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日本で「美術館女子系企画」が無くならない理由、そして具体的解決方法

日本を離れて6年、日本の美術館界隈を外から眺めている私は確信しています。このままでは「日本では「美術館女子系企画」は無くならない」だろうと。

それにしても炎上しましたね。

ちなみにMOTの地下のレストランはガチで美味しいので絶対行ってください。ご家族づれでも安心していけます!

それにしても、私、すごく不思議だったんです。この手の「アート+女子」企画は以前から結構あったんです。例えばこれ。

個人的にすごく不思議に感じたんです。櫻坂がオッケーでAKB48が炎上したのはなぜ?瀬戸内国際芸術祭がオッケーで、MOTが炎上した理由って何?

ちょっと考えたんですが、私、解っちゃいましたよ。それは

「日本で美術館に行く人は「美術館に行く人を気にしすぎ」だから」

ここに尽きると思うんです。日本の外から、中から美術館を見てきた私は自分の経験から断言します。日本人は「自分以外の美術館に来る人」を気にしすぎです。

なぜ美術館に行く人を気にするのか。そして旅行先の美術館で女子企画は燃えないのに、都市部の美術館ではなぜ燃えたのか。分析するとなるほどと思うことが出てきました。

1:美術館は旅行より簡単に行ける

日本人の余暇に使う時間は他の国より極端に少ないです。そうなると簡単に旅行とかいけないですよね。例えば「フランス人はヴァカンスの為なら死んでもいい的な人」考えも聞きます。私もシンガポールに住んでいた時には周囲の人たちが休暇の度に旅行に行きまくるのを見てすごいなあと眺めていました。そう、日本人はなかなか余暇をドカンと取れない。そうなるとドカンと取れないけど、余暇の際には非日常を感じたい。非日常的なものを感じられるのどこじゃいうことで「美術館」というキーワードが浮かんでくるのは容易に想像できます。(わかりやすく比較例を出すとここに「博物館女子」が出てこないのはなぜか?と考えるとよろしいかと。「博物館」って美術館よりヴァカンス的な要素少ないですよね)。

2:旅先の美術館は旅先、都市部の美術館は「行った」行為が重要視される

旅、それはまさに非日常の最たるもの。そして歳を取ると「旅」がいかに大変なものかを思い知らされ、旅から足が遠のいていく。。。旅における責任って若い人や身軽な人には想像できなのかなって思春期男子を子育て中の私は思います。小さい子を連れた旅って大変ですよ、怪我させないように、病気にならないように、そして「周囲に怒られないように」常に気を使います。旅だともう移動だけでその時はヘトヘトです。つまり、旅先の美術館は旅に含まれるので、女子系企画を出しても旅のコンテンツが注目されるのでそこまで燃えない。

じゃあ都市部の美術館に行く行為は?その行為だけでは旅ほどの非日常は演出できません。じゃあそこに非日常を入れ込むには。。。アイドルっしょ!この美術館女子系の企画にゴーサインを出す美術館において地位の高い人は子連れ移動のしんどさを経験してる既婚の方が多いと思うんですよ。そうなると「自分の理想」として「美術館で女子と鑑賞してる自分→(自分そんなこと出来なかったし、やりたいって思ってる人多いはず!)イケてる!」って連想してしまう人が多いのでは(と想像する人も多いのでは)?と感じたのです。

つまり、展示されてる美術展ではなく、ハコが大事。そのハコに入る自分のアクセサリーとしてのアイドル。安易っちゃー安易だけど、でもなるほど。

3:「美術館に行く行為」を自分も周囲も気にしすぎな日本人

なぜそんなに行為を気にするのか。それは美術館に行く日本人が「美術館を訪れる観客を気にしすぎ」だからと思います。これには本当に心当たりがありまくりなんです。

私は日本的な母のカテゴリーからすると本当に「ダメ母」でした。ママ友付き合いとかもう本当に苦痛。私にとっては、子連れで美術館に行くことが本当に救いでした。しかし、私の子供が赤子であった10年以上前も、そしてそこから定期的に、まるで「ジーンズの流行がゆったりとピチピチを繰り返す」ように定期的にこんな文章がネットを賑わします。

「美術館に行く子供は成績が良い」
「周囲の鑑賞者の方に迷惑にならないように子連れで美術館に行くコツ」

こんなキーワードもよく出てきますね。

「アート思考」「アートとエリート」「アートと長生き」

これって「アートに触れてる自分語りやん」。アートそのもの関係ないやん。

つまり、日本人は美術館で「美術館に行った人間」がすごく気になるってことです。以前寄稿した文章があります。

ここで以前自分でとったアンケートを紹介しました。

「鑑賞者同士の監視」がここまで意識されてるのかとびっくりしたことを今、再び思い出しています。私はこのアンケートの結果を知ってから「日本の美術館に対する意識問題は美術館側だけでは解決できない」と確信しています。

鑑賞者同士の監視が高いということは「こんなアクセサリーをつけてる俺最高」というマーケティングは集客につながるという戦略を外注広報側が発案するのも容易に想像できます。

4:解決策はないのか

美術館女子系のコンテンツ発案が無くならない原因としては「容易に写真が取れないから絵面的に特別感を感じる」「でも絵が理解できてない自分が恥ずかしいと思われる気がする」「だから可愛い女子がいればそちらに注目が集まるし、行った気分も味わえる」等でしょうか。そして1番の要因は

「アイドルにピントがあったような写真で喜ぶような層が一番お金を使う」

とマーケ発案側が感じていることではないかと思うのですね。このちょっと待ってよ系の思考をひっくり返す為にSNSなどで思考の鋭い層がアイデア重視で参加できるような企画を美術館側とコア鑑賞者側が共同で仕掛けていくのが一番具体的な解決策ではないかなと感じました。この本、もう1回読みなそう。