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Vol.7 自分の葬儀をプロデュースする

葬儀の準備をする

身内の葬儀を経験した方であれば、その慌ただしさを思い出すことができると思います。
未経験の場合、それでもどなたかの葬儀に出席したことはあるでしょうから、その様子を思い出してみましょう。
皆さんは、これまでにどのような葬儀を体験したことがあるでしょうか。
私はこれまで仏式、神式、キリスト教式を経験してきました。
宗教式の葬儀はそれぞれの宗派で違いがありますから、その場の作法に則った形で故人を送ります。
そのような種別とは別に、葬儀には一般葬や家族葬、一日葬などの種別があります。会社などで行う社葬や芸能人の方などが行うファンに向けたお別れ会なども葬儀の種別に入ります。
これらは故人の意向や家族の都合、関係者の思惑も含めさまざまな様相を見せます。
生花葬の場合は「生前はバラが好きだったので」と祭壇をバラで埋め尽くしたり、「故人の写真を皆さんから集めて斎場に飾りたい」とのお話で写真を見つけてお渡ししたこともありました。
しかしながら私の経験では、亡くなった本人が「こんなお別れをしたかったんだな」と感じられるような葬儀に出席したことはありません。
それだけ自分の意思を自身の葬儀に反映させることはむずかしいことです。

その理由はいくつかあります。
一つ目は本人が準備をしていないからです。
終活をしている方はいざ知らず、そうでなければ本人は「自分が死ぬとは思っていない」ので、葬儀を事前に準備することはありえません。
二つ目は家族が準備をしていないからです。家族も本人への確認をしないですし、たとえ入院していて、これが意思疎通の最後の機会だと解っていたとしても、本人に対して葬儀のことなどは「縁起でもない」と口に出すことはしません。
三つ目は、葬儀を一から十まで経験することは、多くの人にとっては数少ないからです。
誰しもがいつかは経験することであるにもかかわらず、その準備を一切していない状況から怒涛の数日間に突入するのが葬儀です。
その時の家族の負担は膨大なものになり、その結果は葬儀社に丸投げというケースが多いと思います。
私の場合も同様でした。ただ母を送った時は数年前に父を送った時の記憶と記録が残っていたので、それほど慌てることはありませんでしたが、急に亡くなったので、右往左往する数日であったことは確かです。

終活の目的が「自分自身や家族のために準備する」であるとすれば「自分らしい最期を迎えたい」と「家族の負担を減らしたい」を両立するためには「事前の準備」が不可欠です。
しかも自分の体が動く元気な時から始めて、しっかり時間をかけることが成功の秘訣と言えます。
では具体的に、どのような葬儀にしたいかを考えてみましょう。

葬儀社の選別

葬儀全般を生前に相談する場合の相談窓口はどこでしょう。
一般的な質問であればウェブの相談窓口に質問を投げかけてみるのも良いでしょう。
また普段から終活カウンセラーの方に相談している場合は、すでにさまざまな知識をお持ちだと思います。
冠婚葬祭をバックアップする互助会のようなところと契約している場合は、会費を払っているのですからその窓口に相談するのが筋です。
先祖代々お世話になっているお寺などに相談する方法もあります。
地方自治体でも窓口を設けていたりします。
ウェブ上には全国組織の葬儀社も多数あり、もしもの時の相談窓口は星の数ほどあると言えます。

もし地元で代々お世話になっている葬儀社があれば、いろいろな意味で親身になってくれるでしょうから、相談するとたくさんのことを教えてもらえると思います。
そうではなく特定の葬儀社が決まっていないのであれば、数ある葬儀社から自由に選ぶことができます。他人がすれば不謹慎だと言われるかもしれませんが、自分で自分の葬儀を取り仕切るためですから、カタログショッピング並みに資料を集めて比較検討することをお勧めします。
そして「生前相談」であることをハッキリ伝えて、多くの情報を集めて比較検討しましょう。
その結果から妥当な落としどころを見つければいいのです。
最終的に地元の火葬もできる斎場ですべて行うことになったとしてもです。
そこで自分なりに納得できる葬儀を行って、家族や参列していただいた方々とお別れするのが幸せだと思います。

そのためには自分の葬儀をどうするのかの基本方針を決めておかなくてはなりません。
ここで終活の始め方の時にお話しした「自分の葬儀に対するイメージ作り」が役に立ちます。
一般葬なのか家族葬なのか、宗教葬なのか無宗教なのか、参列者への通知方法はどうするのかなど、決めておかなければならないことが山ほどありますから、脳みそをフル活用してイメージしましょう。

