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『ま夏。九月一日。鞄』

小さな小さな、円墳がある。
私の右鎖骨下にこんもりとした、百円玉くらいの円墳だ。
それは、肉がついて、いっそう丸々としてきた。

私のこの五十年というものの肩掛け鞄のベルトは右肩にあった。常に荷物は左腰にあたり、そのバランスに慣れ親しんできた。この格好が不可能になった。右鎖骨下のカテーテル・ポートにベルトがあたり、鞄の重量がモロに肉の円墳にかかるからだ。これからの人生は左肩掛けスタイルで過ごさなければならない。

これが、意外と変だ。歩いていても鞄が落ち着かない。鞄の所在がうまくつかめない。前後左右にゆれている。幼少期からの癖を直すのは難しい。バイクにはまだこの新スタイルで跨ってはいない。さて、うまくバランスがとれるだろうか。


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