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【本】セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱

 障害者の性行為という、大半の人が見て見ぬふりという問題ではなく、そういう問題があるということすら気がついていない事に立ち向かっていく話です。障害者の性を話の初めに、現在の日本が抱える性の問題や意識に話を広げていきます。支援のために法人を立ち上げていく方法と過程は、これから何かプロジェクトや組織を立ち上げようとする方にも生かせると思います。

批判には、「外在的批判」と「内在的批判」の2種類があります。

 自分が何かをやろうとすれば、助けてくれる人も邪魔になる人も出てきます。当然、批判も受けるようになります。意味のある批判と聞く意味のない批判とを聞き分けられないと、いちいち批判に答えていくようになり、本業が遅々として進みません。筆者は予め、聞くべき批判を聞き分けられるような準備を怠っていません。実生活にも、細々と自分のやることにケチをつけてくる人がいますが、これは「外在的批判」です。サラッとスルーです。

ゼミでは、論文を執筆する際の基本的な型を学びました。その過程で私が「なるほど!」と思ったのは、論文執筆の過程に、必ず守るべきルールとして、「先行研究の批判的検討」という段階が組み込まれていたことです。

 私も大学の研究で自分のやりたいことが、世の中で既に誰かやっていないのか調べるよう教わりました。調べ方は教えてもらわなかったのですが、フレームワークとかMECEとかやって自分のやりたいことの先行研究の有無や範囲を調べることは重要です。時間の無駄遣いをしないためにかなり念入りにやった方がいいです。そして、世の中の大半の疑問や興味というのはもうすでに誰かが取り組んでいることも分かります。だから、やるのやーめた!ではなくて、ある1つの事柄と別の事柄を組み合わせて考える・研究することは未だ誰も取り組んでいないかもしれません。取り組んでいても、まだ表舞台に出てきていないのです。そこに自分が入り込める余地があるならば、いい発見です。

 筆者の坂爪さんの取り組みも、「障害者の性」だけで考えるならすでに色々な取り組みが存在しています。「障害者の性」と「NPO団体設立」という組み合わせを実行に移した方は坂爪さんがおそらく初めてなのでしょう。これも坂爪さんが色々な先行研究を調査して得られた活躍の場です。

 ゆえに、本書では「障害者の性」問題のゴールを、「障害者が、毎日の暮らしの中で、最低限度の性の健康を保ち、最低限度の性の権利を理解・行使するために必要な、社会的なサービス・支援制度を整備すること」と定義します。

 何を目的とするのか。手段が目的化することもしばしばあるので、ゴールが何かを決めておくことは重要です。坂爪さんの話を読んでいると、障害者の性の話よりも起業ストーリーのような展開にワクワクします。ゴールを定めて、そこまでのマイルストーンや小さな目標を設置して、どうやって進めていくのか。これを決めておかないと行き当たりばったりになってしまいます。一刻を争う事態ではないならば、きちんとゴール・目標・目的・手段などを決め、現状は予定とどう違うのか見極めていく、ズレがあれば修正する。合っていれば、どんどん進めていく。PDCAサイクルが上手く回れるようになるのが理想です。

 障害者の性の本を読んでいたはずなのですが、筆者が障害者の性を支援していくためにどんな苦労があり、対処していったのかというサクセスストーリーの展開にとても惹かれます。この記事を書いていても、性の事を全然書いてないですね。性問題は障害者に限らず、若者の草食化やセックスレス夫婦、性風俗サービスなど、実は身近に溢れています。重たい話になってしまい、人々が性の問題を見て見ぬふりをしては問題解決にはならない。そうならないように話の展開をちょっとだけ楽しくして、まずはこの問題に興味をもってもらうことに主眼を置いているのかも、と思いました。

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