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サンタと頑固ジジぃ。

ご存知の人は少ないと思いますけど、私の会社はリハビリと身体を療す仕事の二本立てです。

私は国家資格をいくつか所有しているので、両方の仕事をマルチにしています(マルチにできるほど器用でないが)
ふたつの事業所がクルマで数分のところと離れているので、二か所を行ったり来たりで頭の中がカオスです。
今回はリハビリの方の仕事のお話です。
私はリハの利用者さんに老若男女問わずリスペクトをもって接しています。
ただひとり例外を除いて…
私は心の中で彼を頑固ジジぃと呼んでいる(失礼)
彼はリハの前日、深酒をするのか、赤ら顔で来院する。


数年前に脳梗塞で右半身に麻痺が残る。
滑舌も悪い。

私の施設では担当性ではないので誰がジジぃに施術するか当日までわからない。

基本的に現場仕事が好きな私は施術は嬉しいのですけど…
ジジぃだけは苦手だ…

「こういう運動をした方がもっと可動域が広がりますよ?」という私の提案を
ジジぃは遮るように
「そんなことしたって治るわけねーだろ!」
一喝される。

「セイ子先生のリハビリは受けたくねー!」
皆んなの前で怒鳴り飛ばす。

麻痺は治らない。でも機能低下を防ぐためには必要だ…

喉まで出かかっている言葉を押し殺す。

唇を噛み締めながら、ジジぃとの闘いが続く。

ジジぃのカルテとにらめっこ。
自宅に帰って学生時代に使っていた参考書とネットでリハビリの仕方を検索。


何回施術しても、私に強くあたるジジぃ。
私にだけが口調が強い気がしてならない。


ジジぃの施術をした日は毎晩落ち込んでる。

一度だけ、ジジぃの施術を外して欲しいと上司に泣きついたこともある。

「セイ子先生?障害だけをみてはダメだよ。利用者さんをみなさい。」
私は膝から崩れ落ちそうになった。


何をしていたんだ私は…


私のジジぃにしていることはリハビリじゃない。
自分のエゴだ。押し付けにすぎない。


私自身、ADHDという障害で苦しんでいる、誰も寄り添ってもらえない時に手を差し伸べた時に救われたではないのか?
ジジぃの言葉に耳を傾けていなかった。
毒舌の裏には意味がある。
心の声を聞かなきゃ。


その日からジジぃの生活環境、家族構成、背景をケアマネに教えてもらい。

屋外歩行でジジぃの身の上話を聞いた。

そんなリハが数ヶ月ジジぃと続いてます。


先日、赤ら顔のジジぃがスーパーのビニール袋に大量の柚子と干し柿を持って来所した。

「これからもよろしく頼むぜ。セイ子先生!」
私は久しぶりに涙が出て笑った。

「干し柿ありがとう」
「バカやろ。セイ子先生にじゃねーよ。職員皆んなにだよ」

白髪頭で赤ら顔、髭のないサンタからのプレゼントだ。


12月25日の仕事納めの日、サンタが来所したら特別メニューのリハビリで彼をもてなしてやるから!
待ってろよ!

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