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「心のしなやかさ」を手に入れるトレーニング法

前回の記事では最後に「思考に目を向ける、無意識に近い思考を意識化するための実践法がありますので、それは改めて(予定では次回に)紹介したいと思います」とお伝えしました。予告した通り実践法として「心のしなやかさ」を手に入れるためのトレーニング法をご紹介したいと思います。なお続きとなりますので、まだの方は前回の記事を読んでから今回の記事を読んで頂ければと思います。

ただし、トレーニング法をご紹介する前に「心のしなやかさ」を手に入れるとどのように自分を変えることができるのか、そのイメージを先に持って頂きたいと思います。具体的なストーリーとしては前回の記事を読んで頂ければと思いますが、ここではメタ認知という心理学の言葉について少しお話したいと思います。

メタ認知とは「考えている自分に気づく」「感じている自分に気づく」、つまり自分自身を俯瞰することです。

2-3_メタ認知

ではメタ認知の状態を得られると何が良いのか? ふだん人は無意識にものを考えたり感じたりします。また人は感情が高ぶると冷静な判断をせず行動を選択してしまうことがあります。これまでの記事でお伝えしてきた通り人は危機回避のスペシャリストですので特にネガティブな感情を持つと視野が狭くなりパッと思い浮かんだ行動を選びがちです。そのパッと思い浮かんだ行動は残念ながらその人にとって最良なものとは限りません。

メタ認知の状態を手に入れると感情に振り回されず、パッと思い浮かんだ行動に飛びつかず、いったん選択を保留して、冷静に欲しい未来へ近づくための行動を選ぶことができるようになります。これが私がお伝えしている「心のしなやかさ」です。

2-3_しなやかな心による行動選択

この図の紫の矢印がそれを表したものです。感情に振り回されそうになりつつ、いったん保留して行動を冷静に選んでいることを表現しています。私が考えた図でセミナーなどでよくお見せしていますが「分かりやすい」と多くの方から好評を頂いています。

それではトレーニング法についてご紹介したいと思います。マインドフルネス瞑想にもメタ認知を得る効果があると言われていますが、ここではペンシルベニア大学が開発してアメリカの陸軍にも導入実績にあるレジリエンス・プログラム『ペン・レジリエンシー・プログラム』にあるトレーニングの1つに基づいたものをご紹介します。前回の記事でABCモデルについてお話をしました。そのABCモデルに合わせて日記をつけることが「心のしなやかさ」を手に入れるトレーニングになります。このシートは日本ポジティブ心理学協会の代表理事である宇野カオリ氏の著書『レジリエンス・トレーニング入門』より引用しています。

2-3_ABC日記シート

感情が高ぶった時や、「失敗したなぁ」と後から思うような行動を選んだ時、心が折れそうになった時、そのような出来事があった時にこのシートに日記をつけます。1つの出来事に対して1シート書きます。Aには起きた出来事を、Bにはその時どのようなことが頭に浮かんだか、Cにはその時どのような感情が湧いたか、どのような行動をしたかを書きます。

特にBの思考・自己解釈は忘れやすいので、できれば出来事が起きた直後に記入してください。もし時間がなければ忘れないように簡単なメモを残して、時間ができたらシートに記入すると良いでしょう。なお、ABCをきれいに分けて書ければ一番良いですが、きれいに分けることにこだわりすぎて書けなくなるよりは、とにかくまずは書くことを優先してください。

このようにABC日記を日々書くことによって、思考に目を向ける習慣ができ、無意識に近い思考を意識化できるようになります。その結果、自分の感情や行動に気づけるようになり、よく自分が考えることや、自分が選択しやすい行動、つまり自分の思考や行動のパターンも見えてきて、先ほどの矢印の図で表した「心のしなやかさ」を得ることができます。私はこのABC日記を1ヵ月で20個以上書くことを目指して、実際23個書きました。こちらにスクー授業でも具体例として紹介した私のABC日記の1つを掲載します。皆さんが記入するときの参考にしてください。

2-3_ABC日記(菅原の1例)

ABC日記を書く注意点としては、特にネガティブな出来事を日々書いていると気持ちが落ち込んだり、「自分はなんて小さい奴なんだろう・・・」と自己肯定感が低くなることがあります。あくまで自分を知るため、メタ認知の感覚を得るためのトレーニングだと考えて頂ければと思います。それでも気持ちが落ち込む場合は気持ちが回復するまでABC日記を中断した方が良いでしょう。もし可能であれば会社の同僚や友達、夫婦など、他の人と一緒に行うと気持ちの落ち込みを防ぐことにつながると思います。

日記を書き続けることが大きな負担に感じられるかもしれません。実はこのトレーニングは子供の自転車トレーニングと似ています。自転車トレーニングは最初大変ですが、乗れるようになるとそのあとしばらく乗らなくても問題なく乗れますよね。それに似ていて、一度メタ認知の感覚を得られると、その後はABC日記を続けなくても感覚を失わないままでいられるという人が多いです。私もそうですし、同じように取り組んだ他の方も言っています。まずは1ヵ月で20個以上を目指してABC日記をつけてみてはいかがでしょうか? ぜひトレーニングに取り組んで「心のしなやかさ」を手に入れて頂きたいと思います。

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