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【春橋哲史】フクイチ事故は継続中⑥-ALPS小委の報告書は 「提言もどき」

ALPS小委の報告書は 「提言もどき」


 東京電力・福島第一原子力発電所(以後「フクイチ」と略)では、ALPS処理水(以後「処理水」と略)の扱いが喫緊の課題となりつつあります。

 これについては、経済産業省が設置した有識者会合(「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」。以後「小委」と略)が「環境中への放出を推奨する」旨の提言を本年2月に報告書としてまとめており(注1)、8月半ば時点で、政府(経産省)が具体的な方針を検討中とされています(ALPSの運転開始以降の経緯は「まとめ」を参照)。

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 東電も報告書を受けて「検討素案」(注2)を公表しており、経産省は「関係者の御意見を伺う場」を5回開催し(注3)、書面での意見募集(パブリックコメント)も実施しました(8月21日時点で結果は未公表/私も提出=注4)。

 経産省も東電も小委報告書を検討の出発点としていますが、私は、この報告書を前提に検討を進めるのは「世を惑わす行為で、判断を誤る元になりかねない」と思っています。

 以下、報告書の欠陥・欠点を主に4点指摘します(順不同)。

 1点目が「放出場所・開始時期・期間が盛り込まれていない」ことです。

 2点目が「(処理水を環境中に放出する際は)二次処理・希釈処理を行うとしつつも、処理の効果が実証されていない」ことです。処理水は、環境中への放出基準とされる濃度を満たしていないものが約7割を占めています(注5)。二次処理の試験は9月以降に実施予定で、現時点では方法や効果が実証されていません。

 3点目が「処理水の性状が把握できていない」ことです。含有核種の種類・濃度は全て把握できておらず、化学的汚染(2018年10月にタンクで硫化水素の発生を確認=注6)や生物的汚染(微生物や細菌の繁殖)は未調査です。

 4点目が「タンク用地が確保できない根拠が希薄である」ことです。フクイチの敷地を周辺の中間貯蔵用地へ拡大することについて、小委では「環境省に確認したところ、無理とのこと」という説明にとどまりました。環境省の担当者は直接説明しておらず、伝聞です。又、報告書では「(用地の)確保は難しい」とされていて、きっぱり否定していません。

 以上を要約すると、小委の報告書は「中身が把握できていない放射性液体廃棄物で、二次処理や希釈処理の有効性も実証されていないけど、それらの処理で環境に影響を与えないものになるだろうから、放出を推奨する。やり方次第では保管を継続できるかも知れない」という好い加減なもので、「提言」に値しません。せいぜい「提言もどき」です。到底、処理水の扱いに関する議論の出発点にはなり得ません。

 今やるべきは、国内外や組織の違いにこだわらず「地上保管を継続し、全力でタンク用地を確保し、処理水の性状を厳密に調べよ」と、東電・経産省・原子力規制委員会にパブリックプレッシャーをかけ続けることでしょう。

注1

注2

注3

注4

注5

注6


春橋哲史

 1976年7月、東京都出身。2005年と10年にSF小説を出版(文芸社)。12年から金曜官邸前行動に参加。13年以降は原子力規制委員会や経産省の会議、原発関連の訴訟等を傍聴。福島第一原発を含む「核施設のリスク」を一市民として追い続けている。


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