見出し画像

【原発】【小出裕章】元京大原子炉実験所助教からの提言

国・東電は「廃炉は不可能」と福島県に謝罪すべき


 東京電力福島第一原発事故から丸9年経つが、廃炉作業は東電と国が示すロードマップ(工程表)通りには進んでいない。それだけ困難が多い証拠だが、そもそも東電や国が事あるごとに言う「30~40年で事故を収束させる」ことは本当に可能なのか。元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏(70)に、廃炉作業の行方と現状を踏まえた提言を聞いた。 


――原発事故の発生から丸9年が経ちますが、小出先生の目に被災地の状況はどう映っていますか。

 小出 広島原爆で大気中に放出されたセシウム137の量は8・9×10^13ベクレルです。ちょっと分かりにくいので(苦笑)これを広島原爆1発分と置き換えると、福島第一原発1号機から放出されたセシウムの量は広島原爆6~7発分でした。3号機からの放出量は約8発分で、桁違いに多かったのは2号機でした。1~3号機を合計すると、その放出量は広島原爆約168発分(1・5×10^16ベクレル)に相当します。

 誤解しないでほしいのは、これらの放出量は私が勝手に言っているのではなく、日本政府がIAEA(国際原子力機関)に提出したセシウムの放出量に関する報告書に明記されているものだということです。

 では、これらのセシウムはどのように拡散したのか。事故当時、上空では偏西風が吹いていたため、セシウムの多くは海(太平洋)に流れましたが、地上にもかなりの量が降り注ぎました。報告書に載っている汚染地図を見ると、福島県の東半分を中心に宮城県の南部、茨城県の北部と南部、栃木県と群馬県の北半分、千葉県の北部、岩手県・新潟県・埼玉県・東京都の一部に拡散したことが分かります。

 では、汚染レベルはどれくらいだったのか。茨城県の北部と南部、群馬県の西部、千葉県の北部などには3万~6万ベクレルの汚染地が広がっています。福島県の中通りや栃木県・群馬県の北部は6万~30万ベクレルで、中通りには30万~60万ベクレルの場所も点在しています。原発周辺地域がそれ以上の猛烈な汚染だったことは、今更説明するまでもないと思います。

 ――原発周辺以外の地域では当時も今も住民が暮らし続けています。除染を行ったり自然減衰により放射線量は下がったかもしれませんが、そういう場所に留まることはどう考えるべきなのでしょうか。

 小出 私は2015(平成27)年3月31日まで京都大学原子炉実験所に勤務していました。一般人の実効線量限度が年間1㍉シーベルトと定められる中、私のような放射線業務従事者は年間20㍉シーベルトの被曝が許されてきました。その放射線業務従事者が放射能を取り扱って仕事をする場が放射線管理区域という特殊な場所で、一般人は立ち入りできません。そこでは飲食もできないし、眠ることも排泄もできません。そこから出る際は手、足、衣服などがどれくらい汚染しているか測定します。そして、1平方㍍当たり4万ベクレルを超える汚染があれば、作業着等はその中で脱ぎ捨てなければなりません。つまり、4万ベクレルを超えたものは放射線管理区域の外に持ち出すことができないのです。これらは関係法令できちんと定められていることです。

 こうした状況を踏まえ先の汚染地図を振り返ると、ほとんどの場所が放射線管理区域を大きく超えていることが分かると思います。にもかかわらず、多くの人がその汚染地に棄てられてしまっていて、その場で水を飲み、食べ物を食べ、ごく普通の日常生活を送っているのです。

 ――なぜ、関係法令で認められていないことが見過ごされているのでしょうか。

 小出 原発事故直後に日本政府が原子力緊急事態宣言を発令し「もはや既存の法令を守ることは不可能」と開き直ったからです。放射線管理区域以上の汚染がある場所に、日本政府が居住を容認していることは言語道断です。

 私は「放射能が目に見えればいいのに」と思っています。もし放射能が見えればさまざまな注意をするのでしょうが、現実は見えないので注意が働かず、結果、住民は無用な被曝をしているのです。

大人が果たすべき責任

 ――原子力緊急事態宣言は現在も発令中ですが、そのことを認識している人は被害者である福島県民の中にも少ないと思います。

 小出 国民が法律を破れば、国から処罰されます。では、原発事故に関して国は法律を守っているのか。先ほども言いましたが、一般人には年間1㍉シ ーベルト以上の被曝をさせてはならないという法令があります。放射線管理区域から1平方㍍当たり4万ベクレルを超える汚染物を同区域外に持ち出してはならないという法令もあります。ところが日本政府は、緊急事態を理由に既存の法律を守らず、特措法を乱発し、住民に被曝を強要しているのです。

