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超ハイクオリティな文化祭はどのように創られるのかー国立高校に聞いてみた

「めっちゃクオリティー高い文化祭をやっている学校がある!!」。そんな言葉を聞いて以来、私(阿部)がずっと気になっていた学校がある。その名も国立(くにたち)高校。東京都国立市にある都立の進学校です。その文化祭の裏側を、2022年度卒業生に語ってもらいました!


2022年度卒業生が語る
これぞわれらが国高祭!!
この記事を書いた人: 国立高校2022年度卒業生

 都立国立高校(以下、“国高“とする)の全生徒が青春をかけてつくりあげる「国高祭」。コロナ禍以前は来場者数1万人以上を誇り、「日本一の文化祭」とも称されてきた。厳密にいえば、文化祭・体育祭・後夜祭を総じて国高祭というが、ここでは、最も特徴的な文化祭について取り上げていこう。

文化祭までの一年

文化祭までの一年
文化祭は運営の殆どを生徒主体で進め、1,2年生はミニゲームやお化け屋敷といった展示を、3年生は演劇を行うというのが慣習になっている。なんと国高では三年間クラス替えがない!ので、文化祭の準備は前年度から始まるのだ。その年の文化祭が終わって一段落すると、来年に向けてすぐ、役職決めや展示内容の案出しが行われる。そこから夏休みまで、外装のデザインや展示の内容をクラスで話し合っていく。

外装とは


文化祭期間中、普段は灰色のロッカーに覆われた教室外の壁が、代わりに華やかな装飾で彩られる。これが「外装」だ。光る・動くは当たり前。水の流れるギミックや、床に反射させることを考慮したデザインなど、新しい工夫が年々生み出されていく。入り口の確保、廊下のスペースの確保、コンセントからの配線などに気を遣いながら、どれほど完成度の高い外装を作れるかというアイデア勝負を楽しめる。全クラスの外装を見て回るだけでも、十分に国高祭は楽しい!

内装とは


 教室の中を、各クラスの展示に合うよう通路などを作りながら装飾していく。これが「内装」である。実際にゲストが楽しむ場になることから、安全性はもちろん、世界観を壊さないよう配慮することが必要だ。裏方の仕事ができるよう、係の人たちのスペースもうまく確保せねばならない。三年演劇でいう内装は、つまりは舞台小屋。演者の実際に上がる舞台づくりも、リアリティと実用性の二面を追求するのがまた、とても奥深い。

文化祭の華、三年演劇


最高学年が最後の夏を捧げる三年演劇は、それまでの準備とは一味違う。演劇をたくさん観てその中から選ぶ、照明や音響・演出を考える、演者の稽古をする…。1,2年の時に比べやるべきことが驚くほど増える。
 三年演劇は、文化祭期間に1日あたり4公演行うのだが、例年はその人気の高さあまり、観劇できるゲストを抽選によって決める。2020年の第73回国高祭では、文化祭は中止となり、一部クラスが動画で配信できる程度だった。続く第74回では内部開催。筆者が3年生であった第75回では、生徒保護者と、予約した中学生のみ観劇することができた。今年こそは、一般公開ができるといいなぁ。


舞台の中には
「少年ジャンプ」!?


 1段分高くなっている舞台。その床の中には、なんと大量の「少年ジャンプ」が!木材の骨組みだけでは床がベコベコしてしまうので、このように少年ジャンプをぎっちり詰めているのだ。

展示制作の流れ


計測
 設計の前に、教室や廊下の大きさを計測する必要がある。学校の教室を想像してみてほしい。壁と床の境目に、小さな縁があったりしないだろうか。こういった細かい計測を見落とすと、後々「数ミリ分だけ部品が嵌まらない!」なんてことになりかねない。それほどに精密な作業をしていくのだから、教室のちょっとした歪みまで、複数人でしっかり確認したい。

設計
 これが本当に大変な工程である。骨組みなどを決めて、作業が進められるよう設計をしていくわけだが、材料は何にするか、物理的に安定するか、作るときに特別な技術を必要としないか…と、考えるのがとても難しい。実際に試してみないとわからないことも多く、トライ&エラーを繰り返しながら設計図を描いていく。
 ごくまれに紙媒体で設計図を描くクラスもあるが、大抵は“SketchUp”というツールを用いて、オンライン上で設計を行う。これがもう、さながらプロのよう。


