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清流紫暁 詩集「暁月」

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清流紫暁の詩集「暁月」です どうぞお楽しみくださいませ noteに発表した順に26の詩が漂っています
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#創作大賞2022

影絵

影絵

狐色から紺色へ
こんがり染まっていく空をなぞっていくと
家の間、消えようとする赤にはっきりとした黒を見た
空自体はぼんやりとしているのにその黒は凛としていて
闇の中に光が浮かんだ様だった

暫くして其処へ行くと反対側
鉛色から白群へしっとり染まっていく空にある
真っ赤な橙が此方へゆっくり手をのばしていた

橙をぼんやり眺めていれば、またも黒が浮かんでいる
しかし、闇の中の光ではなかった

其れは深

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おどろ月

おどろ月

茶色の泥の水たまり
そこだけ色も濃くなって
月が沈んで光ってる

ひとりごと

ひとりごと

思いがけずにひとりごと
言って空しくなる自分
あなたは隣にいないのに
癖が抜けずにまた虚しい

ある日は菓子で「美味しいね」
あなたが隣にいないのに
皿もそれぞれ二つずつ
あなたと食べたマカロンは
今はしとしと湿気てる

ある日は外で「涼しいね」
あなたが隣にいないのに
風は変わらず吹いてくる
あなたと浴びたこの風は
今はじめじめ生温い

ある日は木陰で「綺麗だね」
あなたが隣にいないのに
花は香

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下降

下降

上へ上へ参りましょう
音も聞こえぬところまで
私を癒し傷付ける
あの旋律が聞こえぬように
私と上へ参りましょう

上へ上へ参りましょう
雷雨も吹かぬところまで
私を清め流していく
あの蛇に触れないように
私と上へ参りましょう

上へ上へ参りましょう
下も見えぬところまで
私を引き留め縫い付ける
あの景色が見えぬように
私と上へ参りましょう

上へ上へ参りましょう
私と共にいきましょう

革命前夜

革命前夜

花弁流れる夜の川
真夏の陽(よう)が咲き乱れ
私は写真にしたためる
光がなくともその花は
ひとりで静かに輝いた

夜景流れる夜の川
せんの星々撮ろうにも
フィルムが切れて取れないや
せめて景色をのこそうと
私は文(ふみ)にしたためる

香り流れる夜の川
ふわりと香る貴女のみ
形にのこせぬものなので
私は心にしたためる

嗚呼!
ゆずの香りがする今夜
うめの様に強かに
貴女はうまれるのだ!