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MMT理論を考える5 MMTと戦争


前回MMT理論下でのベーシックインカムを考えてみたが、通常の政治状況であればインフレ率もあまり心配ないのではないか、と書いた。
では通常ではない政治状況ではどうなのか。たとえば戦争状態ではMMTはインフレを抑制できるのか考えてみたい。

MMTは税収以上の貨幣を発行できるわけだから戦費調達には都合のよい理論だと言える。ただし、通常の歳出増とはレベルが違うので、インフレリスクは相当なものとなる。もしかするとあっという間にインフレ率が許容範囲を超えて貨幣発行のペースを落としてかつ増税、という手を打つ羽目になりかねない。

この対策として非常時ならではの対策が二つあって、ひとつは価格統制である。南米の社会主義国家では平時でも行っているが、国家の強制力によって物価を抑えるもの。当然ひずみが生まれてくる。
もう一つは戦時国債で、市中で消化、つまり人々に買ってもらうことで彼らのもつ貨幣を引き上げることでインフレを抑制することができる。実際に日本では先の大戦で実施している。

戦後の日本は国債の償還額など大したものではないほどのインフレに陥ってしまい、結果として詰むことなく済んだのだが、裏を返せば大損した市民がたくさんいたわけで、「戦争に負けたから仕方ない」という状況だったので暴動なども起きなかったけれども、もし辛勝とか休戦とかだった場合は、賠償金を取れない中での国債償還となり、果たしてどうなったことか。

つまりはMMT理論下でも戦時は従来の経済理論下と同じようなインフレ対策を取っていくしかないわけで、そういう意味ではコストプッシュインフレの時にも書いたけれども、やはりMMT理論というのは政策のあり方まで変えるほどのものではない、ということが言えそうだ。

次回、もうちょっとだけ時代をさかのぼって、日本の歴史的経緯とそれを踏まえてMMTの実現性を考えてみたい。



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