7月18日の未来をつくるサロン; 「日本の所得格差の動向と政策対応のあり方について」と『核廃棄物と熟議民主主義―倫理的政策分析の可能性』

今日のサロンは、「フェローに聞く:所得再分配における正義とは何か?~ロールズ「正義論」と行動科学・脳科学(動画)掲載日:2020-07-18 発表元:経済産業研究所」を題材にし、社会哲学と経済政策の関係についての議論でした。

ロールズなどの社会哲学と経済政策がリンクした議論は、それほどあるものではないです。以下のようにまとめられています。「所得再分配のあり方に関する考察;① 経済成長への影響を勘案しつつ、貧困層の便益が最大となる所得再分配を目指す
 ロールズの「格差原理」に基づき、最も所得が低い貧困層が最大の便益を享受できる状態を生み出すよう所得再分配を行うべき。
 過度な所得再分配は経済成長に悪影響を与え、かえって再分配できる原資を減少させる可能性がある。この制約の下で、貧困層の最大の便益となる所得再分配を図る。
② 民主的な市民生活を対等な関係で営むことが難しくなるほどの所得格差の拡大を回避
 サンデルの「民主的な市民生活」の文脈において対等な関係を築き、交流することが難しくなるほど市民の間の所得格差が大きくならないよう、所得再分配を図る。
 具体的には、所得再分配のための原資を調達する際には所得が多い者ほどより大きい租税負担を求め、所得格差の全体的な縮小を図ることを目指す。
以上を踏まえ、所得再分配のあり方として、次のように考えられるのではないか。所得再分配のあり方について民主的な議論を粘り強く行っていくことが必要」

最後の「所得再分配のあり方について民主的な議論を粘り強く行っていくことが必要」ということに関する具体的な提示はないのですが、非常に的確な分析かと思います。

このことに一つの答えを出しているのが、ジュヌヴィエーヴ・フジ・ジョンソンの↓です。彼女は、この本で、カナダにおける原発の稼働とともに増えつづける使用済み核燃料に関する国民的議論のあり方を検討します。その処理という現代社会が抱える難問にどうとり組むのか。原発推進国カナダにおける「国民協議」を検証し、熟議民主主義の可能性を追求していきます。その意味で倫理的政策分析の可能性を検討していきます。福祉功利主義・現代義務論・熟議民主主義という三つの倫理学理論にからの核廃棄物問題の議論の進め方を検討しています。

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