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『相性』

私は現在、心療内科を月に一度受診しています。
そこで幾つかの薬を処方されて、『不安神経症』と『むずむず脚症候群』の治療をしています。
昨年の秋から、4ヶ月が経ちました。
まさか、自分が『心療内科』を受診する日がくるとは、思ってもいませんでした。たまたま、癌の再発予防の抗がん剤との相性が悪く、抗がん剤の服用を開始して4日目から身体がむずむずして落ち着かなくなりました。

「いてもたってもいられない」とはこの事で、夜中に階段を上り下りしたり、筋トレをしたり、常に身体を動かしていないと心の平穏を保てない。そんな症状に悩まされる事になりました。肉体を疲労させて、むずむずする感覚を麻痺させるようにして、やっと眠れるという状態です。
私は、この症状を抗がん剤の副作用だとは完全には思っていませんでした。その為、5日目も抗がん剤を服用しました。

5日目も症状は治まりませんでした。ここで、私は抗がん剤を疑いはじめました。そして、自己責任で服用を中止する事にしました。抗がん剤が身体から完全に抜けきる時間を調べて待つことにしました。
結局、抗がん剤が完全に身体から排出されても、私の心の平穏は戻りませんでした。こうなると、本当に抗がん剤の副作用が原因なのかどうかも、素人の私には判断がつきませんでした。体質が変化してしまったのか、私にはいまだに確固たる原因がわかりません。

抗がん剤の服用を止めて一週間経っても私の症状は悪化するばかりで、自死がチラつくありさまでした。此処で担当医(癌執刀医)に相談すると「あまり聞いたことのない症状ですね」との返答を受けて、これは私から積極的に動かないと、私の命が危ういという状況をハッキリ認識する事が出来るようになりました。

副作用だと思われる症状が出始めてから10日以上が経過していました。私が盲腸癌を手術した総合病院には『心療内科』はありませんでした。私は手当たり次第に心療内科を調べて電話をしました。
私はここで、あることに気がつきました。まったく予約が取れないのです。私の心情としては今すぐにでも受診したいのに、「来週なら」「二週間先なら空きがあります」など、心療内科は患者でいっぱいだったのです。

ここで私は閃きました。この辺りで、いちばん評判の悪い心療内科なら予約がとれるのではないかと。そして評価星1の、クソミソに叩かれている心療内科を探し出して、二日後の予約を確保することが出来ました。「これで自死をしなくて済む」かもしれない。私は心底ほっとしました。

私には、私自身を自死から遠ざける方法がありました。それは、バイクで走る事です。バイクで走っている間だけは心の健康があり、気分は爽快でした。そのときだけは自死感は皆無になるのです。これは奇跡的な事だったかも知れません。バイクに出会い、いつでも走れる環境がなければ私の命はどうなっていたかわかりません。

私は、二日後心療内科を受診する事が出来ました。私にとっては5点満点の心療内科でした。これは、さまざまな相性の問題かも知れません。薬との相性。心療内科との相性。日日暮らしていくなかで我々は予測不可能な相性の連なりのなかで生きているのでしょう。

今日、とある漫画家の自死のニュースに触れて、良き相性の連なりがその方にあったらと、この文章を書くことにしました。そして、予約がなかなか取れないほど心療内科は患者でいっぱいです。
心療内科を受診する事を、どうか、ためらわないでほしいと願うばかりです。
お悔やみ申し上げます。




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