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民研歳時記<第3回>成城大学と民俗学

 昭和2年9月10日は、柳田國男が成城へ引っ越してきた日、
 昭和32年9月28日は、柳田文庫が成城大学にやってきた日です。

 民研歳時記第3回目の今回は、成城大学の民俗学の成り立ちや、成城大学での学びについて紹介したいと思います。

成城学園と柳田國男

 成城大学民俗学研究所は、民俗学者柳田國男の蔵書「柳田文庫」を土台として、昭和48年に設立されました。
 成城大学と民俗学の関係は、成城学園の創設者澤柳政太郎と柳田の交友から始まっています。
 澤柳の教育理念に共感した柳田は、息子を成城小学校へ入学させました。そして、昭和3年の学園移転に伴い、柳田も学園が分譲した土地を買い求め、昭和2年9月に世田谷区砧村、現在の成城学園前へ引っ越してきました。
 以後、昭和37年8月8日に逝去するまで、柳田は、この成城の地を拠点として民俗学研究に邁進していくことになります。

 「民俗学研究所」という名称は、柳田の自宅に設置されていた財団法人につけられていた名前でもあります。「財団法人 民俗学研究所」は昭和22年から32年まで活動しています。
 昭和32年に財団法人 民俗学研究所が解散するにあたって、その蔵書「柳田文庫」は成城大学図書館へ寄託されました。
 昭和32年9月27日に引っ越しの準備をはじめ、「柳田文庫」約37,000冊は3日間かけて成城大学図書館へと引っ越してきました。柳田の自宅から成城学園までの約200メートルを当時の文芸学部の学生たちがリヤカーで運んだそうです。

 「柳田文庫」の寄託を契機として昭和33年4月より成城大学文芸学部に文化史コース(現在の文化史学科)が設置されます。
 文化史コースは、歴史学、民俗学、社会・文化人類学、考古学などの人文社会科学を学際的に勉強し、文化の変遷や多様性を学ぶコースです。日本でも数少ない、民俗学を専修できる学科でもあります。
 この「文化史」という名前は柳田によって命名されたといわれています。
 さらに、昭和48年からは、成城大学大学院文学研究科に日本常民文化専攻が設置され、より高度な学びや研究を行うことができるようになっています。
 ちなみに、「常民」とは、柳田によって使われはじめた言葉です。意味は、民俗学が対象とする人々のことで「ごく普通の」人々とされています。

成城大学での学び

 現在の文化史学科・日本常民文化専攻は、日本史学・民俗学・文化人類学を三つの柱としています。
 民俗学の立場からいえば、現在から過去にさかのぼって研究をする民俗学に対して過去から現在までの変遷をたどる日本史学。日本国内を対象とする民俗学に対して国外の事例をもとに多様性を考える文化人類学。この三つを合わせて学ぶことで、はば広い視野を身に付けることができます。
 授業では、この3つを好きなように組み合わせて履修することができ、民俗学的なフィールドワークだけでなく文化人類学的なフィールドワークを学ぶことなどもできます。

 成城大学では、授業のシラバス(各授業の概要)を公開していますので、どんな授業があるのか、チェックしてみてください。
https://cs.seijo.ac.jp/syllabusExIndex.html

 社会人の方でも、聴講生・科目等履修生制度を使って、大学の授業を受講することが可能です。
https://www.seijo.ac.jp/social-activity/lifelearn/auditor-honner-student/index.html

 また、成城大学の卒業生、修了生の、卒業論文のテーマや、修士論文・博士論文のテーマも公開されています。中には、河童や天狗を扱った論文などもあります。
 先輩たちがどのようなことを研究していたのかを見て、自分が取り組んでみたい研究の参考にしていただければと思います。
[卒業論文]
https://www.seijo.ac.jp/education/falit/anthropology/theme-graduation-thesis/
[修士論文・博士論文]
https://www.seijo.ac.jp/graduate/falit-grad-school/jp-antholopology/grad-thesis/


 大学での学びは、一人で机に向かって勉強するだけでなく、同じ学問を専攻する友人や先輩・後輩、先生方などと一緒に取り組んでいきます。
 同じものを読んで、大勢の意見を聞きながら自分の考えを深めたり、お互いに意見を交換し、時には意見を戦わせながら学習していくものです。
 学内での授業に限らず、仲間同士で博物館やお祭りの見学に行ったり、旅行先で見つけた民俗について語ってみたり、もしかしたら、先輩の紹介で博物館や郷土資料館でお手伝いのアルバイトをするなんて機会もあるかもしれません。
 ぜひ民俗学の世界にどっぷりつかって、楽しみながら学んでほしいと思います。
 進路のことや、勉強のことなど、民俗学について分からないことがあったら、ぜひ成城大学民俗学研究所へお問い合わせください。

[成城大学民俗学研究所]
https://www.seijo.ac.jp/research/folklore/

*画像はかつての柳田文庫の建物(昭和54年撮影)

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