読み終わって、3か月くらいその文章が気になっていた。介護の物語っていったってなあ…。大した物語もないんだよなあ…。

それで突如こうしてnoteで介護について書こうと思った。理由があると、格好いいと思う。理由が思い出せない。しいて言えば、昔から言われたことを拒否しないのが私の性質だったから。

私は父を介護していない。そもそも近くに住んでいない。飛行機で1時間以上かけて帰省するくらい離れて住んでいる。

父が危篤だと母から電話をもらった時、驚いたが「ついに来るべきこの時がやってきた」と厳かな宣託を受けたような気持になった。しかし、危篤だから帰って来い、とは、ずいぶん急な気がすると夫に言うと、危篤とはそのようなものだろうといたく不思議がられた。そうか、危篤か。

新幹線、飛行機、フェリー、自家用車…。交通手段の選択肢はたくさんある。危篤だから早く行ったほうがいいんだろうと、飛行機を選んだ。2018年。コロナとは無縁のころだ。

ところが、だ。週末のせいか、最も近い空港からの便が満席続きだ。冬の2月。実家のある市で大きいイベントのある時だったせいだろう。仕方がないので、隣の県の空港からの便で行くことになった。翌日午後2時の便。危篤なんだよな、急いだほうがいいのに、と夫の気持ちが急いでくれた。翌朝の新幹線で隣の県に行くことにした。

忘れられないのは、その新幹線に乗り込みほっとした時だ。



「介護が終わったときにあなたの物語を書くべきだ」(酒井穣)。確かにそうだなと素直に書き始めました。とはいえ、3か月以上悩みました。