見出し画像

「膝軟骨はすり減らない」#書く習慣55

日々の診療お疲れ様です。TROT(トロット)です。

今日は「関節軟骨の構造」と「膝軟骨がすり減る?」についてまとめていきたいと思います。

参考文献はこちら


関節軟骨の基礎知識


関節軟骨の構造について


・軟骨組織は軟骨細胞、軟骨基質、軟骨膜で構成される

軟骨細胞と軟骨基質は血管神経がないため自己修復能力に乏しい

・軟骨組織は成分割合により3つに分類される

 ①硝子軟骨
 ・一般的な軟骨
 ・身体の多くは硝子軟骨が軟骨骨化により骨化した置換骨である
 ・膝関節(大腿骨と脛骨)の関節面は硝子軟骨で覆われ
  摩擦係数の少ない軟骨により円滑な運動に重要な役割を担っている

 ②弾性軟骨
 ・
耳介や鼻、喉頭蓋などの軟骨に存在する

 ③線維軟骨
 ・椎間円板や関節半月などの軟骨に存在する

・関節軟骨は4層構造

・中間層と深層が関節軟骨の大部分を占める
 →プロテオグリカンが水分を保持することで軟骨に粘弾性を与える

・深層と石灰化軟骨層の間にTidemarkと呼ばれる構造物がある

 ★最表層:輝板という層が存在し低摩擦に関与
 ①表層
 ②中間層
 ③深層

 ④石灰化軟骨層
 ★軟骨下骨


軟骨がすり減っているから痛い?


・関節軟骨は血管、神経、リンパ管が存在しない組織

・周囲の滑液によって栄養されることで組織の生成が成り立つ

・つまり…

 軟骨には痛みを感じる組織がない!

 軽度の軟骨減少では痛みを発している組織と断定できない!

 多くの場合周囲軟部組織の炎症や線維化が痛みの原因となる!

 ただし軟骨下骨まで露出している場合は説明が可能となる


軟骨はすり減らない


・膝OAは軟骨が減少した状態であるが、軟骨がすり減っているのではなく代謝障害を起こしているのである

・そのため、「溶ける・破壊される」と解釈するのが正しい

・健常な関節軟骨では骨の破壊と修復が繰り返されることで均衡を保つ骨のターンオーバーが正常に行われ、正常な形を保っている

・ヒトのリモデリング(正常な状態を保つ機能)は加齢による変化やわずかな損傷などの代謝障害や力学的変化がきっかけで軟骨基質の破壊が進行していく

・一般的に内反膝により内側の関節軟骨があたり軟骨がすり減るというイメージだが、実際は軟骨の表面は滑らかで摩擦係数は小さいため軟骨同士がゴリゴリ当たってすり減るということは考えづらい



代謝障害はなぜ起こる?


・軟骨は血管が存在しないため滑液で栄養されている

・滑液により軟骨細胞へと栄養が供給されることで軟骨のターンオーバーが可能となる

・骨吸収と骨形成のバランスが取れている状態であれば問題ないが、軟骨は膝関節の不安定性をきっかけに代謝障害を起こす

・不安定な膝関節は内側に加わるストレスが増大し、それをきっかけに代謝障害を生じ、軟骨が減少していく

・内側のストレスをきっかけに科学的な反応を起こし、代謝の減少によって内側の関節軟骨が減少していく

・不安定性を調べた研究(和田ら)

 前後の関節不安定性

 ・KL GradeⅡまでは大きくなり、その後GradeⅢ以上に進行すると小さくなる

 ・ACLの変性と膝OAのKL分類の関係では、Gradeが進行するに従いACLの変性は
  進行することから考えると、膝OAの進行に伴い前後動揺も大きくなると考えられる

 ・膝OAの進行に伴って半月板などの損傷が多くなることも踏まえると前後動揺は
  さらに大きくなるはずだがGradeⅢ以上で前後動揺性が減少するのはなぜか?
  →関節周囲軟部組織の拘縮
    膝OAの末期には関節の様々な組織が線維化などの影響で固くなるため
    自ずと前後の動揺も小さくなったのではないか?


 内外反の関節不安定性

 ・膝OAの進行に伴い大きくなっていく

 ・膝OAは進行に伴いラテラルスラストが大きくなるため、それに伴い周囲が固くなって
  前額面の不安定性は大きくなると推察する

・Miyazakiらの報告

膝OAの症例に10分間の運動療法(階段昇降)を行い、運動の前後にXP、筋力、前後動揺性を計測しわかったことは…

□運動により前後動揺性が増加した群と不変群に分かれた

□8年後にXP撮影すると前後動揺性が増加した群が膝OAのXPによる進行度合いが高く不変の群と比較すると4倍も早く進行することがわかった

□以上より膝OA患者に運動が有効だという文献はあるが、有効な例と、逆に悪くなる例がいることがわかる



ま、要するに膝軟骨はすり減ることはないみたいです。