作業
・ 罫書き(けがき)
 寸法を取って、切断用の印をつける。国高生は皆、さしがね(金属製の直角定規)と仲良くなる。

・切断
 材料を切る。木材はもちろん、アクリル板や塩ビパイプを切ることも。使う道具も様々で、のこぎり、電のこ、カッターなど。

・やすり掛け
 木材のささくれを取ったり、綺麗に直角になるようにやすりで削る。なかなか根気のいる作業で、ずっとゴリゴリやっていると筋肉痛は免れない。

・塗装・美術関連
 ペンキや絵の具を使って材料を塗装したり絵を描いたりする。出したい質感によっては、墨汁にボンドを混ぜたものが役に立つなんてことも。

・組み立て
 ねじで角材同士を繋げる、釘でベニヤ板を留めるなどする。木材は湿気で長さが変わることもあるので、何とか適材を探したり新しく切断したりして、うまく組み立てていく。

・照明・遮光
 外装を灯らせ、舞台照明をつける。その光を際立たせるため、窓から入る自然光は逆に遮光する。段ボール・アルミホイル・暗幕などを用いて、本当に真っ暗になるまで窓を覆い隠す。

・完成
 最後に、実際にモーターを回したり細かいところを補修したりして、完成となる。クラスによっては、当日ギリギリまで作業して間に合わせるなんてことも。

・解体
 最も悲しい工程である。文化祭が終わってすぐ、解体日が設けられており、ひと夏かけて作り上げたものをその一日で解体する。まだ使える木材やねじは来年以降に再利用するため、意外に丁寧に行わなければならない。

文化祭にまつわるクラスの役職

  1. 展示チーフ
    各クラスの代表!クラスをまとめるのはもちろん、他クラスとの連絡も行う。

  2. 外装チーフ
    外装制作の中心となる。日頃から頭の中は外装のデザインや設計のことでいっぱい。

  3. 内装チーフ
    内装制作の中心となる。ただの学校の教室を、全く別世界へと変身させる。

  4. 設計チーフ
    外装や内装の、設計の中心となる。様々なデザインを具現化できるのはこの方のおかげ。

  5. 監督
    三年演劇の代表。一年を通して劇に向き合い、最後の舞台を輝かせる。

  6. 他にも、
    ・広報チーフ
    ・デザインチーフ
    ・木材チーフ
    ・演出チーフ
    ・劇選チーフ
     などなど…

運営組織

  1. 国高祭実行委員会
    国高祭全体の統括、合同委員会運営など

  2. 文化祭実行委員会
    文化祭での見回り、木材や工具の管理など

  3. 体育祭実行委員会
    体育祭での審判、用具管理など

  4. 後夜祭実行委員会
    後夜祭での表彰、舞台絵の作成など
    これら4つの委員会を合わせて「四実」と呼んだりもする。

他に…
・ 庶務委員会…暗幕の管理、受付業務など
・ 整美委員会…ごみの分別指導、美化活動など
・ 広報委員会…ポスターや垂れ幕など広報物の管理
・ プログラム委員会…ゲストに配布するプログラムの制作
・ キャンバス委員会…体育祭時に掛けるキャンバスの制作
・ 装飾門委員会…国高祭の装飾門の制作
・ 抽選管理委員会…三年演劇抽選システムの管理・運営
・ 会計委員会…折衝や予算の決定、決算など

装飾門(装飾門委員会)
キャンバス(キャンバス委員会)
垂れ幕(広報委員会)

生徒会は、文化祭運営に大きく携わるわけではないが、ねぶたを制作する・フォトコンテスト企画を行うなど、各年独自に文化祭に参加している。

アマビエのねぶた(2020年度 生徒会執行)
金魚のねぶた(2021年度 生徒会執行)
フォトコンテスト企画(2023生徒会執行)

終わりに


 私は3年間を通して国高の文化祭を経験してきたが、そのすべてが新型コロナウイルスの影響を余儀なく受けたものだった。様々な方の尽力によってなんとか開催にありつけたことに、まずは感謝の意を表したい。しかし一方で、なんの制限も受けることのない、フルパワーの国高祭をこの肌で感じたかった、という本音もある。ここまで国高祭で体験してきたことを書いてきたが、いざ観客が入った時、また新たな魅力を生み出してくれるかもしれない。そんな期待を抱きつつ、今年こそは制限のない国高祭が開催できるよう、心から祈っている。

筆者:渡辺元樹(2022年度国立高校卒業生)
文責:阿部亮太(生徒会活動振興会 代表)


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