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第4回『Keep your smile 半身麻痺になってしまった女の子が綴る、ハッピーでいるための15のコツ』momoちゃん著

闘病記を探している人から「明るい闘病記はありませんか?」と聞かれることが多い。気持ちが前向きになる闘病記を読みたいというリクエストだ。そんな人のために今回の本を紹介する。著者は21歳で文章は弾けるように明るい。きっと読者の心も明るくなるだろう。

●脳動静脈奇形が破裂

 高校3年生になる直前の2015年4月1日、地元の佐賀から東京の吉祥寺に住む姉のところへ友人と遊びに行った。
 ディズニーシーを満喫した翌朝、トイレに行ったその時、激しい頭痛に襲われその場に倒れて痙攣する。
 救急搬送された病院で脳動静脈奇形の破裂による脳出血と判明した。開頭して血腫の除去手術が行われた。
 意識が戻るのに3日かかったが、その後の1カ月のことはほとんど覚えていない。
 左半身に麻痺が残り高次脳機能障害となった。すぐに怒ったり、笑ったり、泣いたり、感情的になりやすかった。
 顔の麻痺もあったので言葉もうまくしゃべれなかった。ただ、かっこいい研修医に胸をときめかした。
 その後、頭の骨を戻す手術をしたが感染症に罹ってしまい人工骨に入れ替えるなど、3回の大変な手術を経験する。

●人のつながりが大切

 入院中に友だちの大切さを身にしみて感じた。
 インターネットで知り合うのも当たり前のご時世で、ブログやSNSに病気になったことや坊主頭になったことを隠さず書いた。
 見舞いに来てと発信すると、次々と躊躇せずに来てくれた。
「この時代に生まれてよかった」と実感した。
 両親や姉弟、真っ先に見舞いに来てくれた小学校の保健室の先生など、支えてくれている人たちの存在に、病気になって初めて気が付いた。
 だから毎日笑顔で過ごせるし、リハビリはつらいけれど、会った時には「頑張っている」と伝えたいと思うようになった。
 自分が苦しんでいると、周りの人も苦しめていることを知った。
 自分が笑顔でいると、どう接していいかわからなかった人も自然に気にかけてくれることを知った。
「障害も1つのスタイル」と友だちがかけてくれた言葉が、とても嬉しく印象に残った。

●病気になって「幸せ」を実感する毎日

 病気になるまでは何の不自由もなく、何も考えずに毎日を生きていた。当然に「幸せだなぁ、と改めて実感することもなかった」。
 ところが17歳で突然病気になって、左半身が麻痺したことで「身体の自由は半分奪われたけれど、(幸せに気付けてからは)心はその何倍も自由になった」と感じた。
「だから私は病気になってから、『幸せ』って言葉をよく使うようになった」と告白する。

 勢いのある原稿のまま出版されたようで、編集上のミスも少々あるが、そんなことはおかまいなし。
 さあ!momoちゃんワールドに引き込まれて、貴方も笑顔になって「幸せ」という言葉をかみしめてほしい。

■書籍情報
momoちゃん著『Keep your smile 半身麻痺になってしまった女の子が綴る、ハッピーでいるための15のコツ』 2019年3月15日 株式会社文芸社刊 定価1,100円⑩

<初出>
NPO法人Reジョブ大阪発行の情報誌「脳に何かがあったとき」2022年4月号

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