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『ま夏。八月二十五日、その二。明日、退院予定』

暇なので、もう一本文章を書こう。家にいたときも暇ではあったけれど、環境が変わると書くものが増える。「書を捨てよ、街にでよう」か。

軽く、筋トレを始めている。
ベッド内や廊下の壁際で。もも上げ腹筋。プランク。スクワットをしている。カテーテル・ポートの埋め込み場所に痛みもない。
三種類目の抗がん剤治療の副作用もない。しゃっくりは、「水分補給を多めに取ると治りますよ」と言われて、その通りにしたら、明らかに減じた。どの看護師に教えて頂いたのか忘れてしまったけれど。感謝、感謝。

看護師は目まぐるしく変わる。覚えきれない。ただ、一年前にも入院していたのでなんとなく顔をおぼえている者もいる。名前はだれひとりとして記憶になかった。看護師のほうは、私の名前が風変わりなので「なんとなく見たことある名前だな」と覚えているようだ。

新しい抗がん剤はこのようなポシェットに入っている。二日間はこの状態で過ごす。

右の鎖骨の下から、管を通りポシェット内の抗がん剤に繋いである。ポシェットが逆向きだが、たぶん問題ない。様々なところにフックできるギミックがほどかされている。ただ、あまりにも下に繋ぐと、管の屈曲をまねく事があるようで、お勧めできないそうだ。今日の夕方くらいには終わる予定になっている。それから、針抜き作業を教授される。

病院外の状態はまるでわからない、今日の朝方はすこし寒かった。
一応腹巻きは持ってきている。今年中かはわからないけれど、もう一回くらい入院と手術の可能性は残す。抗がん剤治療でがんが完治する例はほとんどない事から、寛解を目指す。それも難しいだろうが。

また、どこかで手術をするのだろう。こんどは、軽装では過ごせない季節かも知れないな。抗がん剤治療の結果次第だ。私の体内では、寛解と延命が五分五分でせめぎ合いを繰り広げている。関ヶ原の合戦のようにすぐには終わらない。大阪の陣まで私の命があれば、ラッキー中のラッキー中のラッキーだろう。

取りあえずは、『盲腸がん』のステージ2発症から、一年、生き残りました。これからは、肝臓がんの血液検査の兼ね合いがある。手術中の全身麻酔のなかで死ぬのも悪くないとは思っているのだが。どこかで、人生のギャンブルに挑みたい。昔から、根拠のない『死なない自信』があるのだ。


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