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日銀と政府から見る「お金」の話

破綻、というと恐ろしい印象を受けると思います。

何年か前、足利銀行、ひいては北海道拓殖銀行の破綻があるなど、銀行の神話が崩れたこともありました。

1,日本銀行について

まず大事な前提を申し上げます。

日銀は市中銀行です。

繰り返します。日銀は市中銀行です。

そして日銀券というのは、日銀が振り出す手形です。これを信用貨幣といいます。

その一方、政府(国家)紙幣というものもあります。古くは西郷札に代表される、軍票などの政府が一方的に発行する紙切れのことです。
一時期地域振興券や低所得者向けのプレミアム付き商品券も発行されましたが、あれも政府紙幣と呼べると言えるでしょう。

話を日銀に戻します。
日銀は市中銀行ですので、一般論で申し上げれば、破綻しないように経営を行わなければなりません。
かつては旧日銀法も日本経済の発展のために活動するという文言がありました。

第一條:日本銀行ハ国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策ニ即シ通貨ノ調節金融ノ調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズルヲ以テ目的トス
日本銀行ハ法人トス
第二條: 日本銀行ハ専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運營セラルベシ
(以下略)

しかし1997年の改正で消滅し、以下の通りになりました。

第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
(以下略)

日銀の独立性がたかまり、市中銀行としての役割がより一層明確になったと言えます。
実際はさておき、銀行は一般論で破綻はありえません。
発券銀行がそうなれば、日本円の信用は地に落ちます。

2,日本政府について

さて、次は政府について検討したいと思います。

よく言われる、「日本国債は1000兆円を超え始めている。危ない。」という論があります。
しかしそれに対し、複式簿記的な観点から「日本は大丈夫だ。」とする論もあります。

というのは、以下のことから言えるわけです。

簿記会計の基礎で、バランスシートというものを学びます。
以下の通りになります。

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なぜか中国語版wikipediaで恐縮なのですが、左側が資産で右側の上が負債、右側の下が純資産と言い、儲けていればいるほど純資産の額は増えていきます。

最新のバランスシートが財務省のパンフレットにかかれていました。


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注意書きにもある通りなのですが、すぐに換金できない資産が相当程度あります。
性急に本当は568.4兆円とはいえないのです。

企業であれば、廃業してはいさようならをやろうと思えばできるでしょうが、政府は廃業が不可能です。国民から税金を徴収し、社会福祉や外交、防衛、インフラの建設があります。それらを放り投げて、インフラを売りさばいて廃業するということはできません。

ただ一つだけ気になる点があります。
官公庁はたしかに、複式簿記を用いて財務会計を明確化しております。
しかし「予算の消化主義」「縦割り行政」の弊害から、民間企業のような「経営的感覚」を身に着けているのでしょうか。
何も、何でもかんでも外注したり指定管理者に任せたりしろと言っているのではありません。
冷静になって考えればわかるのですが、インフラは10年~20年と長く使うものです。よく「お役所は執行ありて経営なし」と言われることもあります。ただ命令を実行するだけではなく、フィードバックを行いPDCAサイクルが機能するようになってほしいと思っています。

3、現在の金融政策について

さて、ここで日銀の話に戻ろうと思います。
「そんなに国債があるなら、日銀が買い入れをすれば良い」
しかしそれは禁止されています。

第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

現在、日銀は「市中銀行が日銀に預けている当座預金を増やす」という手段で市場から国債をバンバン買い入れているとされます。
以下引用で長くなりますので、どうでもいい方は引用の部分は飛ばしてください。

日銀バランシートの負債側にある「現金」は市中に流通している日銀券残高を意味し、「準備」は中央銀行が民間銀行から預かっている預金(=日銀当座預金)を意味する。
このとき、金融政策で国債の買いオペレーション(以下、買いオペ)を行い、日銀が民間銀行から国債100を買い取ってみよう。果たして財政再建はできるだろうか。
この政策は「国債と準備を等価交換」する措置であり、日銀は国債購入の対価として民間銀行の日銀当座預金を100増やす。つまり、日銀バランスシート上では資産側の国債が100増加、負債側の準備が100増加する。一方、民間銀行バランスシート上では資産側の準備が100増加、国債が100減少する。
その結果、政府部門、日銀、民間銀行のバランスシートは以下の通りとなる。


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 図表2を基に、日銀が、バランスシートの大部分を占める国債と準備を互い相殺した時に何が起こるかを考える。まず、民間銀行のバランスシートを見てみよう。このバランスシートの資産側には準備350、国債300、貸出950がある。これらの合計1600を負債側の預金1600が支えている。つまり、負債側にある預金の一部(350)が資産側の準備350を支えている。
 次に、日銀のバランスシートを見てみよう。このバランスシートの負債側には現金100、政府預金50、準備350があり、それらの合計500が資産側の国債500を支えている。つまり、負債側の準備350が資産側にある国債の一部350を支えている。
 つまり、民間銀行バランスシートの負債側にある預金の一部(350)が、資産側の準備350を通じて、日銀のバランスシートの資産側にある国債の一部350を間接的に支えている構図になる。
 なお、日銀バランスシートの資産側で大部分を占める「国債」は「財務省に対する日銀の債権」、負債側で大部分を占める「準備」は「日銀に対する民間銀行の債権」(日銀から見ると負債)である。このため、財政再建のために、仮に日銀保有の国債の一部(350)と準備(350)を相殺すると、それは政府部門が準備350に100%課税するのと実質的に同等のものとなる。これは最終的に、民間銀行に預けている我々の預金の一部(350)が消滅することにつながる。

要するに、意図的に現金供給を増やしているということになります。
その上、2016年から一定以上の当座預金にはマイナスの金利がつくようになっておりますので、ますます銀行は当座預金から預金を引き出すことになるでしょう。

話が右往左往して恐縮ですが、おそらくアベノミクスの真髄はここにあるとおもいます。要するに資金供給を増やす、そこです。
しかしマイナス金利が始まったとき、まず私は「地銀や信金の合併が進むのではないか」と思いました。体力がなければ、合流し預金を増やす、そして与信情報を共有する、ということになります。
昨今、銀行も手数料を取るようになりました。手数料商売に走っては、元も子もないと思ってしまいます。

4,政府と日銀、そして銀行の今後

政府は倒産できない、日銀は倒産するということがそもそもありえない。
そしてそれに付随し、市中銀行は生き残りに必死。

最初の毎日新聞の記事にあるように、「楽観」はできないと思っています。
最近NISAだとか銀行が営業にきたりだとか、なんだか消費者に投資をさせようという動きも活発であるように思えます。

しかし安易に手を出すと失敗の元です。出すなとは言いません。ですが銀行が何を考えているのか、じっくり見定めるほかありません。

お金というものは、人間が操作しているはずであるのに、人の手を離れて動き始める不思議な存在です。まだまだ私達の思い通りには行きそうもありません。おそらく思い通りになることはないようにも思えます。

「お金の切れ目が縁の切れ目」にならぬよう、私、政経のツイートやnoteも今後目を通してもらえると、嬉しく存じます。

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