「イソップ」は今なお語る-意外と身近な西洋古典-
古代ギリシャに由来する「イソップ」
書店の絵本コーナーを眺めてみると、タイトルに「イソップ」を含む本があることに気づきます。手に取ってひもとくと、知恵や教訓を示すような短い話が掲載されています。たとえば、『ウサギとカメ』『アリとキリギリス』など、読み聞きしたことがあるのではないでしょうか。「イソップ寓話」とも呼ばれるこの種の話は、日本でもよく知られていますが、もとをたどると古代ギリシャにたどりつきます。
「イソップ集」に含まれる話が、イソップ寓話になります
イソップ寓話の「イソップ」は人名に由来します。イソップは、古代ギリシャで紀元前600年前後に活躍したとされる人物ですが、実在性を含めて実態は不明です。イソップ寓話は、そうしたイソップなる人物が語ったとされる話ですので、現存する個々の話について、イソップが語ったことを確証できるものはありません。それでは、どうしたらイソップ寓話と認められるか。ひとつの基準は、「イソップ集」に含まれること、といえます。イソップ集はイソップ寓話を集めた体裁の本です。この場合、イソップの名は、作者名というよりも、一種の看板として機能します。
明治時代に教材となり、日本でも広く知られるように
イソップ集は、様々な編者の手で作られています。紀元1世紀以降のギリシャ語版やラテン語版が現存するように、古代以来広く読まれ、近世以降は各国語版もひろがります。はじめて西洋から日本にイソップ集が持ち込まれたのは16世紀後半で、日本語化もされましたが、普及にはいたりませんでした。その後、イソップ寓話は江戸時代末に主に英語経由で再び日本で紹介されます。とりわけ、明治時代はじめに英語版イソップ集の日本語訳(渡部温『通俗伊蘇普物語』)が出版され、それが小学校の教材となったこととも相まって、広く知られるようになりました。
意外と身近に存在する、西洋古典由来のもの
結果として、日本では、イソップ寓話は今なお幼少期に目にする定番の話となっています。しかし、それが西洋の古典に由来することを意識することは少ないと思われます。素材の特性か、イソップ寓話は折々に語り直され、日本社会に溶け込んでいるのです。イソップ寓話は一例ですが、改めて意識してみると、意外と身近に西洋古典由来のものが見つかると思います。ぜひ探してみてください。
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※本記事は成城大学入試情報サイト「成城ブリッジ」より転載しています。
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