たぶん俺のせいで整体店が潰れた話~スピード倒産撤退編
第1章 まともな人が一人もいない戦場
整体には「治療院」と「リラクゼーション」があるが、関係者全員、登場人物が全員おかしい業態である。まともな人が一人もいない廃業・倒産へのカウントダウン。それが、整体院経営だ。それがわかれば整体スクールで学ぶことはもうない、卒業になる。
時代は「りらくる」の登場で幕をあける整体2980円全盛期、俺はある求人を見ていた。「2号店オープンのため、スタッフ募集!」2号店というのは、整体師にとって鬼門である。しょぼいモミモミ店を開業して、すこし上手くいくと、すぐ調子にのって出す店が2号店だからだ。「2号店」は潰れるというフラグである。
整体と言う職業ですらない虚業の広告やネット情報は、嘘で塗り固められているので、基本、情報は足で稼ぐ。その出店予定という商業施設をぐるりとしてみたが、およそ店が出せそうな場所は見つからなかった。不信感というか確信。ビンゴ。
これはとびきりの地雷案件だと嬉々とした俺は、すぐに面接希望の電話をした。指定され、朝一で1号店にいくと、風采の上がらない絶対に仕事ができなそうな(申し訳ない)人がよさそうなオーナーらしき人が出てきた。俺は8割がた店がパンクする姿が想像できた。
★★★
それから俺の話は一瞬で終わり、あとはずっと、彼の計画するこれからの展望、無計画としかいいようのない予定、どんぶり勘定とはこういうことを言う見本的な、2号店の予想というか妄想の収益、まあ散々そんな夢物語を聞かされたわけだ。
彼はこれぐらいの収入にはなるだろう(業務委託)と、電卓をたたいたが、俺はもうやさしい笑顔で見守っているだけだった。ウシジマ君や、ナニワ金融道に出てくる商売が焦げ付く人たちの匂いを、体いっぱい感じていた。整体には有名な格言がある「同僚と共同で店を出すな」だ。
帰って妻に、こういう感じだったと面接結果を伝えたら『そこにいくなら離婚する』と半分記入済みの緑の紙をまだ出してきたので、俺はその日の夕方に「すみません、急にロスでレコーディングすることになってしばらく日本に帰ってこれません」とメールして辞した。
さて物語はここからだ。その商業施設の2号店だが、たまたま、買い物売り場でも絶対人がいかないだろう場所に、矢印があるのを見つけ、曲がり、また矢印を見つけ、曲がり、それを4回ぐらいしたところに、トイレがあって、その脇の、デッド過ぎるパーテーションでくぎられた、チーズケーキのような三角形な場所に、施術ベッドが一台おいてあった。嘘だろ……。
第2章 店はガチャガチャコーナーになって
俺の背中に氷汗が流れた。もしかしたら俺は入店したら、ここでやってたのか?見切り発車も甚だしいというか、ここでどうやって商売できると思えるのか?逆に小一時間問い詰めたかった。
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