 ――原子力緊急事態宣言はいつ解除されるのでしょうか。

 小出 セシウム137の半減期は30年で、100年経っても放射線量は10分の1にしかならない。つまり、100年経っても放射線管理区域の基準以上に汚染されている場所は確実に残るので、原子力緊急事態宣言は解除できないことになります。

 ――あらためて、被曝をすると人体にどのような影響が出るのか教えてください。

 小出 全身被曝による急性死亡確率は2グレイで死者が出始め、4グレイで半数が死亡、8グレイでほぼ100%死亡します。1999(平成11)年に起きたJCO臨界事故では2名の従業員が亡くなっていますが、被曝量はそれぞれ18グレイ当量と10グレイ 当量でした。お二人は大やけどを負ったみたいに、全身の皮が全部むけて亡くなりました。浴びればほぼ100%死亡する8グレイという被曝は、体温をたった1000分の2度しか上昇させないエネルギー量ですが、被曝とはそのエネルギー量では推し量れない破滅的な障害を引き起こすのです。

 すべての生き物はDNAを含め原子同士が結合し、分子になることで成り立っていますが、その分子結合のエネルギーは数eV(エレクトロン・ボルト)と極めて微弱です。これに対し、例えば病院のレントゲン撮影で受けるX線のエネルギーは10万eV、セシウム137のガンマ線のエネルギーは66万1000eVと、分子結合のエネルギーとは桁違いの大きさなのです。

 そうした中で重要なのは、放射線に敏感な子どもたちを被曝から守ることです。細胞分裂が少ない高齢者は被曝に鈍感なので、がんになっても大きくなりにくい。しかし、日々成長する子どもは細胞分裂が活発なので、被曝の影響は計り知れない。被曝による健康被害は30歳を境に減り、55歳を超えると30歳に比べて100分の1程度になります。一方、30歳より若くなるに従ってリスクはどんどん高まり、0歳は30歳の4~5倍もリスクが高いのです。

 仮に死亡するほどの放射線を浴びなくても、細胞や遺伝情報に傷がつくのは事実です。ICRP(国際放射線防護委員会)は私から言わせると原子力を推進するための組織ですが、その組織ですら低線量被曝のリスクを認めています。国内には「100㍉シーベルト以下の被曝なら問題ない」という学者がいますが、そういう学者は刑務所に入れるべきです。

 放射線に敏感な子どもは、大人が守らなければなりません。すべての大人は原子力の暴走を許し、福島第一原発事故を引き起こした責任があるからです。

トリチウム除去は不可能

 ――福島県内ではトリチウムを含む処理水の処分方法に注目が集まっていますが、政府小委員会は1月31日、海洋放出と大気への水蒸気放出を現実的な選択肢とする提言内容をまとめました。

 小出 放射能汚染水は福島第一原発の敷地内に設置された大量のタンクに貯蔵されていますが、東電が昨年末に発表した資料によると、タンクの貯蔵容量は128万9100㌧で、このうちトリチウムを含む処理水が109万1429㌧、ストロンチウムなどを含むALPS(アルプス)処理待ちの汚染水が7万6404㌧、濃縮廃液などが2万6443㌧、計119万4276㌧で、タンクの空き容量は9万4824㌧しかありません。しかし、東電は福島第一原発の敷地にこれ以上余裕がないことを理由にタンクの増設は困難としています。そこで浮上しているのが海洋放出と水蒸気放出という二つの案です。

 ――政府小委員会は技術面から海洋放出を現実的な選択肢としています。トリチウムを含む処理水は、国内の他の原発でも希釈して海に排出しています。しかし、漁業者は風評被害を懸念し、海洋放出に強く反対しています。市民団体は「引き続きタンクに貯蔵すべきだ」「モルタルで固化して地下埋設すべきだ」と主張しています。本誌も、まずはタンクに貯蔵し続け、その間にトリチウムを除去する技術を開発すべきだと考えています。

 小出 結論から言うと、トリチウムは絶対に除去できません。トリチウムは陽子1個と中性子2個で成り立ち、別名「三重水素」(T)と言われています。三重水素は天然には存在せず、放射能を持っています。半減期(12・3年)を経て2個ある中性子の1個が陽子に変わり、ヘリウムになる性質があります。

