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「人の目の高さから見える水平線までの距離は約4キロメートルなんですよ」

皆さん、5年前の本日(2018年11月15日)は何をしていましたか?


この場所なのに紹介するのはスラムダンクではないという詐欺

「普通に学校に通っていたよ」「思い出したくないけど受験生だった…」「変わらず社会人ですwww」

一般的には5年という月日は社会的身分や立ち位置が大きく変えることも珍しくないですね。

僕の場合ですが(筆者:Spring)当時は青ブタを観る片手間に高校受験をしていました。非常に懐かしいですね。

ちなみに今日は青ブタ第7話「青春はパラドックス」(ロジカルウィッチ編=双葉編の前編)の初回放送から丸5年の記念日。

いや.…時が過ぎるのは早いですね……
憧れていた高校での青春が気が付いたら終わってしまった…….



※アニメ「青春ブタ野郎」シリーズ公式Xから引用

というわけで、「トークショー開催記念石川界人出演作品投稿ウィーク」で僕が扱う作品は「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」です。

※記事のタイトルは作中で高校生の牧之原翔子さんが中学生の梓川咲太に話しかける出会いの一幕から引用しました。

ヒロインがクリームパンを買えなかった藤沢駅

作品の簡単な概要として、2014年から刊行されている電撃文庫のライトノベルで、「さくら荘のペットな彼女」で知られる作者:鴨志田一先生とイラスト担当:溝口ケージ先生のコンビによる作品です。

舞台となる峯ヶ原高校のモデルとなった七里ヶ浜高校

テレビアニメは2018年10月~12月に放映、続編となる「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」は2019年6月15日に劇場上映されました。

作中の主な移動手段である江ノ電

現実世界では4年が過ぎ、時は令和。
2023年(記事執筆時点での今年)6月23日には
「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」が劇場上映され、
同年12月1日には「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」の上映も予定されています。

江ノ島への弁天橋

以上が作品の簡単な概要です。

この作品の特異性は、2000年代に生まれた言葉で流行った「セカイ系」の文脈を受け継ぎながら、2010年代のライトノベルの要素「拗れた人間関係とその打開」という要素が違和感なく、安っぽさのない綺麗なまとまり方をしているのが特徴です。

セカイ系「キミとボクの関係が世界を揺るがし振り回す」というミクロな関係が非常にマクロな影響をもたらす要素がある作品。有名な代表作は「涼宮ハルヒの憂鬱」「最終兵器彼女」近年の新海誠監督の映画など

2000年代のライトノベルは石川界人さんが声優を志したきっかけともいわれる「ゼロの使い魔」や、現在まで続く人気作「とある魔術の禁書目録」などに代表される、「主人公が少年漫画と大差ない明るい、もしくは学校や人間関係で問題を抱えていないキャラクター」であることが多かったのですが、2010年代のライトノベルでは
「学校や周囲との人間関係に問題・悩みを抱えた陰キャ主人公」
「場所を変えず、同じように別ベクトルで問題を抱えたヒロインや男友達との関わりを作品で起きた出来事を通して問題解決や偶の恋愛で成長していく」
または
「ゲーム世界や異世界に移動し、そこで築いた新しい人間関係、コミュニティで本当に必要な人を見つけて陰キャではなくなり、明るくて成功者の自分に変身する」
のどちらか2パターンに分類される作品が多いです。

前者の例は「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」などの高校舞台の現代を舞台とした作品、
後者の例は「ソードアート・オンライン」などのネット小説発作品が多いです。

青ブタはこのパターンでいうところの前者に分類されますが、そこに往年の名作が多い、セカイ系の要素を上手に落とし込んでいるため、当時から
「最近のトレンドは無視しているものの、決して古臭くは感じさせない」
という不可思議な感想を抱かせるのが素晴らしさの所以かな、と考察しました。

