見出し画像

それでも人とつながって 003 障害2

『答えられない問い』


「ここは何ですか?」名刺を出して挨拶をして次の言葉がこれ。障害者と呼ばれる方について自分は何も分からない。それでも街の至る所。見れば障害者の関係する施設や機関であることくらいは分かる場所や建物はたくさんあった。とある相談から覚悟を決めて『なんとかします』と言った以上はどんなに恥をかいても構わない。言葉の通りなんとかするだけ。その為には。

大抵の人は驚いたような呆れたような顔をしていた。中には笑い出す人も居て、そんな時は一緒に笑った。行く先で応対されたのがたまたまそこの所長さん等で「君は面白いからウチで働かないか?」と法人の役員さんに紹介されることもあった。何も分かってないのに。でもそんなふうにして貰えるなんてちょっと嬉しかった。

歩けば歩いただけ出会いがあった。決意のせいかあまり嫌な思いもしなかった。そんな中である紹介があった。少し遠方になるが私と同種の職種で、障害者の活動を支援している方が居る。早速連絡すると快く参加兼見学を受け入れてくれた。

元は別の所で行っていた青年学級という集まりだったらしい。そこから派生して本人主体の集まりを目指して活動しているとのことだった。本日の参加は当事者18名。ボランティア1名。担当の方は「じゃあ頑張れよ」と言って笑いながら立ち去ってしまった。他に仕事があるのだそうだ。なんだか嘘っぽかった。

参加者は車椅子の方も居れば、元気に走り回る方、たくさんお話や質問をする方や、あまり他の人と関わらないように見える方など、様々な方が居た。ボランティア1名は10代の若者だった。自分は何をしたら良いのだろうかと思いながらも、皆の方から声を掛けてくれるので自然と時は流れて行った。始まりは18時。終わりは21時。途中で皆で夕食を食べて、後は自由に過ごしている。21時近くになるとお迎えがきたり、自分で帰ったり、促されて渋々とようやく帰っていったり。徐々に会は終わりを迎えた。

その頃に担当者が「よう、どうだった?」と笑いながら戻ってきた。「どうもこうも、何をしたら良いのか分かりませんでした」と答えると「何かしようとするのは半人前の証拠だな」と更に笑っていたと思うと急に真面目な顔をして「何もしなくて良いようになれよ」と言う。それは「それを考えろ」と大事なことを言われた気がして素直に「はい」と返事をした。

そこにまだ一人の女の子が居た。皆が帰ってもまだ残っていて担当者とも仲が良さそうに話している。とてもハキハキしていて、会の最中もリーダーシップを発揮している様子が印象的な子だった。そういえばこの子は何なんだろう?三人になった今になって初めて自己紹介をした。その子は自分を知的障害者だと話していた。あなたはここに勉強しに来たんですねと好意的な笑顔で受け入れてくれている。

この子が知的障害?そうなんだ。なんだか分からないなと思ってぼーっと考えていた時、不意に「じゃあ質問します」と質問が飛んできた。でも、あまりにも意外な内容だったので頭に入らず聞き返してしまった。彼女の質問の内容はこうだった「あなたは知的、精神、身体、どの障害者になりたいですか?」

何か分からない部分があって頭がぐるぐるしている。なんだろう。そうか「なりたいですか?」という部分かな。「えっ!?」と思って自分の思考が止まってしまった。どうしよう何故か答えられない。彼女はにこにこ笑っている。答えを待っているようだけど。なんで答えられないんだろう。そんな自分を見て笑っていて、彼女にはそれが何故なのか分かっているように見えた。

この子とは、この後ずっと深く長く付き合うことになった。

この出来事から随分と長い月日が経ったけど、この子との付き合いは今も続き、この出来事を切っ掛けに爆発的に様々な体験をしていくことになる。


これは障害の巻の二。この後に続く体験はまたの機会に。

もし読んでくださる方がいらっしゃったなら。お読み頂いたあなたに心からの御礼と、文章を通しての出会いに心からの感謝を捧げます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?