ホワイトカラーの生産性の問題

日本のホワイトカラーの生産性の問題 (1)

 日本のホワイトカラーの生産性における問題とはいったいどのような問題なのか?  何が原因なのか? どうすれば解決できるのか?

どのような問題なのか?

 日本のホワイトカラーの生産性における問題とは、「ホワイトカラーのコストが高止まりして下がらない」という問題だ。 本来、利益を追求する組織であれば収益を上げる為にコストを下げ続けるが、ことホワイトカラーの業務においてはコストがなかなか下がらない。 

 例えば、報告書やプレゼン資料の作成に係る人数と時間は、過去数年振り返っても下がった傾向はない。技量を上げれば一人でできる作業を複数で分担し 細かいテニオハの修正に膨大な労力をかけている。 
  曖昧なコミュニケーションによる電子メールの往復や更新されないグループアドレスの乱用で不必要な共有が行われ続けている。 その結果、各自のメールボックスは巨大化し、大量の電子メールを確認するのに膨大な時間を投じている。

 これらの状況は、作業単体または作業者個人でみればさほど重要な問題でないように見える。 しかし、多少の違いはあれど同様の問題が殆どのホワイトカラーに発生している。 即ち、これらのコストをホワイトカラーの人数と掛け合わせたとき、本当のコストが見えてくる。

 以前、電子メールに係る時間を削減するために調査した。 ある部門では一日数百の電子メールを受け取り、その確認やフォローアップに平均3時間以上掛けていた。

3時間/人/日  x  20人 x 245日/年 = 14,700時間/年

調査対象の部門だけで電子メールを処理するために年間凡そ15,000時間も掛けていることを知り愕然とした。  単純計算で年間7人分の労働時間に相当する。 もっと重要な問題は、この膨大な時間の半分以上が電子メールを選別し重要度の低いメールを削除または無視することにあてがわれていたこと。 さらに、このような状況が少なくとも3年以上放置されてきたことだ。

もし、この半分の時間(または作業者一人)でも改善や他の付加価値の高い仕事に割り当てることができればコストが下がり収益を改善することができたであろう。 

この調査で見えた問題は、氷山の一角にすぎない。 自分の電子メールの状況をみれば、同様の問題が全社レベルで起きていることは容易に想像できる。

なにが原因なのか?

日本のホワイトカラーの生産性の問題は、「生産性が低い」という表層的な問題ではない。 真の問題は、日本のホワイトカラーが「生産性を向上させない構造」を抱えていることだ。 この構造が存在し続ける限り、「改善」の旗を掲げ努力を投じても生産性の問題は解決されない。 いや、最も恐ろしいことは改善の気運すら現れない「茹で蛙」状態に陥っていることだ。

日本のホワイトカラーの生産性を抑え込む構造は、三つの構造体の組み合わせで出来ている。

構造の問題

(1)社会構造
 
「終身雇用」は右肩上がりの経済環境ではインセンティブとして極めて有効であったが、右肩下がりに転じたところから環境適応への足枷となった。 この流れに呼応して「教育システム」も組織に従順な人材を生産することに大きく貢献したが、イノベーションやアントレプレナーが求められる今日においては人材不足を来している。結果、 労働者が企業にしがみ付かなければ生きていけない構造が出来上がってしまった。

(2)文化構造
「曖昧な日本語」は密度の高い日本の社会において人間関係を潤滑させる重要な機能である。 また「単一文化」は大規模で複雑な組織を作り維持することに貢献してきた。 しかし、変化のサイクルが短くなった今日においては「曖昧さ」が持たらす非効率や不透明性が急激に変化する環境への適応を遅らせる要因となり、「単一文化」への固執が世界規模で起きる多様化への対応を遅らせている。

(3)組織構造
右肩上がりで構築された重厚長大な組織構造は多くの「縦割り」を形成してきた。 その上に、組織に対する労働者の極度な依存と閉鎖的な仕事の管理方法とが合わさり、環境の急激な変化に曝されても内輪揉めに多大な労力を費し変化に追随できない状態に陥り「顧客指向」が形骸化されてきた。

この構造から生み出されたものは、「組織で生き残るための仕事」だ。 このような仕事が増え、それに日々翻弄されるホワイトカラーが増えた。 その結果、「仕事の為の仕事」が「儲ける為の仕事」を駆逐するような状態となってしまった。

以前、職場で事務効率を改善する提案を現場の担当者にしたところ「我々の仕事は標準化や簡素化できるほど単純ではない!」と強烈な拒絶反応を受けた。  驚いたことは、管理職レベルにおいても同様の拒絶反応が示されたことだ。 現場担当者や管理者は、様々な理由をつけて現状の仕事が「必要不可欠」であると主張し、今の仕事のやり方が最も合理的で改善する余地は殆どない言い切る。  しかし、これらの反応に共通することは「どうやって儲けを増やす?」という問いを投げかけた途端に沈黙し、再び口を開いた時には他部署の問題にすり替わるという始末だ。

どうすれば解決できるのか?

私が提案する解決策は、「ホワイトカラーにおけるコミュニケーションの質を改善する」である。 コミュニケーションの質を改善するとは、各コミュニケーションの単位(発話ごと)における5W2Hを常に明確にすることである。  この対策を講じれば、ホワイトカラーの生産性が向上するだけにとどまらず、企業が欲しているイノベーションやアントレプレナーが生まれる土壌ができると考えている。  

この解決策の詳細は、次のnoteで書き出そう思う。



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