さて、ここから先の感想はがっつりネタバレを含むため、作品を観てない方にとっては閲覧注意となります。

OPで咲太が走ってたところ

テーマは

「梓川咲太と牧之原翔子の歪で美しいお互いの”心酔”」


です。


「なぜ心酔なのか?」という方もいるかもしれないので、改めて振り返ると

梓川咲太(中学生):妹の花楓がいじめられた結果、花楓は「SNSを覗くたびに身体に傷や痣ができる」という「思春期症候群」を発症し、その瞬間を目撃した咲太は周囲に話すも「自傷行為」と決めつけられ、不登校となる。

母親も心労からノイローゼで倒れ、自らも胸に三本の傷が生じ、本人も病院に搬送。半ば家庭崩壊に追いやられるほど理不尽な非日常「思春期症候群」というオカルト的現象への周囲の不理解に絶望し、打ちひしがれていた。

そんな中、七里ヶ浜で牧之原翔子(高校生)と出会い、彼女が初めて理解者となってくれたこと、人生の生き方を示してくれたこと、それが中学生の咲太を唯一、救済したのであった。

咲太と翔子さんの出会いの七里ヶ浜

梓川咲太(高校生):恩人である七里ヶ浜にいたあの女子高生が着ていた制服を見て、峰ヶ原高校に入学し、高校2年生の現在は母親の看病と仕事の忙しい父親の元から離れ、「思春期症候群」の結果、解離性障害を発症して別人格となったかえでと2人暮らしを始めた。本作開始時点の咲太である。本作では学校の有名女優で図書館にいた野生のバニーガール先輩の桜島麻衣、唯一の相談相手であるロジカルウィッチ双葉理央たちとの出会いを経て、彼も周りも「思春期」と向き合って成長してきた。

江ノ島神社の鳥居

しかし、目当てで憧れの人、初恋の人の「牧之原翔子」の名前は学校の名簿のどこにも存在していないという不可解な事態に陥っていた。

牧之原翔子(中学生)生まれつき心臓に病を抱えており、心臓移植ドナーがもし見つからなければ中学校を卒業することも不可能かもしれないというバックボーンを抱えた内気で素直で真面目な女の子。道端に捨てられていた猫を飼いたいと願うも、親に中々言い出せず困っていたところを梓川咲太(高校生)と出会う。「はやて」と名付けられたその猫は咲太の家で預かることとなり、咲太や麻衣さんなどの本作のキャラクターと交流を持つようになる。

ある日、入院することとなり、咲太の家に通うことができなくなるも、
代わりにわがままを言ってもいいと言われたため、
咲太に毎日お見舞いに来てもらい、それが一番の楽しみであった翔子。


お土産を持ってきてくれる咲太さん。
自分の知らない世界の話をしてくれる咲太さん。
自分よりも少し大人な咲太さん。
中学生の私をからかってくる咲太さん。
もし病状が良くなったらイルミネーションを見に行く約束をしてくれた咲太さん。

そんな咲太に無意識のうちに恋心なのか、それともただの憧れなのか、容易く言語化できない感情を抱え、イルミネーションを見に行くことに赤面し、ドキドキしている翔子。

昼なのでイルミネーションはされてなかった



しかし、翔子の容態は悪化の一途を辿る。


医者と看護師の会話を耳にし、
自分の残りの時間がもう長くないと察した翔子
いつものようにお見舞いに来た咲太に、
「もうお見舞いには来ないでください」と伝えたが、
即、「お断りだな」「これまで通り明日も明後日も今まで通り牧之原さんが退院するまでお見舞いを続ける」と返す咲太


「牧之原さんはよくがんばった」
「がんばった」
「ほんとがんばった」
「すげえがんばったんだ」
「心配をかけないように自分の不安を我慢して、今まで毎日毎日誰よりもがんばってきたんだよ」
「もうがんばらなくていいんだ」

