人生の岐路に立ったとき「その人らしい働き方・生き方」を選び取るための指針は、心理学から得られる。『キャリア形成に活かす心理学』おわりに 公開
働き方改革が推進され、終身雇用制度も揺らぐなか、キャリアは自ら選択することが求められている。しかし、激しい環境変化と不確実な状況下で意思決定をし、自身のキャリアを形成することは至難の業でもある。このとき、考える基盤となるのが心理学理論である。本書は、人生をキャリアと捉え、学生や社会人が人生の岐路に立ったとき、自らの進む道を選び取るための指針を学べるものとなっている。大学でのキャリア教育テキストはもちろん、キャリアコンサルタントの参考書としても使える。
▷書籍詳細
──おわりに ──
本書は,「キャリア」と「心理学」のつながりについて,心理学に関わり
や関心を持つ人向けに,わかりやすくお伝えするという趣旨で書かれたもの
です。ここまで読み進み,皆さんには「キャリア」と「心理学」とが深く関
連していることを,理解していただけたことと思います。
今の時代,自分自身のキャリアは,自らが責任を持って選択していくこと
が求められます。誰もがキャリアについて考え,目標を描き,日々の生活の
中で意思決定を行っていかなければなりません。その意味において,心理学
について学んだ人は,この点では少し有利で恵まれた立場にあると言えるで
しょう。学問にはさまざまな領域がありますが,心理学ほど人の行動や考え
方・生き方,他者との関わり,コミュニケーション,自己理解など,キャリ
アと密接に関わるテーマを科学的な根拠を持って取り扱うものはないからで
す。
それゆえ,「心理学を学んだ人が持つ人間の見方や物事の捉え方は,柔ら
かくてしなやかである」と言われることがあるのでしょう。価値観が多様化
した現在の社会では,何が正しいのかについて明確な答えを誰もが持ちにく
く,また,激しい環境変化のなか,将来を見通すことも難しくなっています。
このように不確実な状況を生きていく必要がある今だからこそ,心理学が私
たちに提供してくれる客観的で偏りのないものの見方が,大きな支えになる
のです。
キャリアについても,「これが正解」というものはありません。自分自身
で責任を持って考え,意思決定していかなければなりません。ただし,何の
拠り所もなく考えるのと,考え方のフレームを有しているのとでは,大きな
違いがあります。心理学を学ぶことによって身につけた知見や考え方を武器
としつつ,自分のキャリアに向き合うことができるのはとてもありがたいこ
おわりにとです。
本書により,キャリアと心理学のつながりに気づき,心理学をキャリア形
成に活かしたいという気持ちが生じたとすれば,大変嬉しいことです。皆さ
んがキャリアを考える際の「羅針盤」「方位磁針」として心理学が役立つこ
とを願い,本書の結びとさせていただきます。
内藤 淳
■監修者紹介
■著者紹介
●書籍目次
刊行にあたって──小口孝司
第Ⅰ部 キャリアと心理学
第1章 キャリアとは何か
1.「キャリア」という言葉が持つ2つの意味
2.「キャリア」の定義
3.キャリアという言葉が広く使われるようになった背景:高まる「キャリア」の重要性
4.「キャリア」の特徴
第2章 心理学をキャリア形成に活かす:心理学はどのようにキャリアに活きるのか
1.キャリア観と将来展望の形成
2.自己理解と適性の把握
3.他者理解と人間関係の構築
4.モチベーションとストレスの管理
5.科学的で客観的なものの見方と統計的手法の理解
第Ⅰ部のまとめ
第Ⅱ部 キャリアに関する理論
第3章 キャリアに関するさまざまな理論
1.キャリアに関する理論の分類
2.特性‐因子論的なアプローチ(パーソンズ,ホランド):「What」に関する理論
3.発達論的なアプローチ(エリクソン,スーパー):「When」に関する理論
4.意思決定論的なアプローチ(ジェラット,クランボルツ):「How」に関する理論
5.統合的なアプローチ(サビカス,ホール):「Why」に関する理論
第Ⅱ部のまとめ
第Ⅲ部 キャリアにおける発達の課題
第4章 ライフサイクルと発達課題
1.ライフサイクルとは
2.成人への転換期である青年期について:自己の探求とアイデンティティの確立
3.中年期への転換期について:心身の変化の認識に伴う半生の問い直しとアイデンティティの再確立
4.老年期への転換期について:自己内外の変化の認識に伴う人生の見直しとアイデンティティの再確立
第5章 自立と成熟した人格
1.自立とは何か
2.成熟した人格について
第Ⅲ部のまとめ
第Ⅳ部 初期キャリアを考えるための前提の理解
第6章 自己理解
1.初期キャリア形成の出発点となる自己理解
2.適性とは何か
3.適性の3つの側面
4.適性把握のためのさまざまなツール
第7章 仕事と組織の理解
1.心理学の生かし方による仕事の区分
2.一般的な仕事/職種の区分
3.企業/組織の区分
第8章 自己と仕事・組織のマッチング
1.自己と仕事・組織のマッチングの考え方
2.日本企業における雇用と人材育成の特徴
3.初期キャリアを考えるうえで大切な2つの視点
第Ⅳ部のまとめ
第Ⅴ部 働くうえで求められる能力
第9章 企業人能力を構成する要素
1.成果と能力構造を表す氷山モデル
2.一般知的能力(General Mental Ability)
3.KSA(Knowledge,Skills,Abilities)
4.コンピテンシー
第10章 初期キャリアで必要とされる職業能力
1.さまざまな機関による分類の枠組み
2.初期キャリアで必要とされる職業能力
3.4つの領域ごとの能力開発のポイント
第11章 ワーク・モチベーション
1.ワーク・モチベーションの重要性
2.モチベーションに関する理論
第Ⅴ部のまとめ
第Ⅵ部 持続的なキャリア形成に向けて
第12章 職業性ストレスとメンタルヘルス
1.高まるメンタルヘルスの重要性
2.ストレスとその特徴
3.職業席ストレスに関する理論
4.ストレス・マネジメントに向けて
第13章 ワーク・ライフ・バランス
1.「ワーク」と「ライフ」という視点:キャリアとのつながり
2.「ワーク・ライフ・バランス」とは何か
3.「ワーク・ライフ・バランス」という考え方が登場した経緯
4.「ワーク・ライフ・バランス」の実現に向けた企業の取り組み
5.「ワーク・ライフ・バランス」を実践していくうえでのポイント
第Ⅵ部のまとめ
おわりに
▷本書の詳細はこちら
出版年月日 2024/04/05
書店発売日 2024/04/10
ISBN 9784414300277
判型 A5
ページ数 198ページ
定価2,420円(税込)
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