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【選評】第9回青春短歌甲子園『2021年度クラス分け歌会』

募集期間 2021年2月16日~2021年3月15日
応募総数 79人234首

1位 尾渡はち おわたりはち

花束に困った君にまっしろな花瓶を渡す役になれるよ

花束に困るのは、ピアノの発表会や定年退職ではない、想定外の出来事が起こったからだ。君の栄光を信じ、その日まで支え続ける。未来への確信に満ちたこの歌は、新年度第1回の首席にふさわしい。

2位 春原シオン はるはらしおん

青いものばかりを盗む癖があり殺されるまでたぶんやめない

歌の構造は「抽象」+「抽象」の雰囲気短歌に似ているが、そうとは言わせない凄味がある。平凡な短歌が出来事を、上等な短歌が感じ方を描くとしたら、特等の短歌は生き方を描き出す。小学5年生にもなれば高学年の自覚を持てと言われ、属性が変わるたびに新しい自覚を求められる僕らだけど、根っこの部分は変わらなくていい。
シオンさんには『Born to Be Blue(邦題:ブルーに生まれついて)』という映画をおすすめします。

3位 谷口泰星 たにぐちたいせい

才能が始まらなくていいように触れないままでいるバイオリン

青春短歌は、厳密には青春前(思春期)と青春中を扱う短歌のジャンルだ。青春後、つまり青春を振り返る追憶短歌は含まないことにご注意願いたい。青春のどのステージにいるのかは、未知なるものへの態度で示される。「できるわけない」未知なるものへの不能感は青春後。「できてしまうだろう」未知なるものへの万能感は青春前(思春期)。この歌は、思春期の万能感を見事に表現している。できるはずができなくて自信喪失、傷まみれで立ち上がるのが青春中だ。

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