常に「周りの大人にとって物分かりの良い子供」であった翔子はこう言いながら頭を撫でた咲太の言葉を聞き、ついに泣き出し、
「私だってほんとは病気になんてなりたくなかった!!!」
「生きたい!!!」
親にも誰にも言えず抱え込んでいた本心を吐露する。

本心を唯一伝えられた相手であり、受け止めてくれた相手である咲太は翔子に「バイトで来られない日もあるかもだけど、これからも毎日お見舞いに来るよ」と約束する。

その刹那、翔子は意識を失ってしまう。

次に目が覚めた翔子は母親からドナーが見つかったことを告げられる。


「咲太さんにお礼を言わなきゃ…」

小学生の頃の「将来のスケジュール」の課題を書くと「親や周囲が泣いてしまうため」ずっと書けないという話を咲太にしていたため、ようやく書けるようになった様を咲太に伝えたい…

そう思ったのも束の間、梓川咲太の彼女である桜島麻衣が病室に訪れ、
あまりにも非情な事実を告げる。


「梓川咲太は先月の24日のクリスマスイブに亡くなったの。」

事故現場

「そして翔子ちゃんの心臓のドナーは咲太なのよ」




牧之原翔子(高校生)咲太の死から4年後、峰ヶ原高校に進学し、花の女子高生となった牧之原翔子

欠かさず月命日には咲太の墓に墓参りをしていた翔子は迷子探しをするのは咲太の影を追っているからではないかと大学生になった双葉理央に指摘されてる。

ある日、高校近くの七里ヶ浜で
(咲太さんに直接会えたならと思わずにはいられない)

(元気な姿を見せてほしい)

(感謝を伝えたい)

(せめて……一言だけでも……)

そう考えていた翔子の元に現れたのは死んだはずの咲太。

七里ヶ浜その2






何故か中学生の頃の服を着た咲太が。


(ここまで解説終了)

察しのいい方は分かったかもしれませんが、

牧之原翔子(高校生)このまま咲太が死んだまま一言も感謝を伝えられない未来を否定すること過去へと戻る思春期症候群を発症し、

母親も心労からノイローゼで倒れ、自らも胸に三本の傷が生じ、本人も病院に搬送。半ば家庭崩壊に追いやられるほど理不尽な非日常「思春期症候群」というオカルト的現象への周囲の不理解に絶望し、打ちひしがれていた。

そんな中、七里ヶ浜で牧之原翔子(高校生)と出会い、彼女が初めて理解者となってくれたこと、人生の生き方を示してくれたこと、それが中学生の咲太を唯一、救済したのであった。

そう、このときに咲太が出会った高校生の翔子さんは亡き咲太の心臓をドナーとした未来から来た牧之原翔子であったのです。

「中学生の頃、人生に絶望し諦めかけていたときに現れた唯一の理解者で、恩人、年上の初恋の人。」

「高校生では、いなくなってしまった恩人への感謝を、身近に表れた同じ名前の年下の存在に代わりに恩返しを行うかのように行ってその恩人となる」

という2つの関係性が永久機関かのように互いに救い、救われ合う相互的な関係となる歪さ、美しさ。

そしてここまでの話はあくまでも本編が始まる前の背景の部分。

これ以上は

「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」

の小説(原作では「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」「青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない」に渡る6~7巻)と2019年公開の映画版を観てない方は観てほしいですし、履修済みの方もまた観てほしいです。

そして、


2023年10月10日に発売された漫画版の「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」は映画版では描かれなかった翔子さん視点での、別角度の本作を読むことができます。

記事執筆時点の現在、1巻発売中です。

僕も買って読んだのですが、4年前の映画の感動がよみがえってきました。

その感動そのままの勢いで僕は来月の映画を観て、
七里ヶ浜にある青春を取り戻しにいこうと思います。

稚拙な文章で長くもなりましたが、
この記事で少しでも興味を持ってくれた方はいろんな媒体で触れてみてほしいと心より願っています。
ここまでご覧いただきありがとうございました!

(文章:Spring)

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