 化学の観点から説明すると、水素(H)はボンベなどで閉じ込めない限り、普通の環境下では酸素と結合して水(H2O)になります。トリチウムも三重水素と言われるように、化学的には水素と全く同じ性質で、酸素と結合するとトリチウム水(HTO)になります。

 ALPSで行われているのは、汚染水からさまざまな放射性物質を除去し、きれいな水にする作業です。しかし、トリチウム水は化学的には水そのものなので、どんなことをしても(トリチウムを)除去できません。だから、政府小委員会は海洋放出しかないと主張しているのです。

 とはいえ、海洋放出は簡単ではありません。東電は当初、トリチウム以外の放射能は除去済みと説明していましたが、タンクに貯蔵されている処理水の8割はストロンチウムやヨウ素などが含まれ「トリチウムを含む処理水」と呼べるものは2割しかありませんでした。

 この8割の処理水はALPSで再度除去し、その後、海洋放出することになりますが、東電の2017年度のデータによると、処理水に含まれるトリチウム濃度は1㍑当たり159万3000ベクレルです。これに対し、排水時のトリチウム濃度限度は1㍑当たり6万ベクレルと定められています。つまり、トリチウムを含む処理水を海洋放出するには27分の1に希釈しなければならないのです。

 一方、トリチウムの半減期は12・3年で、半減期の10倍を過ぎれば放射線量は1000分の1に低減します。ですから、トリチウムを含む処理水をタンクに123年貯蔵すれば濃度は1㍑当たり1593ベクレルまで下がり、排水時の濃度限度(前述した1㍑当たり6万ベクレル)を大幅に下回るので海洋放出が可能になります。もっとも、123年貯蔵することが現実的とは思いませんが……。

 ――トリチウムは絶対に除去できないのでしょうか。

 小出 物理学的に言うと、水素、重水素、三重水素を分けることは可能です。同位体濃縮という特殊な技術を使うのですが、ただ、それには物凄いエネルギー量が必要です。たとえるなら、国内の全原発でつくった電力を全部投入しても足りない。何十年分、何百年分投入しても足りないレベルです。だから、事実上除去できないと言っているのです。

 そもそもトリチウムを含む処理水の処分方法をめぐり、政府小委員会や原子力規制員会、東電が「タンクに貯蔵し続ける」と言及したことは一度もありません。言うまでもなく福島第一原発のトリチウムは燃料デブリから発生しています。その量は1~3号機合わせて計200㌧あります。もし原発事故が起きていなかったら、原子力推進派の構想では使用済み燃料を青森県六ヶ所村の再処理工場に持ち込み、化学処理を施した後、プルトニウムを取り出し、残った核分裂生成物はガラス固化して地中に埋設し、除去でないトリチウムは海洋放出する方針でした。六ヶ所村の再処理工場では年間800㌧の使用済み燃料を処理する計画ですが、もし福島第一原発のトリチウムを含む処理水をタンクに貯蔵し続けることを容認したら、六ヶ所村での海洋放出もできなくなるばかりか、福島の比にならない数のタンクを用意しなければならず、再処理工場の稼働自体がままならなくなる。だから、政府小委員会、原子力規制員会、東電は口が裂けても「タンクに貯蔵し続ける」とは言えないのです。

 ――小出先生の話を聞く限りは海洋放出しかなさそうですね……。

 小出 漁業者をはじめ、多くの方が反対していることは承知しています。私はトリチウムを含め、あらゆる放射性物質を海洋放出することに反対です。しかし、日本という国が原子力を推進しようとする限り、トリチウムは海洋放出する以外の方策は取れないのです。であるからこそ、私は原子力を使うこと自体に反対してきました。

 ただ先ほども言ったように、トリチウムの濃度を1㍑当たり6万ベクレル以下に希釈しなければ海洋放出はできないし、汚染水は毎日増え続けている現状を踏まえると、すべての放出を終えるまでには何十年もかかるでしょうね。

デブリ取り出しも不可能

 ――廃炉作業も到底順調とは言えない状況です。

 小出 燃料デブリの取り出しは最大の難関ですが、東電は事故から9年経っても肝心のデブリがどこにあるか把握できていません。東電は現在、デブリが再度熔けないように格納容器内に大量の水を注入しています。しかし、格納容器はメルトダウンで壊れているため、せっかく水を注入しても漏れ出ています。どこから漏れ出ているかさえ東電は把握できていません。なぜなら、一帯は人間が近付けば即死するほどの放射線量で、確認のしようがないからです。

