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【福島県コロナ特集】飲食店支援に消極的な福島と郡山ースナックは客数減で大量閉店危機

 コロナ禍により苦境に立たされているのが「夜の街」だ。接待を伴うスナックやクラブなどでは利用自粛が解除されたが、客足は未だ戻っていない。行政の支援の動きは鈍く、特に福島市と郡山市の飲食店から嘆きの声が出ている。

 県は6月19日、福島県新型コロナウイルス感染拡大防止対策の改定に伴い、5月27日から出していた「接待を伴う飲食業」の利用自粛要請を解除した。政府が都道府県をまたぐ移動や経済活動への規制を全国的に緩める方針を出したため、それを受けて判断したもの。

 解除に先立ち、政府は6月13日に「接待を伴う飲食業」向けのガイドラインを公表した。①対人距離はできるだけ2㍍、最低でも1㍍離す、②客や従業員はマスク着用、③利用客の連絡先を記録、④一緒にカラオケやダンスを行う接客は自粛、⑤客同士のお酌や回し飲み自粛、⑥マイクは客ごとか30分ごとに消毒――など、3密回避・飛沫感染防止を求めるもの。必要経費は小規模事業者持続化補助金で補える。

 これらが各店舗で徹底できるかどうかはともかく、ルールが明確に示されたことで、夜の街に再びにぎわいが戻ることが期待されたが、客足の戻りは予想以上に鈍いようだ。

 「若干人出は戻っていますが、かつてと比べるとまだまだ静かです」

 こう語るのは、福島社交飲食業組合の組合長で、福島市陣場町でスナック「フラワー」を経営する高橋光子さんだ。

 6月1日から営業を再開。入店時の検温や手指の消毒など感染対策を徹底し顧客を受け入れているが、1日の客数は数えるほどだという。年配の常連客が多く、感染を警戒していることが影響しているとみられる。

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 「『たまには飲みに来ませんか』と連絡するのもはばかられる。居酒屋などは比較的客足が戻ってきているようだが、スナックやクラブ、バーは本当に厳しい。夜の街は都市の活気のバロメーターで、幅広い業種とつながっている産業でもあります。木幡浩市長をはじめ市の皆さんにもさらなる支援を要請しているところで、より多くの人に応援していただければと思います」(同)

 複数の飲食業界関係者によると、特に県内で最多の感染者を出した福島市は市民の感染リスクへの警戒心が強い分、その影響も深刻な様子。すでに同市内だけで少なくとも20~30店舗が廃業の意向を示しているという。

 ある飲食業関係者の話。

 「とにかくお客さんが入らないので資金繰りが大変。(売上高が半減した個人事業主に100万円、法人に200万円が給付される)持続化給付金などは申請後すぐに振り込まれたが、休業要請・営業時間短縮に応じたところに給付される県の協力金などはまだもらっていません。数百万円の借り入れ金はすぐに入ってきたが、家賃や従業員の給料、カラオケでのJASRAC使用料などを支払っているうちに、もう半分は使ってしまいました」

 こうした中で、借り入れ金や補助金などが尽きる秋口から冬にかけて、さらに廃業する店舗が増えるのではないか、と見る向きもある。

物足りない行政の支援

 行政の飲食店支援に期待する声もあるが、「福島市では4カ月分の家賃半額補助(最高40万円)を打ち出したぐらい。支援の一環として、売上高が前年から20~50%未満落ち込んだ事業者に10万円が給付される『事業者営業継続支援給付金』や、プレミアム付きの『ふくしま市民生活エールクーポン』の対象業種に含まれた。ただ、閉店の危機に直面している飲食店からすると、どちらの支援策も正直物足りない」(同)

 同じような意見は郡山市の飲食店経営者からも聞かれた。

 「昨年発生した令和元年東日本台風で店舗が浸水し、ようやく立ち直ったところに今回のコロナ禍が直撃しました。売上高は半分以下に落ち込み、支払いに四苦八苦して、消費者金融で借りてしのいだときもあったほど。市に独自の支援策を要望したのですが、ビルオーナーへの3カ月分の家賃半額補助(上限月額10万円)やコロナ対策の経費負担(上限30万円)ぐらいしかないと言われ、落胆しました」(ある飲食店経営者)

 郡山社交飲食業組合の組合長で、「味の串天」を経営する太田和彦さんは「人出は戻りつつあるが、売上高はまだ2分の1から3分の1程度。会社単位で夜の街への外出を禁じているところも多く、特にスナックやクラブは厳しい」と述べたうえで、市の支援についてこう話した。

 「この間郡山飲食業組合と共同で品川萬里市長や市議会に支援を訴えてきました。市には家賃補助やコロナ対策補助以外にも、テイクアウトやデリバリーの導入経費補助(上限10万円、複数事業所を経営する事業者は20万円)も実施していただいています。ありがたい限りですが、書類手続きが煩雑なので、対応できない経営者も多いと思います」

 さらなる支援を求める飲食店の声に対し、福島市は「これで支援が終わりではない。声を聞きながら支援策を検討していきたい」(産業雇用政策課担当者)、郡山市は「国や県、市の既存の支援策を活用して経営を維持してほしい」(産業政策課担当者)と述べるのがやっとだった。

 感染者のクラスター発生源として、名指しで自粛要請が出されてきた夜の街。それだけに客足の回復は容易でなく、各店舗がなす術なく閉店に追い込まれ、街の活気が一気に失われることも考えられる。そうした事態を防ぐためには、行政がこれまで以上に寄り添った支援策、飲食業の振興策を検討する必要がある。トップの行動力が試されている。


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