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『真夏。休薬期間中。143日目』

朝から大量の下剤を飲む。かなり、甘ったるい味だ。この数時間で、私は、二度漏らした。昨年はそんな事はなかった。この5クールのがんかわいがりで、いちばん、かわいがられたのは、癌ではない。断トツで、尻という事なのだろう。私の尻は、弱々しい。

もし、入院するとしたら、少しお金を余計に払って個室部屋の希望を出したほうがいいのかも知れない。

とりあえず1000ml程度を一時間くらいかけて飲む。そのあと、水を500mI飲む。
これで、綺麗な水便になっていれば大腸内視鏡検査が受けられる。少しでも、固型便らしきものが残っていれば、これを繰り返す。制限時間は、12時くらいまでだ。14時から検査がはじまる。水を飲めるのも13時までだ。

終わった。意外に早く。ストレッチ効果か、無理な体勢も苦ではなかった。
一年前は「ほら、少し触れただけで血がでるでしょう。貧血の気はありませんか?」、画面を見ながらそんな会話をした。もう、見た瞬間に癌だと判る兆候があった。今回は細胞を採取して、その細胞を検査にだしてからでないと解らないという状態だ。一年前に癌細胞を大きめに切除して縫合したあたりの場所だ。ホッチキスらしきものが腹のなかにあった。それは知らなかった。溶けていると思っていた。これからも、年一くらいで大腸内視鏡検査はやり続けるのだろう。

一時間早めに下剤を飲み始める作戦が私にはあっていた。これからも、その作戦でゆこう。一時間の余裕があって良かった。なにせ、二回漏らしたのだから。

検査三連戦もあと一日。人生初めてのPET検査だ。検査の五時間前から食べ物はダメ。無糖の飲料だけは飲める。ただ、今日の検査で大腸の中の細胞を採取している。血も出ているので刺激物は口に入れられない。つまり、カフェインも控えている。PET検査は昼頃には終わる予定だ。午後になったらキンキンのアイスコーヒーを飲みたい。

そして、私の身体から完全に抗がん剤が抜けた状態になった。すこぶる体調がいい。それだけ、抗がん剤は正常な細胞をも、かわいがるという事だ。あらためておそろしいと思う。「これこそが、癌を患う前の私か」と、感心してしまった。どこまでも散歩できそうだもの。この暑い中で。

そして、オリンピックの数々の誤審に腹がたたなくなっていた。
「ふうん、そう」で、終われる。こだわりがなくなっている。ドラマや映画に対するこだわりは多少残っている。このこだわりもいつかなくなるのかもしれない。

ネットフリックスのトップ10に入っていた。ドラマ版『シャイロックの子供たち』は映画版のほうが数倍良かった。観るなら、映画版のほうがオススメ。橋爪功と柄本明がいるだけで、もう、勝ち。
WOWOWのドラマは途中から息切れする作品がある。『シャイロックの子供たち』がまさにそれ。

『地面師たち』がネットフリックス製作で本当に良かった。


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