見出し画像

初めての中学受験です。中学受験をするにあたって、一番大事なことはなんでしょうか?『中学受験 親のお悩み相談室』(#16)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:子どもが「中学受験したい!」と言い始めました。中学受験は親の受験といわれたりもしますが、受験するにあたって、心がけるべきこと・大事にすべきことはなんでしょうか?

回答:中学受験において最も大事なのは「親子関係」。良い親子関係が、良い結果をもたらすことを覚えていてくださいね。

模試の会場で出会ったAさんのエピソード

中学受験を選択したのですね。中学受験をするにあたって一番大事なこと…それは親子の関係です。なぜなら、親子関係が悪くていい受験になったという人はいないからです。

バトルを繰り返し、受験をやめようと思ったところから、立ち直り、第一志望校に特待で合格されたAさんという人のお話をしましょう。

私は、中学受験模試の会場で、開催者側から依頼を受け、たまに講演会をしています。その講演会で出会ったAさんは、ショートカットが似合う控えめな印象のママで、その日は確か白いセーターを着ていました。

講演が終わった後、私のもとまでやってきてこう言うのです。

「先生のお話を聞いて、私はやってはいけないことを全部やっていると思いました」と。

聞けば5年生のお嬢さんは、自分から受験をすると言いだし始めたものの、なかなか勉強に身が入らず、その様子を見ているとイライラがつのって怒ってしまい、バトルになってしまうのだとか。

親からしたら、「受験したいなら勉強するのは当たり前でしょう」と一喝したくなるのは当然ですが、そう言えば言うほど、子どもはやる気をなくします。

でも、効果はないとわかっていても感情を抑えられず、挙げ句の果てに「勉強したくないなら受験なんて辞めなさい」などと捨て台詞を吐いてしまうことはよくあります。

「受験という目標に向かってまっしぐらに頑張っている子どもなんてそうそういません。だから、追い詰めないで、まず勉強はそんなにやりたくないけれど今日は模試を受けにきて何時間か頑張ったのだから、まずそのことを労ってあげて」

そのときには、そんなお話をしたと思います。

良い親子関係の先に、良い結果がある

中学受験って、多くは小学3年生の終わりから塾に行き始め、3年間かけて準備をします(もちろん3年間かけないと受験できないということはありませんが、塾のカリキュラムがそうなっているので、まぁそれがスタンダードになっています)。

何年にも渡って取り組むロングランなので、当然その行程は山あり谷あり。

子どもが勉強しないとか、成績が伸びないとか、いろいろなことが起こります。その度に、親はどう対応すべきか悩むわけです。

後日Aさんは私が主催する子育て実践講座に参加され、子どもとの関わり方を学ばれ、徐々にお子さんへの働きかけ方を変えた結果、親子関係は改善し、最後は娘さんにぴったりの学校を見つけて、見事特待で合格されました。

「勉強しない!」「反抗的な態度ばかりとる!」

そんな娘さんのできていないところばかりが気になっていたAさんが変わったのは、娘さんの気持ちを理解しようと意識したことからでした。

勉強したくないという言葉の裏にある気持ちを理解しようと意識したら、何でつまずいているのかが見えてきて、励ましの言葉をかけることができるようになったのです。

そんなことを続けていくうちに、バトルの回数が減っていき、やがて娘さんとどんな受験にしていくのかを話し合うことができるようになりました。

娘さんも、徐々に自分ごととして受験に向き合うようになり、最後は行きたい学校を見つけて最高の結果を出すことができたのです。

受験が終わった後、Aさんの娘さんは、「お母さんが私の気持ちを聞いてくれるようになって嬉しかった」と言ったそうです。誰でも、ダメ出したばかりされたら、やる気は出ませんからね。

良い親子関係は良い結果をもたらします。まずは、そのことを覚えておいてください。

これ以外にも、親子関係を良くする関わり方のコツはいくつかあるのですが、それはまたお伝えしますね。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。