節約した時間はどこへ?

こんにちは、【正解のないゼミ】ゼミ長のぱたけです!
今回はとっても素敵な本に出会ったので紹介します。

ミヒャエル・エンデ作 『モモ』のあらすじ

モモという小さな女の子が、時間泥棒に盗まれてしまった人々の「時間」を取り返すという物語です。
この作品は岩波少年文庫が出版しているように子供向けの作品です。

しかし子供ではなく”大人こそ”読むべき作品だと思います!

昔、人々はそれぞれ好きなことをしてのんびりと穏やかな生活をしていました。
モモと友人のジジとベッポも同じようにのんびりと楽しく暮らしていました。
ある日から人々は、「時間貯蓄銀行」という灰色のスーツを着た人々に”ちゃんとした生活”を送り将来成功するために毎日「時間を節約しろ」と言われるようになります。

そして人々が「時短」と「効率」を大切にして”よけいなお金”をかせぐことに必死になり、毎日イライラしながら忙しい暮らしをするようになりました。

ある日モモのところにも「時間貯蓄銀行」が来ました。
そこでモモは「時間貯蓄銀行」は実は人々を騙して時間を奪っていただけだということに気がつきます。節約された時間はその分時間泥棒に奪われていたのです。

時間を奪われているため、当然節約しても1日が長くなることはなくより一層人々は時間に追われる毎日を過ごすようになりました。
そんな生活から人々を助けるために、モモが「時間貯蓄銀行」から盗まれた時間を取り返すというお話です。

私たちはなんのために「時間」を使うのか

この物語の一番大切なメッセージは「時間」の使い方を考え直すということです。

物語の中では「時間貯蓄銀行」に時間を盗まれてしまい、仕事が速さ重視になり愛情を込めてできなくなった、子供の世話をする時間がなくなった、友人に会いに行く時間がなくなったなど、毎日が忙しくなったのです。

さらに余暇の時間でさえも少しの無駄もなく使わなくてはならないとやたらに忙しなく遊ぶようになったのです。

このような時間に追われる生活、皆さんも心当たりありませんか?

家と職場の往復の生活で、家での生活は仕事の準備だけをする時間。
休みの日は時間を無駄にしないように予定を詰め込む。
またダラダラしてしまった日は時間を無駄にしてしまったと嘆く。

時間に追われた生活は本当に幸せなんですか?

時間を節約して、よけいにお金を稼いで、よけいにモノを買う。
この「よけい」のために大切な何かを失ってはいませんか?

この物語にはそんなメッセージが込められているのです。

近代社会の「根源的問題」

この作品を読んでいると思わずドキっとしてしまうことが何度もありました。

近代人の生活の表現。

いい服装はしていました。お金もよけいにかせぎましたし、つかうのもよけいです。けれどもふきげんな、くたびれた、おこりっぽいかおをして、とげとげしい目つきでした

急速に都市開発された風景の表現。

まるっきり見分けのつかない、同じ形の高層住宅が、見わたすかぎりえんえんとつらなっています。

ラジコンなどの”新しいおもちゃ”の表現

とりわけこまるのは、こういうものはこまかなところまでいたれりつくせりに完成されているため、子どもがじぶんで空想を働かせるようなよちがまったくないことです。

引用し出したら止まりません笑

最初は「時間」をテーマな話なのかと思って読み始めていたら、
近代社会の発展による「画一化」、合理化や技術の発展がうむ「機械的な生活」が見事に表現されています。

豊かになって貧乏臭くなった近代社会

友人と楽しく話す時間、家族と一緒に過ごす時間、ゆっくり食事をする時間

そんな時間を節約して、働いてお金を稼ぐ。
稼いだお金はどんどん消費してしまい、またお金を稼がないといけない。

時間がないから、お店で対応の遅い店員さんにイライラする。
仕事はただの作業であり、愛情を込めることもできなければストレス原因になる。

そしていざ「暇」になると時間を持て余し苦しくなる。

時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気がついていないようでした。

まさにこの引用文のように時間をケチケチして
他人への思いやり、子供への愛情、仕事への情熱、物事をじっくり考える思考力

たくさんの大切なモノを無駄にして増えない時間のために使っていませんか。

モノは豊かになって、お金も増えたかもしれない。
しかしみんな同じような家に住み、同じような生活をする。
他人によそよそしく、自分についてじっくり考えることもあまりしない。

この貧乏くさい世の中で豊かになるために、本当に必要なのは「お金」や「時間」なのでしょうか。

一度立ち止まって私たちは考え直さないといけないはずです。


【正解のないゼミ】
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