人生初、ごはんがおいしい
実は私、あまりコメが得意ではない。
子どものころは食が細く、おかずにしろ白飯にしろあまり入らなかった。その代わりというか、牛乳が大好きで、牛乳を食前に飲んでおなかいっぱいになり、ごはんを残すのが常だった。
大人になって日本舞踊を習いだし、初めて食欲があるという状態を知った。就職してから声楽を習いだし、その仕事を辞めたあと登山デビューして、ますますよく食べられるようになった。運動恐るべし。
けれど、登山のためにカーボローディングをしろ、登山の前日にコメをはじめとする炭水化物を多めにとって山でよく動けるように備えろ、と言われると、困った。コメが、パンもそうなのだが、あまり入らない。結局、食の細かったあのころの子どもは、今も同じ私なのだなと思う。
しかし最近、人生で初めて、コメを食べるのが苦ではなくなっている。
コイツ↓が、私の人生に現れたのである。
タカラトミーから発売されたオモチャ「究極のおにぎり」。
上のパッケージがすべてを物語っている。白いプラのおにぎり型に、軽く塩を振ってからごはんを投入、スイッチを押して回転させると、30秒で専門店のようなふわふわのおにぎりができあがるという代物だ。
専門店のようかどうかは知らないが、とりあえずおいしい。簡単ウマイ。手を米粒でベトベトにすることなく、約30秒で丸いかたちに仕上げてくれる。
ベストは炊き立てのごはんを使って、その場で食べること。最高だ。このオモチャがAmazonから届けられるのに備えて、ちょっぴり高級な鮭フレーク(700円ぐらい)を買ってしまった。天才だ。やべ、400円の鮭フレークには戻れない。
目的のひとつは、登山のお弁当だ。登山では、早起きして出発するだけでも大変なので、さらに早起きして、山で食べるおにぎりを何個もつくるなんてことはなかなかできない。しかも、早朝、指先にはりつく米粒と戦わなければいけないのだ。かといって、ラップで丸めるのも味気ない。
そこで、このオモチャである。発売日の少し前、テレビで紹介されたところにたまたま遭遇し、即Amazonで検索した。これで、私も登山に何個ものおにぎりを持っていき、歩きながら食べるなんて真似ができるかもしれぬ。だが、登山の前に炊き立てごはんで試して、すぐメロメロになってしまった。
次いで、職場用の弁当に試した。レビューを検索したところ、あたたかいときはふわふわだが、少し冷えると固まって持ちやすくなるという。果たしてレビューのとおり、昼休みまで冷蔵庫に入れておくことによって、ふわふわのおにぎりは冷たくもちゃんとまとまった、弁当向きの存在になった。
鮭にぎりと梅干しにぎり、それにたくあん、フリーズドライの味噌汁に冷凍の唐揚げ、小さなりんご。完璧な昼ごはんのできあがりである。
週に何日かは、とりあえずおにぎりにすればいいと思ったら、職場ランチの準備がだいぶ楽になった。
現在は、
月曜日 基本のおにぎり弁当
火曜日 何かのおかずか汁をつけたおにぎり弁当、臨機応変(夕食の残りとかも)
水曜日 無印のカレーで手抜きスープジャー弁当
木曜日 何がしかの汁を煮てスープジャー弁当(手羽が好きなので鶏スープ多し)
金曜日 サボって外食
という、1週間のルーチンが確立した。
弁当以外でも、究極のおにぎりがあれば、いつでも気が向いたときにおにぎりを生みだすことができる。
もともとあまりコメが得意ではない私が、最後に残ったごはん茶碗の存在を苦に思わなくなった。とりあえず、鮭フレークでおにぎりにしてしまえばいいのである。とりあえずおにぎりになっていれば、パクパク食べられてしまう。
とにかくおにぎり。ネタがなければおにぎり。エブリデイおにぎり。
ありがとう……究極のおにぎり。
今の心配ごとは、たった3,400円弱のこのオモチャが、いったいいつまでもってくれるのだろうということである。これだけ稼働していると、半年ぐらいで壊れても文句はいえない。
とはいっても、さすがにこの秋にはまだピンピンしているはずだ。
秋の行楽シーズン、登山のために早起きして、スイッチひとつでおにぎりの山を築きあげるのが楽しみである。
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