 東電はこの間、ロボットや特殊なカメラを使って格納容器の調査を試みていますが、ロボットは高い放射線の影響で故障し、カメラも遠隔操作や人間が現場に行って作業するには限界があり、思ったほどの成果は得られていません。

 ――これで、本当に廃炉は完了するのでしょうか。

 小出 国と東電のロードマップによると「30~40年で事故を収束させる」と言っていますが、そんなことは不可能です。なぜなら、デブリを取り出すための作業をするには猛烈な放射線を遮らなければなりませんし、ロードマップでは格納容器内を冠水させる計画になっています。しかし、水が漏れ出ている個所は一つではなく、複数あるはずです。未だに1カ所も見つけられないのに、全部塞ぐことができるはずがありません。仮に塞ぐことができても、格納容器が持ちこたえられないと思います。通常、格納容器に入れるのは空気か窒素で、水で満たすことは構造上想定していないからです。

 ――しかし、ロードマップにはそうすると書かれています。

 小出 100歩譲って格納容器を冠水できたとします。ロードマップでは、格納容器の上部から特殊な器具を入れ、約35㍍下の水中にあるとされるデブリをつかみ取り、燃料デブリ収納缶に入れて建屋外部に搬出するとしています。しかし、水中の深い場所にあるデブリを取り出すための器具すらありません。そもそも東電と国は、デブリは圧力容器直下のペデスタルという場所に饅頭のような塊になって堆積しているとしていますが、そんなことは絶対にあり得ません。ペデスタルには作業員が出入りするための通路がありますが、デブリはそこを通って外に流れ出ているからです。

 場合によってはデブリが格納容器の壁にぶつかり、その壁を壊して外に出ている可能性も考えられます。格納容器の壁は鋼鉄製ですが、鋼鉄は1400~1500度の熱で熔けます。一方、デブリは2800度を超えているので、格納容器の壁を容易に突き破ることができるのです。

 これは、原子力事故の専門家なら容易に想像できるリスクで、東電も国も分かっているはずです。東電は2017(平成29)年に格納容器の外側から胃カメラのような特殊なカメラを差し込んでいますが、すぐの場所で毎時50シ ーベルトを計測し、奥にカメラを挿入するとペデスタルの辺りでは毎時20シ ーベルトに下がりました。最も高かった場所は格納容器の壁とペデスタルの間で毎時530シ ーベルトでした。この放射線量の差を見れば、デブリがペデスタルに存在せず、辺りに散らばっていることは明白です。

石棺で封じるしかない

 ――デブリが格納容器の真下になければ、特殊な器具を使ってもつかみ取ることはできませんよね?

 小出 そこで東電と国はロードマップを書き換え、三つの案を示しています。一つ目は格納容器の冠水をあきらめ、途中まで水で満たし、上部からデブリをつかみ取る冠水―上アクセス方法。二つ目は注水せず、その代わり格納容器の上部に分厚い遮蔽盤を設置し、気中に露出するデブリに水をかけながらつかみ取る気中―上アクセス方法。三つ目は、同じく気中に露出するデブリを格納容器の横に穴を開けてつかみ取る気中―横アクセス方法です。ただ、デブリが圧力容器の真下、ペデスタルの内部にない以上、上部からのつかみ取りはできません。そのため、東電は気中―横アクセス方法を最有力としていますが、この方法では放射線を遮る水も遮蔽盤もないので、作業員が猛烈な被曝にさらされる問題が浮上してくるのです。

 結局、いずれの案も不可能というのが私の結論です。仮にデブリをつかみ出せたとしても、放射能が消えることはなく、10万~100万年の管理を迫られることも忘れてはなりません。

 ――廃炉ができなければ、他に方法はあるのでしょうか。

 小出 チェルノブイリ原発事故で行われた「石棺」で覆うしかありません。現在、同原発を覆っている石棺は二つ目で、第一石棺の寿命は30年でした。第二石棺の寿命は100年と言われています。つまり、旧ソ連は「手が付けられない」と石棺で覆い、ウクライナも「廃炉はできない」と第二石棺をつくったのです。では、100年待てば廃炉はできるのか。私は第三石棺で再び覆われると考えています。

 原発事故とはそれくらい破滅的状況をもたらすという事実を、東電も国も率直に認め「廃炉は不可能」と福島県に説明し、お詫びすべきだと思います。悲しいことですが、事実を直視しなければ前に進めません。

 ただし石棺で覆う場合は、事前にやらなければならないことがあります。原子炉建屋内のプールに保管されている燃料を取り出すことです。石棺で覆った状態では燃料を冷やし続けることができないからです。

