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短編作品『Breath』から『and me.』まで。

皆さんお久しぶりです、Seiya Asanoです!
毎年恒例の生涯ベスト映画100も更新出来ず、noteの存在すら忘れかけておりました。

さて、この期間に短編ではありますが僕の祖父母に関するドキュメンタリーをいくつか制作し、Band à Nerdのチャンネルにて公開しています。

家族関連のことについては、衝動的に撮ったものばかりで偶発的に生まれた作品達と言えます。
ですが、ドグマ95やブレッソン作品などを基準に、表現することについては常に探究しているつもりです。

どれも短い作品ですが、何となく僕自身のスタイルが確立されてきたように思えます。
来るDream a Little Dream of Usでも反映されているでしょう。


その嚆矢となった『Breath』から順番に紹介させて頂きます。

2023年2月11日、祖父は家族に見守られながら静かに静かに息を引き取りました。

暫くは、本当に眠っているようで、またいつものように起きてくるんじゃないかと思うほど穏やかでした。


その祖父が永眠する約10日前に撮影したのが『Breath』です。

誰もが、「人間は必ずいつか亡くなる」と知っています。
目の前で眠る人物に、もう間も無く「その時」が訪れる。そう確信した夜を記録しています。


次作が『after.』です。


その名の通り、祖父が亡くなった「その後」を記録しています。
祖母は祖父との結婚を機に故郷の愛知県及び実家を出ます。

時代も多分に関係するでしょうが、祖母は「冷飯は女が食うもの。温かいご飯は男が食うもの」という価値観の家庭で育っています。

新婚早々、「何を言ってるんだ、冷飯だろうが炊き立てだろうが2人で同じもの食べようよ」と当然のように話す祖父に、当時大変感銘を受けたと言います。

多趣味で多彩な祖母ですが、これまでの人生は何をするにしても、何処へ行くにしても、常に祖父と一緒でした。

梅の花が咲き誇る時分、祖母の様子を見に行った際に撮影したものが今作でした。


これまでは母方の祖父母がテーマでしたが、『silence』は父方の祖母についてのフィルムです。

祖母、浅野洋子は長い長い入院生活を経て、今年の初めに息を引き取りました。
病院からは限定的な機会を除いては面会を禁止されていましたが、終盤は例外的に許可され、出来るだけ僕も足を運びました。

まるで漂白されたような空間と静寂に包まれ、「このフロアには、まるで僕と祖母の2人きりなんじゃないか」と錯覚するような時間を過ごしました。

『Breath』と全くシチュエーションが異なることは一目瞭然でしょう。

在宅介護が、延命措置が、とかそんなことを主張するつもりは一切ありません。只、「残された時間をどのように過ごすか決定する瞬間」は、静かに訪れるということを表したかったのです。

最後は『and me.』で、昨夜公開致しました。

8月8日で88歳になった祖母に向け、米寿のお祝いを兼ねて撮影しました。
YouTubeでコメントを頂きましたが『Breath』、『after』と併せて3部作と言って良いかもしれません。

僕にとって夏らしい空気感とは、茹だるような蒸し暑さではなく、風鈴が囁く涼しいリビングなのです。

内と外の、物理的にも精神的にも「境界線」としての機能が「家」にはあると思うのですが、祖母が最も祖母らしく過ごせる空間を、やはり「内側」に見出します。

本作の編集にあたり、久しぶりに祖父・浅野正夫の声を聞きました。
『Breath』だけご覧になった方は当然知る由もないでしょうが、こういう話し方だったんですよ祖父は。

博識で、リベラルで、偶に頑固で、洒落を忘れない元気なおじいさんでした。作中のスピーチは、祖父母の金婚式(15年前くらいでしょうか)の一幕です。

タイトルは、”Moon River”の歌詞で最後に綴られる箇所から引用しています。

両親にもひた隠すアングラな過去が山程ある偏屈野郎・Seiya Asanoですが、こうやって振り返るとおじいちゃんっ子でありおばあちゃんっ子なのかもしれません。

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