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養生やまと歌 - 江戸の養生書を読む 03

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和歌形式の養生書、食物本草書、経穴書から、養生のキホンが学べる100首を厳選し、イラストを付けてご紹介していきます。
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#健康

煩心からえずき吐き涎沫うなじ引つり頭痛強間 - 養生やまと歌 018

強間は後頚部の緊張をとりたいときに使ってみましょう。首の後ろの筋肉を上から下まで揉んでいかなくても、効率よく全体を緩ませてくれます。歌の中にある、煩心(むねいきれ)とは胸部の不快感のことになります。 このツボは押しすぎると逆に気持ち悪くなることがあるので、数秒圧迫するのを5回程度にしましょう。ほとんどの場合、ツボ押しは即効性を求めてグイグイいくと、やりすぎになります。刺激後、数十分かけてじわじわ効いてくるので、足りないと思うくらいがちょうどよいです。 ******* 養

にらはよく五蔵安んじ腰膝を常に温め気を下す也 - 養生やまと歌 017

ニラも補益食材として優秀なので、食卓のレギュラーメンバーにしてみてはいががでしょうか。江戸時代の本草書『本朝食鑑』には「野菜の中で最も人によいものである。」と記載されています。 また、同書には飲食物が嚥下できずに吐き出してしまう人の治療食として、卵白とニラの味噌じたて粥のレシピが紹介されていました。お腹がちょっと弱っている時にも良さそうですね。 参考:人見必大『本朝食鑑』巻三、菜部(国立国会図書館所蔵、意訳は筆者による) ******* 養生やまと歌とは 和歌形式の養

食後には百足はこぶ道ぞかしそのままふせば積聚おこらん - 養生やまと歌 016

食後の軽い散歩は養生の基本で、夕食後の散歩をすれば、「百病無し」になるとも言われています※。逆にジョギングなど激しい運動は、消化不良などを起こし逆効果になるので、体を動かすなら軽めにしましょう。 また、この歌の中にある積聚とは、主に腹部に発生する滞りのことで、様々な症状の原因になると考えられています。 __ ※『医心方』巻二十九に引用される『養生要集』に「暮食畢、歩行五里乃臥、便無百病。」とある。 ******* 養生やまと歌とは 和歌形式の養生書、食物本草書、経穴書

たけの子は痰を化す也水を利す虚冷の人に用べからず - 養生やまと歌 005

今年の春はタケノコ食べましたか? もう旬も終わりになりますが、タケノコには「利水」という、体の水分バランスを調節する働きがあるとされています。 東洋医学では人の体を流体としてとらえ、気・血・水の3つがめぐっていると考えています。このバランスが乱れると、身体にさまざまな不調が現れます。「水」に関わる身近な症状ですと、「むくみ」がそれにあたります。また、口の強い渇きも、水の不調和によることがあります。 こういった水のトラブル時に、タケノコのような「利水」の食材が役に立つわけで

名将は戦わずしてかつ軍良医はいまだ病まざるを治す - 養生やまと歌 004

健康的に生きるには、養生が何よりも大事です。理想は「戦わずして勝つ」ですね。ただ、病気は体質や運に左右されるところもあるので、完全回避はまず無理でしょう。 現実的には、病になっても軽くすませる、倒れてもまたすぐ起き上がれる体を作る。これこそが養生の役割になります。 東洋医学は予防を大変重視しており、この「未だ病まざるを治す」は、『素問』という大昔の鍼灸学書に記載されています。そこでは、病気になってから治療することを、「喉が乾いてから井戸を掘り始めるようなもの」とも喩えられ