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飯舘ローソン閉店に見る帰還政策の限界(6月のわだい)

 飯舘村の県道12号原町川俣線沿いで営業していたローソン飯舘臼石店。震災・原発事故後に閉店したが、2017年春に帰還困難区域を除くエリアの避難指示が解除されたのを受けて、同年8月に再オープンした。

 ところが、今年に入って再び閉店してしまい、4月の時点ですでに店舗は空っぽとなっていた。建物を所有する昭和運輸(南相馬市)によると、閉店はローソン側の事情によるもので、現在店舗・事務所の用途で入居者を募集しているという。

 食品スーパーなどが再開していない同村において、同店は貴重な買い物場所の一つであり、特に町西部の住民は「不便になった」と感じている人が少なくないようだ。

 複数の村民によると、閉店した背景には3つの事情があるという。

 1つは利用客の少なさ。5月1日現在の村内居住者は1450人で、帰還者数は増えているが、頭打ちとなりつつある。除染や復興事業もひと段落し、近隣で働く作業員なども減る中で、これ以上の利用客の増加は見込めないと判断したのだろう。

 2つは相馬福島道路開通の影響。相馬市と福島市を結ぶ約45㌔の自動車専用道路が一部供用開始となったことで、川俣町と南相馬市を結ぶ県道12号の交通量は減りつつあり、「以前より車が少なくなり、ストレスなく走れるようになった」(ある村民)。交通量が減れば当然、店に立ち寄る人の数も減ってしまう。

 3つは村出資の競合店の存在。ローソンから東に約3キロの県道12号沿いでは、セブンイレブン飯舘村の道の駅までい館店が2017年8月から営業している。運営しているのは、村などが出資している㈱までいガーデンビレッジいいたて。少ないパイを2店舗間で取り合うことになり、完全民間資本のローソンの方が先にギブアップした格好だ。

 ちなみに㈱までいガーデンビレッジいいたては道の駅までい館も運営しているが、休工期間となる冬季は利用者数が減少することもあって赤字続きで、昨年1月には村が同社に3500万円を追加出資している。

 そのため同村議会3月定例会では佐藤八郎村議が「(ローソンは)草野・飯樋・臼石地区の商店として必要とされていたが、村からの支援はなかった。行政として買い物場所を確保するための努力、2店舗とするための施策を示してほしい」と質問した。

 それに対し村当局は「復興拠点を2つ3つと作れば応援も可能だが、そうはいかないので、今後開店してくれるところは村の決まりの中でできる範囲で一生懸命応援させていただく」と述べるにとどまった。

 ローソン本社の広報担当者に問い合わせたところ、閉店の一番の要因は外部環境の変化にあるとして、「人口が少なく、人通りもないところでの営業継続は厳しい。同店に関してはこれ以上続けるのは難しいと判断し、クローズ(完全撤退)することになりました」と述べた。

 コンビニの経営が成り立たず撤退していく状況は、菅野典雄村長が推し進めてきた帰還政策の限界を示す。これまで補助金を活用してハコモノを多く作ってきたが、それで帰還が劇的に進むわけではない。人口が増えなければ商売にならないので、店舗は撤退していくし、出店したがらない。買い物環境が整っていない不便な地に住みたがる人は少ない。

 これを機に、菅野村長は村の現実を直視し、ハコモノ整備にばかり注力するのではなく、基幹産業の農業をはじめとした生業の再生、村外で避難生活を継続している村民の生活支援などに注力していくべきだ。


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