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【政経東北】〝卒原発〟を目指せ-巻頭言2020.12

 宮城県の村井嘉浩知事は11月11日、東北電力女川原子力発電所2号機の再稼働について、地元自治体として容認することを表明した。県内35市町村から意見を聞き、立地自治体である女川町長、石巻市長とも再稼働容認で一致した。宮城県議会は早期の再稼働を求める請願を採択していた。

 村井知事は容認の理由を①原発は重要なベースロード電源である、②雇用が生まれ地元経済に寄与する、③原子力規制委員会の新規制基準に合格し安全性を確認できた――と説明した。

 今後の課題は事故が起きた際の住民の避難。女川原発は牡鹿半島の中ほどにあり、避難するには狭い道路しかない。そのため県では今後も道路整備を進め、避難計画も見直す考えだという。

 エネルギー資源が乏しい日本にとって、原子力は貴重な国産エネルギー源であり、発電時に温室効果ガスを排出することもない。そのため、エネルギー基本計画において、コストが低く安定性が高い「ベースロード電源」と位置付けられている。

 ただ、ひとたび原発で事故が起きれば住民の雇用や財産、健康、コミュニティーなどが根こそぎ奪われる。そのことを身をもって体験している福島県民としては、運転に踏み切るべきとは到底思えない。

 9月末の仙台高裁判決で、原発事故における国と東電の責任を認める判決を勝ち取った「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団・弁護団も「福島原発事故の教訓に学ぼうともせず、同じ誤りを何の反省もなく繰り返すものであり、断じて許すことはできない」という声明を発表した。

 宮城県沖ではマグニチュード7級の大地震が30年以内に90%の確率で発生すると予想されている。少なくとも、避難計画やそれに伴う道路整備が終わらない段階での再稼働は許されない。再稼働するとしても、代替となる再生可能エネルギーによる発電システムを早急に整備し〝卒原発〟を目指していくべきだ。再生可能エネルギー発電にも自然災害への対応、廃棄パネルの処理問題など課題はあるが、原発事故の被害よりはるかにリスクは小さい。

 北海道東北地方知事会議で、村井知事は「他県の知事の意見をうかがいたい」と呼びかけたが、福島県の内堀雅雄知事は定例記者会見で「原子力政策は住民の安全・安心の確保を最優先に、国・事業者の責任において検討されるべき」と一般的なコメントに終始し、女川原発再稼働への言及を避けた。肝心なときに県民の代表としてメッセージを発しないリーダーに、存在意義はあるのだろうか。    (志賀)

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