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「聞いたことがない学校」に、子どもが行きたがっています。最近の中学受験はどうなっているのでしょうか?『中学受験 親のお悩み相談室』(#5)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:自分も過去に中学受験をしました。ただ、自分の子どもが行きたいと言っている学校は「聞いたことがない学校」で…。最近の中学受験はどうなっているのでしょうか?

回答:時代の変化に合わせて人気校も大きく様変わりしています。国際系、探究系の学びが得られる学校、STEM教育をしている学校が人気です。


20年前にはなかったような学校が、人気を集めている

最近は、親御さん自身が中学受験経験者という方、増えてきましたね。多分皆さんが受験をされたのは、今から20年以上前だと思います。

その頃は、首都圏の中学受験者数は年々増えていた時期で、4科目入試が主流になりつつあったので、中学受験をする方もきっと塾で相当勉強をされて受験されたのではないでしょうか?

また、この頃は多くの方が大手塾の模試の偏差値表を見ながら、受験校を決めていたはずです。

今の偏差値表を見ると、おっしゃる通り、当時にはなかった学校が偏差値表の上位にきていたり、反対に当時は高偏差値だった学校が下がっていたり、昔に比べるとずいぶん様変わりしています。

御三家と呼ばれる学校の偏差値は当時とほとんど変わらないのですが、それ以外では、親御さんが受験される頃にはなかった学校が上位にランクインしていると思います。

たとえば、広尾学園、三田国際学園中学校などは、今や人気の難関校ですが、皆さんが受験する頃には存在していなかったはず。

広尾学園は順心女子学園、三田国際学園中学校は戸板中学とそれぞれ伝統女子校が、共学化して校名を変更。全く新しい学校として生まれ変わったからです。

同様に、渋谷教育学園渋谷中学校も、渋谷女子中学校・高等学校 が改組され1996年に開校した学校です。皆さんが受験をされた頃にはあったかもしれませんが、まだそんなに偏差値も高くなかったと思います。でも今では御三家に並ぶほど難化していますよね。

このように全く違う学校として生まれ変わった学校以外でも、偏差値表を見るとその変化が見て取れます。偏差値というのは、ある意味人気動向によって変化するので、そのときにどんな学校が人を集めているのかという視点から見るとおもしろいですよ。

大学進学実績は、そこまで重要でなくなった!?

以前は、東大合格者が出ると翌年の偏差値が上がるというように、大学進学実績が学校の人気にダイレクトに影響していましたが、最近はそんなこともなくなりました。

大学付属校も人気がありますが、これは大学入試が変わろうとしている中、その影響を受けずに進路を確保できる点や、大学受験のための勉強にとらわれずのびのびと学校生活が送れる点に魅力を感じる人が多いということでしょう。

最近のトレンドは、留学制度があったり、海外大学進学が可能だったりする国際系の学校や、アクティブラーニングやプロジェクト型の授業など探究系の教育に力を入れている学校、STEM教育など理数系に強い学校です。

これは、教育の中身を見極めようという方が増えているからでしょう。

自分が受験をした経験があると、どうしてもそのときの感覚や価値観で学校を見てしまいがちですが、聞いたこともない学校や、昔はそんなに難しくなかった学校が、人気になっているには、それなりの理由があります。

中高の6年間は、単に大学進学の準備をするためにあるのではなく、社会に出ていくための土台を作る大事な時期です。

時代の変化も激しく、社会で求められる力も変化し、教育も大きく変わっていこうとしている中、それぞれの学校が何を大事にしているのかを見極めることが大切です。

思い込みを外して、フラットな目で学校研究をされた方がいいですよ。

ちなみに、以下の表は2023年に受験をした人たちが模擬試験で志望校としてあげたリストの中の志望者数上位校です。

聞いたことがない学校もあるかもしれませんが、こういうリストを参考になさって、余裕のあるときに学校研究をしてみてください。

出典:首都圏模試センター

中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。