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【横田一】中央から見たフクシマ82-原発ゼロ実現には政権交代しかない

原発ゼロ実現には政権交代しかない

 福島原発事故がまるでなかったかのように原発再稼働に邁進してきた安倍政権が7年8カ月でピリオドを打ち、番頭役の官房長官を務め続けた菅義偉・新総理率いる政権が誕生したが、エネルギー政策が変わる兆しは全くない。自民党総裁選で菅氏は、安倍政権の政策継承を訴えていたからだ。

 ただし菅氏は、安倍首相とは違う「叩き上げ」「苦労人」「庶民派」のイメージを打ち出してはいた。9月2日の出馬会見では、生まれ故郷の秋田の雪深い農村から上京、学費を稼いで2年遅れで入学した大学を卒業後、横浜で代議士秘書を経て市議から国会議員へと上り詰めた経歴も披露した。共に世襲議員の岸田文雄・政調会長と石破茂・元地方創生大臣との違いを訴えたわけだが、これにメディアは飛びついて「ミスター叩き上げ」と呼ぶようにもなった。

 そんな菅氏に出馬会見終了直後、「横浜をカジノ業者に売り渡すのか。(安倍政権の)米国べったりの政治を引き継ぐのか。米国腰巾着政治と言われますよ。(大恩人の)藤木(幸夫)会長を裏切るのか」「横浜にカジノを持ってきていいのか。(第二の)故郷を裏切るのではないか」という声掛け質問をしたが、菅氏は無言のまま会見場から立ち去った。

 ここで名前を挙げた藤木氏は、横浜港運協会会長を今年6月まで長年務めた〝ハマのドン〟で、地盤も看板もカバンもない横浜で菅氏が市議時代から世話になった大恩人。しかし菅氏の子飼いとされる林文子・横浜市長がカジノ誘致を表明したことに反発、直後の昨年8月23日の記者会見で、カジノ誘致の旗振り役である菅氏を「安倍首相の腰巾着」と断言、「命を張ってでも反対する」と徹底抗戦を訴えていたのだ。

 この会見で藤木氏は「顔に泥を塗られた。泥を塗ったのは林さんだけど、塗らせた人がいる」と切り出し、その背後にいるカジノ推進勢力を「ハードパワー」と称した。そこで私は「地元選出で影の横浜市長とも呼ばれ、林市長にも大きな影響力を持っている菅官房長官としか考えられない」と指摘した後、「秋田から出てきた菅官房長官は横浜が『第二の故郷』で、若いときからよくご存知かと思うが、横浜に世話になった菅官房長官が横浜を米国カジノ業者に売り渡すような行為を推進していることについて、どう思われるのか」と聞くと、藤木氏は次のように答えたのだ。

 「いま『菅さん』という名前をあなたが言うから申し上げるけど、とても親しいですよ。いろいろなこと、昔から知っているし、彼もオレを大事にしてくれるし、ただ今、立場がね。(菅氏は)安倍さんの腰巾着でしょう。安倍さんはトランプさんの腰巾着でしょう。そこで国家安全保障という大きな問題があるでしょう。今の安倍さんも菅さんもトランプさんの鼻息をうかがったり――。寂しいよ。寂しいけれども現実はそうでしょう」

 この藤木氏の発言を一部引用する形で菅氏に「米国腰巾着政治」と声掛け質問をしたのだが、全くの無回答。第二の故郷がカジノ業者の賭博場となることに大恩人が猛反対しても、菅氏は安倍首相に盲従することで出世階段を登り詰めたのだ。

 最高権力者の政策に異論を唱えることなく 〝奉公人〟として忠実に仕えてきた菅氏には、安倍政権の原発政策を方向転換し、多くの福島県民が望む「原発ゼロ社会」を実現する意気込みなどあるはずがない。

 一方、合流新党「立憲民主党」の枝野幸男代表は発足直後から「自然エネルギー立国」を訴え始めた。原発ゼロの実現は、政権交代しか道はないのが日本政治の現実なのだ。


フリージャーナリスト 横田一
1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた「漂流者たちの楽園」で1990年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。


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