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産地でここまで放射能対策! 生活クラブの生産者紹介①

生活クラブの組合員が共同購入を通じて学んだことは、
市場にあふれる「商品」は、必ずしもそれを使用する立場から作られたものではないということでした。
こうした「商品」の問題点を生活者の視点で見直し、「売るためのもの」ではなく「消費するためのもの」を手に入れる取り組みを積み重ねてきました。
生活クラブでは、こうした考えから共同購入する「もの=材」を商品と呼ばずに「消費材」と呼んでいるのです。「消費材」は、安全・健康・環境を大事な価値とする独自の厳しい基準で作ったオリジナル品がメインです。

そんな「消費材」に対する生産者の思いを伝えるため、生活クラブ神奈川では隔月発行の機関紙『えぽ』のコーナー「生産者だいすき」に掲載しています。これまで40を超える生産者を取材し、その声を届けてきました。
時々、そんな生産者の皆さんをご紹介していきます。


あらゆる試行錯誤の末に実現した「パスチャライズド牛乳」

 箒根酪農協は25年前に生活クラブと出会い、お互いの要望を出し合い協議するという、まったく新しい提携関係が始まりました。そしてその中で、生活クラブの牛乳が作られてきました。
 まず殺菌温度の変更(72℃15秒殺菌)では、新たな乳質基準が必要になり、耐熱性菌、生菌数、大腸菌数、体細胞等をさらに減らすことが求められました。
 そのため組合員から送られたタオルで乳房を拭くことや、搾乳機を、自動洗浄ではなく手作業で分解して洗浄することなど、あらゆる試行錯誤をつみ重ねて乳質改善を実現。すべての酪農家が手間を惜しまず同じ生産基準を守ることで、他では得られない高いレベルの乳質をずっと守り続けています。

エサの全圃場検査と飼育管理で確実に「検出限界値以下」を継続

 3.11の福島原発事故によって、箒根酪農では、自家栽培していた牧草が放射能に汚染され、廃棄するという事態が起こりました。
 私たちは、できる限り高い安全性を求めて、新生酪農と共同で検査機器を購入、県の検査だけに頼らず、全組合員の全圃場を対象に、収穫し乾燥してロール状にした牛のえさの検査を継続して行なってきました。
 これによって1頭当たりに与えてもよい牧草の量を正確に計算することができ、牛乳の放射能を確実に検出限界値以下にすることができます。酪農組合でここまで餌を管理しているのは箒根酪農だけ。一般には、自家栽培した牧草について正確には知ることができないのが実情です。

危機的な利用低下に歯止めを

 殺菌温度やエサの非遺伝子組み換え対策、リユースびん化、放射能対策―パスチャライズド牛乳は、組合員が「こんな牛乳が飲みたい」と要望し、生産者がそれに応えて作り上げてきたものです。
 しかし2012年度の利用量は前年度比約91%と、全国平均(約97%)と比べてもかなり低くなっています。2013年度の契約乳量は、前年比20%減の日量
16t。余った生乳は栃木県産として一括され、UHT殺菌されて販売されます。これでは酪農家の努力が報われません。
 一人でも多くの方に、このパスチャライズド牛乳の価値に気付いてほしい。一人ひとりの力で、ここでしか手に入らない牛乳を、守っていってほしいと思います。