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頑張らなくてもいい。

 その人の身の上を聞くと、どうにも頑張りすぎているようでした。新しい部署に配属された直後、聞いていた話と違うような大変な仕事が舞い降りて、どうにかこうにか1年かけて仕事を形にしてみたら、今度は残業が多いと批判されて。

 終身雇用の年功序列で成果主義よりも時間主義な労働は、衰退と凋落の象徴と考えます。歩合制がいいかというとそれも悩ましいところですが、意味のない残業をつける無能上司は潰えたらいいと思います。

 結局その人は心身を病み、一時的に休職を余儀なくされました。企業側は保身に走るばかり。あいつら何も分かってない、とその人は呟きました。

 復職予定日の少し前、その人は言いました。

「もう諦めようと思って。自分が頑張っても損をするばかりだから、嫌になっちゃたんだと思う。きっかけはあるけど原因はたぶんひとつじゃない。そこそこに働いて、そこそこの給料をもらって、とにかくもう、頑張らない。」

有能な人材がやる気をなくす社会

 それは希望と野心に燃えていた一人の若者の瞳が、年をとった瞬間でした。彼は自分を守るために、その道を選択しました。彼の生活や心を思うと、私にもそれが最善策に思えました。問題は明らかに上司達との人間関係で、しかし根底には社会システムや腐敗した歴史の結果が垣間見えます。私には、彼の話を聴くことくらいしかできませんでした。

 何が間違っているのでしょうか。
 何か間違っているのでしょうか。

 日本の縮図ですね、と私が言うと、その人は顔をくしゃくしゃにしながら何度も頷きました。私たちは何処へ向かっているのでしょうか。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、腐敗した社会の浄化と、人の世に公平を。


#社会が好き #といえる世の中でありたい
#エッセイ #公平 #平等 #異なる概念です #平等であるべきものと公平であるべきものは異なります #そして現実は不平等で不公平です #眠れない夜に

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