生前相談

多くの葬儀社や互助会では生前相談を受け付けています。ショッピングモールなどで相談会を行っている場合もあります。そこでは事前に準備するべきことを教えてくれるので、しっかり勉強しましょう。
納得すればそのまま契約しても構いませんが、少なくとも3つくらいは比較検討するのが賢い方法です。
今日明日に契約しなければならない状況でなければ、情報を集めて家族と話し合いましょう。
そして契約する場合は、どこまでの範囲をお願いするのかを明確にしましょう。ご家族も同席していただいて、金額的負担の有無や、斎場などで当日に別途必要になるお金なども確認して、もしもの時のすべての流れを家族全員が理解できている状況がベストです。

遺影写真の用意

これまでの遺影の写真は、亡くなった時から葬儀までの短い期間で間に合わせに用意したものを使うことが多かったと思います。
Vol.0でも書きましたが、お恥ずかしい話、私の両親の時も手元にある写真の中から引っ張り出して作っていただきました。
また後日談として、皮肉なことに葬儀が済んで遺品を整理しているときに遺影に使用したものより表情の良い写真が見つかりました。

互助会の説明会や葬儀社の相談会に併設して無料で遺影用の写真を撮影してくれるサービスもありますので、利用して良いと思います。
しかしながら、その写真に自分らしさが出ているかどうかが重要です。
せっかく事前にイメージした葬儀をするための準備にもかかわらず、ついでに撮影した写真で良いのでしょうか。
遺影は自分の葬儀に参列していただいた方が真っ先に見る写真です。
その写真の撮影には元気な時の姿を見せたいと思いませんか。
お気に入りの服を着て、大好きな場所で微笑んでいる写真でお迎えするためには、遺影を生前にしっかり撮影しておくことが大切です。
元気なうちに撮影するのがおすすめですが、だからと言って10年以上前の写真では現実とかけ離れています。
誰にでも若い時はありますし、「あの時は良かったな」と思うものです。
しかし年を重ねて多くを経験したことで現れる表情は若い時には無いものです。今が一番輝いている、だからこそ今を認めて、今を大事にすることが、自分を大事にすることだ思います。
「実際に使うときには自分で見ないのだから」と、なおざりにしないで専門家に撮影してもらいましょう。

祭壇の規模

祭壇の規模は予算に直結するので、比較検討する必要があります。
また一般葬と家族葬では、そもそも葬儀の規模が違うので、葬儀の場所や様々な制約や決まりもあります。
近所への見栄で立派な祭壇を選ぶ場合もありますが、ここは冷静になって選択するのが賢明でしょう。
先日お話しした近所の葬儀社の方のお話では、葬儀社への問い合わせの初めの言葉はおおむね「いくらかかるの?」から始まるそうです。
またCovid-19 の影響で一般葬から家族葬に変わってきているので、一般葬との価格と内容の違いを訊かれることが増えたとおっしゃってました。
葬儀には様々なグレードが存在します。その点をしっかり見極めましょう。
また生花葬などは時期で花の値段が変わることもありますので、確認をするようにしましょう。
互助会や職場での共済会などの斡旋で値段を抑えることができる場合もあります。使えるものはすべて使って、納得のいく状態で決定することをお勧めします。

関係者への連絡方法と範囲

どこまでの範囲で通知するかは、自分の判断だけでは収まらないので、家族と話し合いましょう。
「疎遠になっている親戚には伝えるか」とか「友人にはどうやって伝えるか」などです。
「来てほしいな」「来てくれるかな」が綯交ぜになった気持ちだと思いますが、葬儀の規模感を決める大事な作業ですから、しっかりやりましょう。
また誰が何を担当するかも決めておかなければなりません。
親戚に伝えるのは誰で、友人には誰、地域には誰などの役割分担は必須です。
仕事関連へは誰が連絡するかも大事です。特にリタイヤされた方の場合は、知らせて良いかどうかを家族は悩みます。それを明確に線引きしておくだけでも家族はとても助かるものです。

お清めの予算感の共有

参列者の予想ができたらお清めの予算感も見えてきます。参列者の人数や、お清めやお返しをどのような内容にするかが具体的に決まっていない場合は予想外の出費になることも覚悟する必要があります。
私の父の葬儀では、ありがたいことに多くの方の参列をいただきました。通夜、告別式とたくさんの方々に見送っていただいたのですが、それ相応の出費もありました。
父の小学校からの友人がお清めの席を取り仕切っていただいたおかげで、予算を抑えることができましたが、そうでなければバタバタしている間にとんでもないことになっていただろうと思います。
事前に自分で用意しておかなければ、それらは全て残された家族の負担になります。
その点も踏まえて家族で話し合いましょう。
「立つ鳥跡を濁しっぱなし」はカッコ悪いですよ。


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