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『ぬくぬく布団探偵2』

ぬくぬく布団探偵の出動だ。新年2度目だ。
ただ、ゆめを遡るだけの探偵業。ぬくぬくの布団からでてしまうと、ゆめは霧散する。私はゆめを遡りながら、尿意とも戦っている。

ゆめの跡には新年会があった。父方、母方、死者、生者、混ぜこぜの新年会だった。実生活で、このような会は一度たりともない。
私の両親の故郷は、雪国新潟で、正月に故郷に帰郷する風習を私の両親はもっていない。場所も悪い。長野よりの新潟と、福島よりの新潟に分かれていた。どちらも、まあ、豪雪地帯といってよく、陸の孤島などと呼ばれてニュース番組で取りあげられることも多い。

その両家族が一堂にかいして集まる事は、ゆめゆめありえない。正月はおろか、お盆休みでもない。父方、母方、の単位でも、ほぼない。軽い疎遠で、なかなか仲が悪いようだ。遠方の事なのでわからないが、小さい火種をそれぞれが隠しもっているのだろう。ほぼ、隣り同士に住みながら、いっぽうは朝日新聞を読み。いっぽうは産経新聞を読んでいる。

そんな疎遠な者たちの新年会が、私のゆめで行われていた。酒量を控えている私も、数年前に自死したチンピラの叔父と酒を酌み交わした。生前では一度たりともないことだった。乳がんの治療を拒否して亡くなった従姉妹にもあった。それが、ゆめのよいところだ。ごちゃごちゃして、わちゃわちゃして、しっちゃかめっちゃかでよくわからない。諍いはなかった。

ぬくぬく布団探偵のゆめ捜査もこの辺りまでが限界だった。楽しかった、ゆめだけの新年会がばらばらになって私の冷たい後頭部から逃げてゆく。ぬくぬく布団探偵のいのちは短い。
ぬくぬく布団探偵は布団からでたら終いなのだ。
ぱんぱんの膀胱が私のパンツを「まだかまだか」とノックしている。

私は、これからイラストも描こうと思っている。
ぬくぬく布団探偵は忙しいのだ。

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