 1~4号機のうち4号機に保管されていた燃料(未使用204体、使用済み1031体)は2014(平成26)年に取り出しを終えました。しかし、1号機(同100体、同292体)、2号機(同28体、同587体)、3号機(同52体、同514体)は一切作業が進んでいません。計画では、3号機は2018(平成30)年から始まり、1・2号機は2023年を目標としていますが、さまざまなトラブルが重なり取り出しの目途は立っていません。

 私から言わせれば、デブリはおろか、プールから燃料さえも取り出せないのに、なぜ「30~40年で事故を収束させる」と言えるのか、ウソもいい加減にすべきと思います。

 ――終わりの見えない廃炉作業をめぐっては、近い将来、労働者不足が起きることも懸念されます。

 小出 普通の労働はその人の能力を売り、その対価として給料を得ます。これに対し、被曝労働は被曝限度である年間20㍉シ ーベルトに達するまでの被曝量を売り、そこに達すると仕事ができなくなります。被曝労働に従事するのは下請け、孫請け労働者で、被曝限度に達すると解雇されます。東電の社員は、被曝限度に達したら配置転換で別の仕事を与えられます

が、下請け、孫請け労働者はそうはいきません。そこで彼らは、被曝限度に達してもウソをつき、過酷な現場に立ち続けているのです。

 揚げ句、がんなどの病気を発症しても被曝と病気との因果関係を証明するのは難しいため、下請け、孫請け労働者は解雇されるばかりか、何の補償も受けられないのです。

 チェルノブイリ原発事故では60万人とも80万人とも言われる軍人、退役軍人、労働者が収束作業に駆り出されました。チェルノブイリ原発で壊れた原子炉は1基で、地下部分は健全性が保たれていました。だから、地上部分を石棺で覆えば封じ込めは可能だったわけです。

 一方、福島第一原発は1~3号機の地上・地下両方が壊れています。必要な労働者数はチェルノブイリ原発事故の比ではなく、日本人だけでは到底まかないきれません。

 昨年、出入国管理及び難民認定法が施行されました。私は、多くの外国人労働者が福島第一原発で被曝労働をさせられると直感しました。東電もすぐに関心を示しましたが、批判が出ると「当面はやらない」と答えました。当面ということは、ほとぼりが冷めたら外国人労働者を使うつもりなのでしょう。日本人であれ外国人であれ、被曝限度に達したら切り捨てるような労働は認めるべきではありません。

オリンピックは中止せよ

 ――本誌は、労働者が安心して働ける環境をつくり、ロードマップが事業者の都合で勝手に変更されることを防ぐため、ウクライナで施行されている「チェルノブイリ廃炉法」のような法律を日本でも制定すべきだと主張しています。

 小出 私もそう思います。しかし日本の官僚システムは、3年経てば別の部署に異動してしまう。自分の在任中に東電と協議してロードマップを策定し、それが実行できなかったとしても、その官僚は既に異動し後任の官僚が引き継いでいるだけなので、できなかったことに対する責任を問われることはありません。逆に言うと、官僚や政治家は責任を問われる恐れのある法律はつくりたくない。だから、廃炉法をつくる考えはサラサラなくて、今のような責任の所在が東電にあるのか、国にあるのか分からない状態のまま時が過ぎていった方が、官僚や政治家にとっては都合がいいわけです。

 ――最後に、小出先生は近著『フクシマ事故と東京オリンピック』(径書房)の中で、原発事故の被害者が未だに多くいる中、オリンピックは中止すべきだと訴えています。

 小出 オリンピックの狙いは原発事故を忘れさせることです。しかし現実は、今も数万人が避難され、廃炉作業は停滞し、原子力緊急事態宣言は発令されたままです。こうした事実から目を逸らし、加害者である東電、国、学者、マスコミは誰一人責任を取らず、処罰もされていません。もし「オリンピックに反対する人は非国民」というなら、私は喜んで非国民になります。オリンピックに使うお金があるなら、被害者の救済に充てるべきだと思います。


こいで・ひろあき 1949年生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒。同大大学院工学研究科修士課程修了以後、京都大学原子炉実験所に入所。2015年3月に定年退職後は定職に就かず、講演・執筆活動を行っている。現在、長野県松本市で暮らす。


Twitter(是非フォローお願いします)
https://twitter.com/seikeitohoku

facebook(是非フォローお願いします)
https://www.facebook.com/seikeitohoku

HP
http://www.seikeitohoku.com

よろしければサポートお願いします!!