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何度注意しても、ケアレスミスがなくなりません。どうしたら?『中学受験 親のお悩み相談室』(#8)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:何度注意しても、ケアレスミスがなくなりません。注意するとふてくされるばかりで……。どうしたらいいでしょう?

回答:ふてくされるのは、自然なこと。子どもが素直に話を聞けるようなコミュニケーションを意識してみましょう。その上で、ミスの原因を見極め、具体的な対策を考えられるとよいですね。


やみくもな注意よりも、原因をなくすための具体的な注意を

何度注意しても、ケアレスミスがなくならないんですね。そして、そのことに関して話せば話すほど、子どもがふてくされてしまう……。これは、悪循環ですねぇ。

ある塾の先生によると、ケアレスミスは「受験のお悩み相談のトップ10」に入るそうです。そのくらい多いのですから、まずは「ケアレスミスするのは、うちの子だけじゃない」と思って、心を落ち着けましょう(笑)。

とはいえ、ケアレスミスは、知識や能力の不足ではなく、注意していれば防げたはずの誤りですから、それがなくなれば、成績が上がる可能性も高いし、なんとかしたいですよね。

何度注意してもなくならないということですが、どんな注意をしているのでしょうか? ミスをなくすためには、ミスの傾向を知り、それを防ぐ対策を立てる必要があります。

例えば、計算ミスが多いとして、その原因がどこにあるのかわかっていますか? そして、何をすればミスを防げるのか、具体的に子どもに伝えていますか? 

先ほど出した「算数での計算ミスが多い」という場合で、考えてみましょう。原因はいくつか考えられますね。

◎字が汚い

ケアレスミスをする子は、計算をテスト用紙の狭い余白の部分にぐちゃぐちゃに書いているケースが結構多いみたいです。そうすると数字の写し間違いをしていたり、桁が揃っていなくて計算を間違えたりしがちですね。

この状態に陥っているときは、解答用紙を見ればわかりますから、もしそういう傾向があるなら、計算をするときに必ず余白の広い場所を使ってていねいに計算式を書くように話しましょう。また、普段の学習時のノートでも、広いスペースをとって計算するクセをつけられるといいですね。

◎基本的な計算力が身についていない

四則計算・繰り上がり・繰り下りなど、基本的な計算力が身についていないということも考えられます。計算力を上げるのには時間が必要なので、地道に計算力を上げる演習をすることが必要でしょう。

◎読み間違い

問題文を最後まできちんと読まないために、問題を読み間違いしていることも考えられます。もしそうなら、お家では時間をかけて、問題文を音読するとか、線を引きながら問題を読む練習をするなどの方法も考えられますね。

いかがでしょうか。いずれにしても、ミスをやみくもに叱るのではなく、なぜ間違ったのかを検証し、その間違いは本当にケアレスミスによるものなのかも含めて見極め、その上で具体的な対策を考えることが大切です。

ポジティブアプローチが対応のカギ

ミスの検証・対策を親子で行う場合、大切なのはコミュニケーションの取り方です。あなたも「自分が間違った」とわかっていても、そこを真正面から指摘されたことで、余計やる気がなくなったという経験はありませんか?

子どもだって同じです。むしろ、身近な親から言われたら、素直になれず、反発したくなるでしょう。

そもそも、親が勉強を見るのは、かなり大変なこと。そのため、私は親が口をだすより、塾に通っているなら、信頼できる塾の先生に相談して対策を考えてもらい、先生から伝えてもらったほうがよいと思います。

ただ、そうは言っても家庭では親が勉強を見なくてはなりません。そこで、お子さんが話を聞く耳を持てるような声かけのコツを1つお教えます。

それは、間違いを指摘するのではなく、まずはお子さんができているところや、頑張っているところを見つけて、そこを具体的に褒めること。

例えば、1問でもミスなく解けている問題があるなら、先にそこを認め、「この問題は間違わずに解けたね」と褒めてあげる。これをポジティブアプローチと言います。

人は、できていないところより、できているところを認めてもらった方が伸びます。

その上で、先に書いたように、どこで間違ったのか原因を探して、次に間違えないために何ができるかを具体的に考えてみるのです。

そのときに「こっちの問題はどこで間違えたんだろうね。次に○をもらうためにはどうしたらいいかな」とお子さんが前向きに考えられるような声かけをしてみましょう。

つまり、失敗やミスをダメ出しするのではなく、それらを「進化ポイント」にするのです。

ミスは失敗ではなく進化ポイントと捉えて、さらに良くなるための対策を考える。言葉一つで印象はだいぶ違いませんか。

こんな積み重ねが、お子さんとの関係を良くし、信頼関係をつくります。そして、これらはケアレスミスも無くす上でも、遠回りのようで確実な方法です。

ポイントは2つ。ケアレスミスの原因を見極めて対策を考える。親子関係をよくするコミュニケーションをとる。

いかがですか? できることからやってみましょう。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。